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僕の胸を安堵の念がゆっくりと満たしていく。
住友さんから依頼されて以来、僕は常にプレッシャーを感じてきた。自覚していた以上に、強い、強い、プレッシャーだったのだろう。だからこそ、喜ぶというよりも、ほっとした。
きっと、そういうことなのだろう。
「四人に言ってみる件、どういう結果になるかはわからないけど、正直、ネガティブな気持ちはあまりないかもしれない。香坂、ありがとう。あなたに勇気、すごくもらった」
住友さんは白い歯をこぼした。どこかあどけなさが感じられるのは、心からの笑顔だからだろうか。
「私、いつだったかな。香坂が信頼できそうな人間だから頼むことにした、という意味のことを言ったでしょう。でも実は、香坂がすごい人だとは思っていなかったの。あ、もちろん、信頼できそうなっていう発言は嘘じゃないよ? ただ、私が依頼した問題を、速やかに軽やかに鮮やかに解決するのは無理だろうな、とは思っていたの」
悪気がないのはちゃんと伝わっている。そもそも僕自身、香坂遥斗という人間がすごいやつだとは思っていないから、怒りはまったく湧かない。苦笑気味にほほ笑みながらうなずいて、発言の続きを促す。
「でも、今日示してくれた解決策を聞いて、結構やるじゃんって思った。なかなか頼りになるなって。ていうかそもそも、仲がいいわけでもないクラスメイトからいきなり面倒くさいお願いをされても、面倒くさがらずに協力してくれた時点で、尊敬に値するすごい人なんだと思うよ、香坂は。今の今まで気がつかなかったけど」
「僕としては、住友さんの真剣な気持ちが伝わってきたから、なんとかそれに応えたいっていう一心で。だから、褒められるのはすごく照れくさいね。誰かから、心の底から頼られる経験をしたことがほとんどなかったから、頼りにしてくれただけでありがとうっていう感じ」
僕の言葉に、住友さんは少し照れたような表情を見せた。僕もたぶん、似たような顔をしているのだろう。
住友さんはおもむろに髪の毛を耳にかけた。それがしゃべり出す合図になった。
「今夜、四人にLINEしてみる。どんな結果になるかはわからないけど、どんな結果になっても、香坂は今までどおり友だちでいて。約束してくれたら、これからは、これまでよりもずっとずっと前向きに生きていける気がする」
「もちろんだよ。住友さんとは――」
「もしかして、それ以上のことを言ってほしかった?」
「えっ? いやいや、そんなことはないよ」
いたずらっぽく小首を傾げての問いに、僕は両手と頭を猛烈に左右に振る。
「全然そんなことない。僕からすれば、仲よくしてくれるっていうだけで、もう充分すぎるっていうか」
住友さんから依頼されて以来、僕は常にプレッシャーを感じてきた。自覚していた以上に、強い、強い、プレッシャーだったのだろう。だからこそ、喜ぶというよりも、ほっとした。
きっと、そういうことなのだろう。
「四人に言ってみる件、どういう結果になるかはわからないけど、正直、ネガティブな気持ちはあまりないかもしれない。香坂、ありがとう。あなたに勇気、すごくもらった」
住友さんは白い歯をこぼした。どこかあどけなさが感じられるのは、心からの笑顔だからだろうか。
「私、いつだったかな。香坂が信頼できそうな人間だから頼むことにした、という意味のことを言ったでしょう。でも実は、香坂がすごい人だとは思っていなかったの。あ、もちろん、信頼できそうなっていう発言は嘘じゃないよ? ただ、私が依頼した問題を、速やかに軽やかに鮮やかに解決するのは無理だろうな、とは思っていたの」
悪気がないのはちゃんと伝わっている。そもそも僕自身、香坂遥斗という人間がすごいやつだとは思っていないから、怒りはまったく湧かない。苦笑気味にほほ笑みながらうなずいて、発言の続きを促す。
「でも、今日示してくれた解決策を聞いて、結構やるじゃんって思った。なかなか頼りになるなって。ていうかそもそも、仲がいいわけでもないクラスメイトからいきなり面倒くさいお願いをされても、面倒くさがらずに協力してくれた時点で、尊敬に値するすごい人なんだと思うよ、香坂は。今の今まで気がつかなかったけど」
「僕としては、住友さんの真剣な気持ちが伝わってきたから、なんとかそれに応えたいっていう一心で。だから、褒められるのはすごく照れくさいね。誰かから、心の底から頼られる経験をしたことがほとんどなかったから、頼りにしてくれただけでありがとうっていう感じ」
僕の言葉に、住友さんは少し照れたような表情を見せた。僕もたぶん、似たような顔をしているのだろう。
住友さんはおもむろに髪の毛を耳にかけた。それがしゃべり出す合図になった。
「今夜、四人にLINEしてみる。どんな結果になるかはわからないけど、どんな結果になっても、香坂は今までどおり友だちでいて。約束してくれたら、これからは、これまでよりもずっとずっと前向きに生きていける気がする」
「もちろんだよ。住友さんとは――」
「もしかして、それ以上のことを言ってほしかった?」
「えっ? いやいや、そんなことはないよ」
いたずらっぽく小首を傾げての問いに、僕は両手と頭を猛烈に左右に振る。
「全然そんなことない。僕からすれば、仲よくしてくれるっていうだけで、もう充分すぎるっていうか」
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