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第一部
14.からあげ
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土曜日。いつものように朝食を食べているとセレスティノがねえ、と甘えたような声を出した。
「今日のお昼ご飯、兄さん特製のからあげが食べたいなぁ」
セレスティノが甘えた声を出すときはまず食べ物のことなので予測はついていた。
「特製って、別に普通のからあげだぞ」
「特製だよ!兄さんのからあげって味が染みてて表面はさくってしてるのに中は柔らかくて美味しいんだよー」
うっとりと言われて悪い気はしない。
「仕方ないな、じゃああとで買い物行くぞ」
「やったー!」
セレスティノが両手をあげて喜ぶ。子供っぽいところがこいつの可愛いところだ、と勝臣は思いながら買うものを脳内でリストアップした。
からあげか。なら他にも何かおかずを作ったほうがいいな、とも思う。
人参とピーマンともやしのナムル、あとサバ缶を使ったサバフレークでも作るか。それだけあればご飯のお供には十分だろう。
そう思って皿を片付け始める。
「いいよ、兄さんはゆっくりしてて。俺がやるから」
一緒にやったほうが早い、と言おうとして飲み込む。代わりにそのさらさらの髪を撫でて分かった、と笑いかける。
「テレビ観てるからゆっくりやれ」
「うん!」
ソファに戻したソファベッドに座ってテレビをつける。ニュースで動物園の特集をやっていた。
そろそろこういうところにも連れて行ったほうがいいかな、なんて思う。
今まではセレスティノがこの世界に慣れていないこととあと純粋に暑くて外出したくなかったのだがもう九月半ばだ。だいぶ日差しは緩やかになってきている。
それに、とちらと洗い物をするセレスティノを横目で見る。
自立心も出てきた様子だし、行動範囲を広げてやるのも良いだろう。
なんとなく彼がひとりですべてのことができるようになってしまうのは寂しい気がしたがその思いには封をして彼にはもっともっと経験が必要だと改めて思う。
「終わったよ!」
「どれどれ」
ソファを立ってチェックしに行くとちゃんと泡は流せていたし皿の裏も油が落ちている。
「お、いいんじゃないか」
「やった!」
「よし、ならご褒美に明日動物園に連れてってやるよ」
「動物園!やったあ!」
「今日はまずからあげの買い物行くぞ」
「わぁい!」
子供みたいに喜ぶセレスティノに勝臣は苦笑してマイバッグを投げた。
買い物を終えて帰宅して、まずはからあげの下準備をする。
「やるか?」
「やる!」
「じゃあまず鶏もも肉を二枚、ひとくちより大きいくらいの大きさに切ってくれ」
「あいさ」
材料を切るくらいならもう慣れたものだ。
「そしたら袋に入れる」
二重にしたビニール袋に大きめに切った鳥もも肉を入れてそこに醤油、多めの生姜とにんにく、酒、塩、ごま油をひとまわし。
よく揉んで冷蔵庫で漬け込んでおく。
その間に副菜を作る。人参とピーマンともやしのナムルとサバフレーク。
人参とピーマンは細切りにする。これはさすがにまだセレスティノには荷が重いので交代して勝臣が切る。
それらともやしを耐熱ボウルに入れてふんわりとラップをしたらレンジでチン。
それを待っている間にタレを作る。もうひとつのボウルに鶏ガラスープの素と醤油とごま油を入れて混ぜる。
チン、とレンジから音がして熱くなったボウルを取り出して熱い内にタレを絡める。
ナムル完成っと、と勝臣は皿にそれを移してセレスティノに渡す。
「ほい」
「はい」
セレスティノが皿を持ってローテーブルに持っていく。それを見ながらサバ缶を手に取る。
「ディーノ、これ開けてくれ」
「あいさ」
仕事を任されて嬉しいのだろう、セレスティノはサバ缶をにこにこしながら開ける。
「そのまま全部フライパンにぜんぶぶちまけろ」
「はーい」
中身をフライパンの中に出したセレスティノに木べらを渡す。
「これで適当な大きさになるまで崩せ。あんま崩しすぎるなよ」
「了解」
こつこつとやりながら崩していくセレスティノにそこまで、と声をかける。
「その辺までにしておこう。水気を少し飛ばせ」
「はーい」
その間に小ネギを切ってフライパンの中に投入する。そこに醤油と砂糖、みりんと顆粒だしを少々、あとごま油を入れて炒めていく。水分が半分ほどになったら出来上がりだ。
こっちは小鉢に入れてまたセレスティノに渡す。言われるまでもなくローテーブルに向かうセレスティノ。
「おにくそろそろいいかな?」
「おお、揚げるか」
フライヤーを取り出して油を準備する。その間に冷蔵庫から鶏肉を取り出した。
袋から鶏肉を取り出して新しい袋に入れて片栗粉をまぶす。
油の温度が中温まで上がったら肉を投入していった。
ある程度火が通ったら一度油切りのバットにあげて油の温度を上げて二度揚げする。
揚がったら油切りのバットで余計な油を落としてキッチンペーパーを敷いた皿に山盛りにした。
その間にセレスティノが箸やご飯、麦茶を準備してくれていたのであとはエプロンを外していただきますだ。
サクッとセレスティノがからあげを齧る。
「んー!おいしー!」
セレスティノは揚げたてでも平気で食べるが勝臣は少々苦手だったのでまずはナムルから食べる。うん、ちょっと濃いめの味付けが食欲をそそる。サバフレークもご飯のお供にぴったりだ。
ご飯を半分くらい食べ進めてからようやくからあげに手を伸ばす。
サクッとした歯応えの後にじゅわ、と肉汁が染み出す。生姜とニンニクが効いていて我ながら美味いと思う。
山盛りあったはずのからあげはあっという間に無くなり、ナムルもフレークもてれりとなくなった。
ふたりはぱんっと手を合わせてお決まりの言葉を言った。
いただきました。
「今日のお昼ご飯、兄さん特製のからあげが食べたいなぁ」
セレスティノが甘えた声を出すときはまず食べ物のことなので予測はついていた。
「特製って、別に普通のからあげだぞ」
「特製だよ!兄さんのからあげって味が染みてて表面はさくってしてるのに中は柔らかくて美味しいんだよー」
うっとりと言われて悪い気はしない。
「仕方ないな、じゃああとで買い物行くぞ」
「やったー!」
セレスティノが両手をあげて喜ぶ。子供っぽいところがこいつの可愛いところだ、と勝臣は思いながら買うものを脳内でリストアップした。
からあげか。なら他にも何かおかずを作ったほうがいいな、とも思う。
人参とピーマンともやしのナムル、あとサバ缶を使ったサバフレークでも作るか。それだけあればご飯のお供には十分だろう。
そう思って皿を片付け始める。
「いいよ、兄さんはゆっくりしてて。俺がやるから」
一緒にやったほうが早い、と言おうとして飲み込む。代わりにそのさらさらの髪を撫でて分かった、と笑いかける。
「テレビ観てるからゆっくりやれ」
「うん!」
ソファに戻したソファベッドに座ってテレビをつける。ニュースで動物園の特集をやっていた。
そろそろこういうところにも連れて行ったほうがいいかな、なんて思う。
今まではセレスティノがこの世界に慣れていないこととあと純粋に暑くて外出したくなかったのだがもう九月半ばだ。だいぶ日差しは緩やかになってきている。
それに、とちらと洗い物をするセレスティノを横目で見る。
自立心も出てきた様子だし、行動範囲を広げてやるのも良いだろう。
なんとなく彼がひとりですべてのことができるようになってしまうのは寂しい気がしたがその思いには封をして彼にはもっともっと経験が必要だと改めて思う。
「終わったよ!」
「どれどれ」
ソファを立ってチェックしに行くとちゃんと泡は流せていたし皿の裏も油が落ちている。
「お、いいんじゃないか」
「やった!」
「よし、ならご褒美に明日動物園に連れてってやるよ」
「動物園!やったあ!」
「今日はまずからあげの買い物行くぞ」
「わぁい!」
子供みたいに喜ぶセレスティノに勝臣は苦笑してマイバッグを投げた。
買い物を終えて帰宅して、まずはからあげの下準備をする。
「やるか?」
「やる!」
「じゃあまず鶏もも肉を二枚、ひとくちより大きいくらいの大きさに切ってくれ」
「あいさ」
材料を切るくらいならもう慣れたものだ。
「そしたら袋に入れる」
二重にしたビニール袋に大きめに切った鳥もも肉を入れてそこに醤油、多めの生姜とにんにく、酒、塩、ごま油をひとまわし。
よく揉んで冷蔵庫で漬け込んでおく。
その間に副菜を作る。人参とピーマンともやしのナムルとサバフレーク。
人参とピーマンは細切りにする。これはさすがにまだセレスティノには荷が重いので交代して勝臣が切る。
それらともやしを耐熱ボウルに入れてふんわりとラップをしたらレンジでチン。
それを待っている間にタレを作る。もうひとつのボウルに鶏ガラスープの素と醤油とごま油を入れて混ぜる。
チン、とレンジから音がして熱くなったボウルを取り出して熱い内にタレを絡める。
ナムル完成っと、と勝臣は皿にそれを移してセレスティノに渡す。
「ほい」
「はい」
セレスティノが皿を持ってローテーブルに持っていく。それを見ながらサバ缶を手に取る。
「ディーノ、これ開けてくれ」
「あいさ」
仕事を任されて嬉しいのだろう、セレスティノはサバ缶をにこにこしながら開ける。
「そのまま全部フライパンにぜんぶぶちまけろ」
「はーい」
中身をフライパンの中に出したセレスティノに木べらを渡す。
「これで適当な大きさになるまで崩せ。あんま崩しすぎるなよ」
「了解」
こつこつとやりながら崩していくセレスティノにそこまで、と声をかける。
「その辺までにしておこう。水気を少し飛ばせ」
「はーい」
その間に小ネギを切ってフライパンの中に投入する。そこに醤油と砂糖、みりんと顆粒だしを少々、あとごま油を入れて炒めていく。水分が半分ほどになったら出来上がりだ。
こっちは小鉢に入れてまたセレスティノに渡す。言われるまでもなくローテーブルに向かうセレスティノ。
「おにくそろそろいいかな?」
「おお、揚げるか」
フライヤーを取り出して油を準備する。その間に冷蔵庫から鶏肉を取り出した。
袋から鶏肉を取り出して新しい袋に入れて片栗粉をまぶす。
油の温度が中温まで上がったら肉を投入していった。
ある程度火が通ったら一度油切りのバットにあげて油の温度を上げて二度揚げする。
揚がったら油切りのバットで余計な油を落としてキッチンペーパーを敷いた皿に山盛りにした。
その間にセレスティノが箸やご飯、麦茶を準備してくれていたのであとはエプロンを外していただきますだ。
サクッとセレスティノがからあげを齧る。
「んー!おいしー!」
セレスティノは揚げたてでも平気で食べるが勝臣は少々苦手だったのでまずはナムルから食べる。うん、ちょっと濃いめの味付けが食欲をそそる。サバフレークもご飯のお供にぴったりだ。
ご飯を半分くらい食べ進めてからようやくからあげに手を伸ばす。
サクッとした歯応えの後にじゅわ、と肉汁が染み出す。生姜とニンニクが効いていて我ながら美味いと思う。
山盛りあったはずのからあげはあっという間に無くなり、ナムルもフレークもてれりとなくなった。
ふたりはぱんっと手を合わせてお決まりの言葉を言った。
いただきました。
応援ありがとうございます!
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