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第一部
07.牛丼
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帰宅して早速スマートフォンの使い方を教える。
まずは電話の仕方とメッセージアプリの使い方、文字入力の仕方くらいでいいだろう。
勝臣の番号を登録し、あとは間違えて課金したりしてしまわないようにフィルタリングを設定してセレスティノに返した。
「まずは電話の仕方だ。まずこのボタンを押してスマホを起動させる」
「こう?わ、ついた」
「そうしたら暗証番号を入れる。お前の番号は……」
一から少しずつ教えて行って、十分もする頃には電話のかけかたと受け方を覚えた。
「あとは俺の番号以外からかかってきても絶対に出るな。詐欺だと思え」
「あいさ」
「次はメッセージアプリの使い方だ。はじめは読むこととスタンプを送れる程度で良い。文字の入力は少しずつ慣れていけ」
「わ、わ、なんか出た」
「それがスタンプだ。今俺に了解っていうイラストを送ったんだ」
ほら、と勝臣が自分のスマートフォンを見せると凄いね、とセレスティノは感心していた。
「次は文字の入力方法だ。これはコツを掴むまでが大変だぞ」
「がんばる」
まず文字の並びを節目してフリック入力を手を掴んでサポートしながらやらせてみる。
「あ、い、う、え、お……か、き、く、け、こ」
「最初のうちはひらがなだけでもカタカナだけでもいいからとにかく要件を伝えられるようになれ」
「あいさ」
「それじゃあ、お前が練習している内にちょっと早いが俺は夕食を作ることにする」
「え、待って、俺も手伝いたい」
「そうか?じゃあ一緒に作るか」
「うん!」
セレスティノには新しく買ってきたエプロンをつけてやって自分も使い古したエプロンをつける。
手を洗ってタオルで拭くと、何を作るの、とセレスティノが聞いてきた。
「牛丼だ」
「牛丼、好きだ」
「お、牛丼知ってたか」
「母上がいろんなどんぶり飯作ってくれた」
「お前の母さん料理上手なんだなあ」
異世界の肉や調味料事情は知らないけれど全く同じということはないだろう。その中で異世界の食物を再現しようというのは食に対する執念が凄いとしか思えない。
「母上の料理は神も認めていた」
「そっちの世界にも神様っているんだな」
「神は身近な存在だったよ」
「こっちの世界では声も聞いたこと無いから信じてない人も多いよ」
「いるのにね」
「ああ、俺も航さんに会うまではいないと思ってたよ」
「わたる?」
「あの神様代理の人」
「ああ、あの人わたるっていうんだ」
「そう聞いてる」
そんなことを話しながら冷蔵庫から牛バラ肉を取り出して野菜カゴから玉ねぎも取り出す。
あとは、と生姜のチューブも取り出して調味料なども出していく。勝臣はいつも使うものをできるだけ出しておいてそれを徐々に片付けていくタイプだ。
「まずは玉ねぎを切って、そうしたら鍋に水、醤油、砂糖、酒にみりん、顆粒だしを鍋に入れて肉の臭み取りに生姜も少し入れて玉ねぎがしんなりするまで煮込む」
味噌汁も作りたいのでもう一つの鍋に湯を入れて火にかける。
まな板と包丁を取り出して玉ねぎの上と下を切って皮を剥くと半分に切って芯をちょちょいっと切って捨ててさくさくと切っていった。
「おー」
これだけのことにセレスティノは感心した声を出して勝臣の手元を見ている。
「調味料は目分量だ。だいたい水が計量カップ一杯につき醤油、生姜、砂糖、酒、みりんをこれくらい入れてあとは顆粒出汁も適当に入れて味を整える。ん、まあこんなもんか。で、玉ねぎが煮えてきたら適当な大きさに切った牛肉をどばっと一気に入れる」
牛バラ肉を三等分にしてそれらを鍋にぶち込むように指示するとセレスティノがどさっと肉を鍋の中に入れた。
ぐつぐつと煮込めば灰汁が浮いてくるのでそれはまあ適当に取る。
「中火でぐつぐつ煮込んで火が通ったら出来上がり」
「あっという間だね」
「簡単だからな。この間に味噌汁を作る」
灰汁取りをセレスティノに任せて冷蔵庫から油揚げと豆腐を取り出して適当に切って沸いた鍋の中に落とす。
「味噌溶いてこれも顆粒出汁で味整えたら完成」
牛丼の鍋を見ると良い感じだ。
「おら、どんぶりとお椀出せ」
「はぁい」
火を止めてセレスティノが出してくれたどんぶりにご飯を盛ってその上に煮込んだ牛肉と玉ねぎをどざっと乗せた。
「つゆは多めが好きか?」
「うんっ」
リクエスト通りにつゆをまわしかけてやる。
「これお前のな」
「ありがとう」
「お茶とか出してくれるか」
「はぁい」
セレスティノが麦茶や箸を準備している間に自分の分の牛丼と味噌汁もお椀に盛ってローテーブルに持っていく。
最後に冷蔵庫から紅生姜を出してそれも持っていった。
ラグの上に座ってふたりで手を合わせる。
「いただきます」
「いただきます」
箸を手に取って紅生姜をちょいと牛丼の上に乗せるとセレスティノも勝臣に倣って乗せた。
ひとくち豪快に食べる。うん、味が染みていて美味しい。勝臣は満足しながら箸を進める。
「おいしーい」
セレスティノがほにゃんと相好を崩して全身でうまい!というオーラをだす。作った甲斐があるというものだ。
「でもこんなに簡単に作れるなら俺でも作れそう!」
「そうだな。機械に慣れてきたら作ってみろ。見ててやるからさ」
「うん、ありがとう!」
そうしてふたりは米の一粒も残さず食べ切ったのだった。
まずは電話の仕方とメッセージアプリの使い方、文字入力の仕方くらいでいいだろう。
勝臣の番号を登録し、あとは間違えて課金したりしてしまわないようにフィルタリングを設定してセレスティノに返した。
「まずは電話の仕方だ。まずこのボタンを押してスマホを起動させる」
「こう?わ、ついた」
「そうしたら暗証番号を入れる。お前の番号は……」
一から少しずつ教えて行って、十分もする頃には電話のかけかたと受け方を覚えた。
「あとは俺の番号以外からかかってきても絶対に出るな。詐欺だと思え」
「あいさ」
「次はメッセージアプリの使い方だ。はじめは読むこととスタンプを送れる程度で良い。文字の入力は少しずつ慣れていけ」
「わ、わ、なんか出た」
「それがスタンプだ。今俺に了解っていうイラストを送ったんだ」
ほら、と勝臣が自分のスマートフォンを見せると凄いね、とセレスティノは感心していた。
「次は文字の入力方法だ。これはコツを掴むまでが大変だぞ」
「がんばる」
まず文字の並びを節目してフリック入力を手を掴んでサポートしながらやらせてみる。
「あ、い、う、え、お……か、き、く、け、こ」
「最初のうちはひらがなだけでもカタカナだけでもいいからとにかく要件を伝えられるようになれ」
「あいさ」
「それじゃあ、お前が練習している内にちょっと早いが俺は夕食を作ることにする」
「え、待って、俺も手伝いたい」
「そうか?じゃあ一緒に作るか」
「うん!」
セレスティノには新しく買ってきたエプロンをつけてやって自分も使い古したエプロンをつける。
手を洗ってタオルで拭くと、何を作るの、とセレスティノが聞いてきた。
「牛丼だ」
「牛丼、好きだ」
「お、牛丼知ってたか」
「母上がいろんなどんぶり飯作ってくれた」
「お前の母さん料理上手なんだなあ」
異世界の肉や調味料事情は知らないけれど全く同じということはないだろう。その中で異世界の食物を再現しようというのは食に対する執念が凄いとしか思えない。
「母上の料理は神も認めていた」
「そっちの世界にも神様っているんだな」
「神は身近な存在だったよ」
「こっちの世界では声も聞いたこと無いから信じてない人も多いよ」
「いるのにね」
「ああ、俺も航さんに会うまではいないと思ってたよ」
「わたる?」
「あの神様代理の人」
「ああ、あの人わたるっていうんだ」
「そう聞いてる」
そんなことを話しながら冷蔵庫から牛バラ肉を取り出して野菜カゴから玉ねぎも取り出す。
あとは、と生姜のチューブも取り出して調味料なども出していく。勝臣はいつも使うものをできるだけ出しておいてそれを徐々に片付けていくタイプだ。
「まずは玉ねぎを切って、そうしたら鍋に水、醤油、砂糖、酒にみりん、顆粒だしを鍋に入れて肉の臭み取りに生姜も少し入れて玉ねぎがしんなりするまで煮込む」
味噌汁も作りたいのでもう一つの鍋に湯を入れて火にかける。
まな板と包丁を取り出して玉ねぎの上と下を切って皮を剥くと半分に切って芯をちょちょいっと切って捨ててさくさくと切っていった。
「おー」
これだけのことにセレスティノは感心した声を出して勝臣の手元を見ている。
「調味料は目分量だ。だいたい水が計量カップ一杯につき醤油、生姜、砂糖、酒、みりんをこれくらい入れてあとは顆粒出汁も適当に入れて味を整える。ん、まあこんなもんか。で、玉ねぎが煮えてきたら適当な大きさに切った牛肉をどばっと一気に入れる」
牛バラ肉を三等分にしてそれらを鍋にぶち込むように指示するとセレスティノがどさっと肉を鍋の中に入れた。
ぐつぐつと煮込めば灰汁が浮いてくるのでそれはまあ適当に取る。
「中火でぐつぐつ煮込んで火が通ったら出来上がり」
「あっという間だね」
「簡単だからな。この間に味噌汁を作る」
灰汁取りをセレスティノに任せて冷蔵庫から油揚げと豆腐を取り出して適当に切って沸いた鍋の中に落とす。
「味噌溶いてこれも顆粒出汁で味整えたら完成」
牛丼の鍋を見ると良い感じだ。
「おら、どんぶりとお椀出せ」
「はぁい」
火を止めてセレスティノが出してくれたどんぶりにご飯を盛ってその上に煮込んだ牛肉と玉ねぎをどざっと乗せた。
「つゆは多めが好きか?」
「うんっ」
リクエスト通りにつゆをまわしかけてやる。
「これお前のな」
「ありがとう」
「お茶とか出してくれるか」
「はぁい」
セレスティノが麦茶や箸を準備している間に自分の分の牛丼と味噌汁もお椀に盛ってローテーブルに持っていく。
最後に冷蔵庫から紅生姜を出してそれも持っていった。
ラグの上に座ってふたりで手を合わせる。
「いただきます」
「いただきます」
箸を手に取って紅生姜をちょいと牛丼の上に乗せるとセレスティノも勝臣に倣って乗せた。
ひとくち豪快に食べる。うん、味が染みていて美味しい。勝臣は満足しながら箸を進める。
「おいしーい」
セレスティノがほにゃんと相好を崩して全身でうまい!というオーラをだす。作った甲斐があるというものだ。
「でもこんなに簡単に作れるなら俺でも作れそう!」
「そうだな。機械に慣れてきたら作ってみろ。見ててやるからさ」
「うん、ありがとう!」
そうしてふたりは米の一粒も残さず食べ切ったのだった。
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