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その時、というのは思っていたより早くやってきた。
「ケイスケ、あなたを抱きたいと言ったら私を拒みますか……?」
来た、と思った。敬介は何度も頭の中で繰り返した言葉を思い出す。
「あの、その、その前にひとつ聞きたいんだけど……」
「はい」
「凄く失礼なことを聞くんですけど、猫ってその、性器に棘がありますよね……」
「……」
アルべニーニョはぱちぱちと瞬きをした後ふはっと吹き出した。
「ああ、そういう……アハハ!」
声を上げて笑い出したアルべニーニョに敬介は恥ずかしくなってすみませんと謝りながら両手で顔を覆った。
「獣人の知識がないので失礼かとは思ったんですけど……!」
「笑ってすみません、ふふ、顔をあげてください」
手を取られて顔を上げさせられる。きっといま自分は耳まで赤くなっていることだろう。
「大丈夫、私の性器は人間と同じですよ」
「わ、わかり、ました……」
「他に心配なことは?」
「あっ、あと私男同士のやり方とかよく知らないんですけど中とかきれいにしないとですよね?」
「それは魔法で解決できます」
「魔法で?」
きょとんとアルべニーニョを見上げるとええ、と彼は微笑んだ。
「生活魔法というものがありまして。その中に直腸内をきれいにする魔法があるんです」
「そんな便利なものが?」
「魔法使いの男性同士のカップルに重宝されている魔法です」
「どうやればいいんですか?」
「他の魔法と同じです。きれいになるようイメージをして指を鳴らす。それだけです」
「だ、大丈夫でしょうか……」
「失敗したという報告は聞いたことがないので大丈夫だと思いますよ。怖ければ洗浄方法をお教えしますが」
「洗浄……」
「ええ、まず浣腸で中をあらかたきれいにしてそしてシャワーのヘッドを外してもらって先端を中に入れて洗う方法です」
「……魔法でやります」
なんとも言えない顔でそう言う敬介にアルベニーニョはふふっと笑ってそうですか、と言った。
「では今夜、もう一度ここへ来ます。それまでに風呂を済ませておいて下さい。お腹の魔法は一緒にやりましょう。サポートします」
「は、はい……」
敬介はおどおどとうなずいた。
夕食後、敬介は風呂に入って念入りに体を洗った。
とうとうこの日が来てしまった。こちらの世界に来て約半月。あっという間と言えばそうだ。けれど敬介もアルベニーニョもいい歳をした大人なのだ。これくらい普通なのだろう。
世の中には出会ってその日に体の関係を持つ人たちだって溢れているのだ。半月待ってくれただけありがたい。
少しずつ触れ合いを進めてくれたアルベニーニョに感謝こそすれ手が早いだなんてことは思わない。
敬介はこういうことは初めてだったからアルベニーニョをすべてをかけて愛しているのかはっきりとは答えられない。それでも、体を預けてもいいと思うくらいには愛があった。
この身が愛を知っているのだと思うと不思議な気持ちだった。
アルベニーニョとこれからも一緒に生きていきたい。そう思う。
これはそのための一歩なのだ。通過点なのだ。
夜着を纏ってカウチに座りながら本を読む。と言っても先程から同じところをずっと視線が滑っている。中身なんて入ってこない。
すると時間ちょうどにメイドが来客を告げた。アルベニーニョが来たのだ。
カウチから立ち上がってアルベニーニョを出迎えると、彼はいつもの軍服ではなくラフな姿だった。
元の世界で言うなら中華風というべきだろうか。白地の服に赤のチャイナボタンの付いた服を彼は纏っていた。手には小さなポーチを持っている。
「お待たせしました」
「い、いえ、時間通りです」
アルベニーニョは敬介に歩み寄るとその手を取って寝室にいきましょう、と誘った。
高鳴る鼓動を抑えながらエスコートされて寝室に入る。
並んでベッドサイドに座るとアルベニーニョがポーチを置いてベッドヘッドにあるスイッチを操作して照明を間接照明に切り替えた。
淡い光が部屋を包み込む。一気にムーディーな雰囲気になって心拍数が一気に跳ね上がった。
アルベニーニョが敬介を抱き寄せる。そして胸元にそっと触れてすごくどきどきしてる、と笑った。
「は、初めてなので……」
「ええ、優しくします」
まずはお腹の中をきれいにしましょう、と言われて下腹部に左手を当てるとアルベニーニョがその上から手を重ねてきた。
「お腹の中がきれいになるイメージをして。はい、ぱちん」
ぱちん、と指を鳴らすとお腹の中がふわっと温かくなった。
「お腹の中、温かくなりました?」
「はい」
「じゃあ成功です」
「よかった……」
「必要なものは持ってきました。あなたに痛い思いはさせたくないので」
ポーチの中身はローションと避妊具だった。そういう物をまざまざと見せられるとああこれからするんだなあという気分になる。
右手を掬い取られてその指先や甲に口付けが落とされる。くすぐったくて気持ちがいい。
「ゆっくりとしましょう。夜は長い」
しゅるりと夜着の帯を解かれてアルべニーニョの手が腹から胸元へと這う。
「貧相な体で申し訳ない……」
敬介がそう言うととんでもない、とアルべニーニョは笑った。
「誰よりも私を興奮させるからだですよ」
そうしてキスからそれは始まった。
「ケイスケ、あなたを抱きたいと言ったら私を拒みますか……?」
来た、と思った。敬介は何度も頭の中で繰り返した言葉を思い出す。
「あの、その、その前にひとつ聞きたいんだけど……」
「はい」
「凄く失礼なことを聞くんですけど、猫ってその、性器に棘がありますよね……」
「……」
アルべニーニョはぱちぱちと瞬きをした後ふはっと吹き出した。
「ああ、そういう……アハハ!」
声を上げて笑い出したアルべニーニョに敬介は恥ずかしくなってすみませんと謝りながら両手で顔を覆った。
「獣人の知識がないので失礼かとは思ったんですけど……!」
「笑ってすみません、ふふ、顔をあげてください」
手を取られて顔を上げさせられる。きっといま自分は耳まで赤くなっていることだろう。
「大丈夫、私の性器は人間と同じですよ」
「わ、わかり、ました……」
「他に心配なことは?」
「あっ、あと私男同士のやり方とかよく知らないんですけど中とかきれいにしないとですよね?」
「それは魔法で解決できます」
「魔法で?」
きょとんとアルべニーニョを見上げるとええ、と彼は微笑んだ。
「生活魔法というものがありまして。その中に直腸内をきれいにする魔法があるんです」
「そんな便利なものが?」
「魔法使いの男性同士のカップルに重宝されている魔法です」
「どうやればいいんですか?」
「他の魔法と同じです。きれいになるようイメージをして指を鳴らす。それだけです」
「だ、大丈夫でしょうか……」
「失敗したという報告は聞いたことがないので大丈夫だと思いますよ。怖ければ洗浄方法をお教えしますが」
「洗浄……」
「ええ、まず浣腸で中をあらかたきれいにしてそしてシャワーのヘッドを外してもらって先端を中に入れて洗う方法です」
「……魔法でやります」
なんとも言えない顔でそう言う敬介にアルベニーニョはふふっと笑ってそうですか、と言った。
「では今夜、もう一度ここへ来ます。それまでに風呂を済ませておいて下さい。お腹の魔法は一緒にやりましょう。サポートします」
「は、はい……」
敬介はおどおどとうなずいた。
夕食後、敬介は風呂に入って念入りに体を洗った。
とうとうこの日が来てしまった。こちらの世界に来て約半月。あっという間と言えばそうだ。けれど敬介もアルベニーニョもいい歳をした大人なのだ。これくらい普通なのだろう。
世の中には出会ってその日に体の関係を持つ人たちだって溢れているのだ。半月待ってくれただけありがたい。
少しずつ触れ合いを進めてくれたアルベニーニョに感謝こそすれ手が早いだなんてことは思わない。
敬介はこういうことは初めてだったからアルベニーニョをすべてをかけて愛しているのかはっきりとは答えられない。それでも、体を預けてもいいと思うくらいには愛があった。
この身が愛を知っているのだと思うと不思議な気持ちだった。
アルベニーニョとこれからも一緒に生きていきたい。そう思う。
これはそのための一歩なのだ。通過点なのだ。
夜着を纏ってカウチに座りながら本を読む。と言っても先程から同じところをずっと視線が滑っている。中身なんて入ってこない。
すると時間ちょうどにメイドが来客を告げた。アルベニーニョが来たのだ。
カウチから立ち上がってアルベニーニョを出迎えると、彼はいつもの軍服ではなくラフな姿だった。
元の世界で言うなら中華風というべきだろうか。白地の服に赤のチャイナボタンの付いた服を彼は纏っていた。手には小さなポーチを持っている。
「お待たせしました」
「い、いえ、時間通りです」
アルベニーニョは敬介に歩み寄るとその手を取って寝室にいきましょう、と誘った。
高鳴る鼓動を抑えながらエスコートされて寝室に入る。
並んでベッドサイドに座るとアルベニーニョがポーチを置いてベッドヘッドにあるスイッチを操作して照明を間接照明に切り替えた。
淡い光が部屋を包み込む。一気にムーディーな雰囲気になって心拍数が一気に跳ね上がった。
アルベニーニョが敬介を抱き寄せる。そして胸元にそっと触れてすごくどきどきしてる、と笑った。
「は、初めてなので……」
「ええ、優しくします」
まずはお腹の中をきれいにしましょう、と言われて下腹部に左手を当てるとアルベニーニョがその上から手を重ねてきた。
「お腹の中がきれいになるイメージをして。はい、ぱちん」
ぱちん、と指を鳴らすとお腹の中がふわっと温かくなった。
「お腹の中、温かくなりました?」
「はい」
「じゃあ成功です」
「よかった……」
「必要なものは持ってきました。あなたに痛い思いはさせたくないので」
ポーチの中身はローションと避妊具だった。そういう物をまざまざと見せられるとああこれからするんだなあという気分になる。
右手を掬い取られてその指先や甲に口付けが落とされる。くすぐったくて気持ちがいい。
「ゆっくりとしましょう。夜は長い」
しゅるりと夜着の帯を解かれてアルべニーニョの手が腹から胸元へと這う。
「貧相な体で申し訳ない……」
敬介がそう言うととんでもない、とアルべニーニョは笑った。
「誰よりも私を興奮させるからだですよ」
そうしてキスからそれは始まった。
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