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何故、妹は姉をざまぁするに至ったか㊹
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「デルデ殿下は、王族だというのにとてもやさしい方でした。王族の方ってもっと怖い方かと思っていて驚きました」
「デル兄様は優しい方だから」
ヒーナとお茶会をした時、デル兄様の話をされた。
伯爵家に引き取られたヒーナにとって、王族とこんなに身近で接するという事は今までなかったのだろう。だからこそ、ヒーナは少し高揚した様子だった。
感動したようにデル兄様の事を語るヒーナは愛らしかった。
「イエルノ様は、デルデ殿下と仲良しなのですね」
微笑ましそうな目でヒーナは笑う。
ヒーナはデル兄様と接するようになったとはいえ、まだお姉様のいう乙女げぇむの世界とは違って恋愛感情はないのではないかなと思う。
……そのうち、そういう関係になったりするのだろうか。ヒーナにとってお姉様はどんなふうな存在だろうか。私はヒーナにお姉様のことを敢えて語ったりはしてこなかった。ヒーナは……全く私がお姉様を語らないことに何を思っているだろうか。きっと何か感づいてはいるだろうけれど。
「ええ。デル兄様とは昔からの仲だから」
私とデル兄様は、義理の兄妹になるはずだった。でもきっとお姉様とデル兄様の婚約は解消され、そういうのはなくなる。
私とデル兄様は――同志みたいなものといっていいのだろうか。デル兄様はどうか分からないけれど、私にとってお姉様のことに対する同志の一人であると言えるだろう。
……お姉様とデル兄様の婚約が正式に解消されたら、今よりもずっとデル兄様との距離は開くだろう。ちょっとそれを思うと寂しい気もするけれど、それも仕方がないことだ。何かが変われば、それに連鎖して関連するものも変化していく。お姉様という存在が変化したから、どんどん色んなものが変化している。
思えば私はお姉様がこんな風に変わっていなければ……確かにお姉様のいう乙女げぇむの世界のようにもっと無個性な存在だったかもしれない。
「イエルノ様は、デルデ殿下が大好きなんだね」
「ええ。実の兄みたいな存在だから。いえ、もちろん、私にはラス兄様がいるから兄とはまた違うかもしれないけれど」
「ラスタ様も良い方よね。私のお友達もラスタ様の事を素敵と言っていたわ。イエルノ様にはデルデ殿下とラスタ様という素敵なお兄様がいるのですね」
ヒーナが優しく微笑んで、ヒーナがそんなことを言う。
ヒーナの言うように、私にとってはデル兄様もラス兄様も大事な存在である。自慢のお兄様たち。
ヒーナがもし私の大切な人たちに恋心を寄せるということがあるのならば、その時はその時で考えよう。幸い、乙女げぇむの世界のようにヒーナは多くの殿方とそういう関係になっているわけでもない。ただヒーナは楽しそうに学園生活を送っているだけだ。
ヒーナが……乙女げぇむと同じように誰かと恋仲になるのならば、お姉様へのざまぁに関わらせてしまうことになってしまうかもしれない。……ヒーナは主人公だから。出来れば、ヒーナを巻き込みたくはないなぁ。普通にただ、楽しく過ごしているヒーナをそんなことに巻き込んでいいのだろうかと、そんな風に思ってしまうから。
「ヒーナ、学園生活で何かあったら教えてね。私はヒーナの力になるから」
「ありがとうございます。イエルノ様」
――まだ学園に編入したばかりのヒーナ。
もし本当に主人公としてお姉様たちに関わることがあるのならば、私は……ヒーナが穏やかに学園生活を重ねられるように行動しよう。
そんなことを思いながら、その日のお茶会は終わった。
事態が動いていったのはその後である。ヒーナはデル兄様たちと同じ学園の生徒として少しずつ親しくなっていたようだ。本当に少しずつ……、急激に距離が縮まっていったということはない。
だけどお姉様が過剰反応をしている。
お姉様は、乙女げぇむの登場人物たちに過剰反応をしていた。それ以外はどうでもよさそうなのに、ただお姉様はただのクラスメイトとして接しているヒーナとデル兄様に過剰反応して、ヒーナにもよく分からないことを言ったようだ。
デル兄様だけに留めず、よく分からないことを言ってきたお姉様にヒーナは大変驚いて、困惑したようだ。
お姉様は、人の話を聞いているようで全く聞いていない。お姉様にとって乙女げぇむの世界のことだけを信じている。
ただでさえ、お姉様は高等部に進学してから様子がおかしくて、人から浮いているのに……周りから好かれているヒーナに変な絡み方をしているから益々浮いていると言えるだろう。
「……イエルノ様、こんなことを相談していいのか分からないのですが」
「お姉様のこと?」
「……はい。何故だかわかりませんが、アクノール様は私によく話しかけてきます。よく分からないことを言っていて」
困惑したようなヒーナに相談されてしまった。
高等部の様子はお姉様についている侍女たちに聞いているから知っている。お姉様は、変な絡み方をヒーナにしていて、ヒーナや周りを困惑させていると。そしてそのことでデル兄様がヒーナに謝っていたのだと。
「いえ、いいですわ。お姉様がヒーナにそういう風に話しかけていることは報告で聞いていました。お姉様が申し訳ありません。お姉様は……自分の世界にずっと入っているのです」
お姉様が直接ヒーナに話しかけたのならば、ヒーナも無関係ではいられない。
私はそう思って、そう口にした。
「デル兄様は優しい方だから」
ヒーナとお茶会をした時、デル兄様の話をされた。
伯爵家に引き取られたヒーナにとって、王族とこんなに身近で接するという事は今までなかったのだろう。だからこそ、ヒーナは少し高揚した様子だった。
感動したようにデル兄様の事を語るヒーナは愛らしかった。
「イエルノ様は、デルデ殿下と仲良しなのですね」
微笑ましそうな目でヒーナは笑う。
ヒーナはデル兄様と接するようになったとはいえ、まだお姉様のいう乙女げぇむの世界とは違って恋愛感情はないのではないかなと思う。
……そのうち、そういう関係になったりするのだろうか。ヒーナにとってお姉様はどんなふうな存在だろうか。私はヒーナにお姉様のことを敢えて語ったりはしてこなかった。ヒーナは……全く私がお姉様を語らないことに何を思っているだろうか。きっと何か感づいてはいるだろうけれど。
「ええ。デル兄様とは昔からの仲だから」
私とデル兄様は、義理の兄妹になるはずだった。でもきっとお姉様とデル兄様の婚約は解消され、そういうのはなくなる。
私とデル兄様は――同志みたいなものといっていいのだろうか。デル兄様はどうか分からないけれど、私にとってお姉様のことに対する同志の一人であると言えるだろう。
……お姉様とデル兄様の婚約が正式に解消されたら、今よりもずっとデル兄様との距離は開くだろう。ちょっとそれを思うと寂しい気もするけれど、それも仕方がないことだ。何かが変われば、それに連鎖して関連するものも変化していく。お姉様という存在が変化したから、どんどん色んなものが変化している。
思えば私はお姉様がこんな風に変わっていなければ……確かにお姉様のいう乙女げぇむの世界のようにもっと無個性な存在だったかもしれない。
「イエルノ様は、デルデ殿下が大好きなんだね」
「ええ。実の兄みたいな存在だから。いえ、もちろん、私にはラス兄様がいるから兄とはまた違うかもしれないけれど」
「ラスタ様も良い方よね。私のお友達もラスタ様の事を素敵と言っていたわ。イエルノ様にはデルデ殿下とラスタ様という素敵なお兄様がいるのですね」
ヒーナが優しく微笑んで、ヒーナがそんなことを言う。
ヒーナの言うように、私にとってはデル兄様もラス兄様も大事な存在である。自慢のお兄様たち。
ヒーナがもし私の大切な人たちに恋心を寄せるということがあるのならば、その時はその時で考えよう。幸い、乙女げぇむの世界のようにヒーナは多くの殿方とそういう関係になっているわけでもない。ただヒーナは楽しそうに学園生活を送っているだけだ。
ヒーナが……乙女げぇむと同じように誰かと恋仲になるのならば、お姉様へのざまぁに関わらせてしまうことになってしまうかもしれない。……ヒーナは主人公だから。出来れば、ヒーナを巻き込みたくはないなぁ。普通にただ、楽しく過ごしているヒーナをそんなことに巻き込んでいいのだろうかと、そんな風に思ってしまうから。
「ヒーナ、学園生活で何かあったら教えてね。私はヒーナの力になるから」
「ありがとうございます。イエルノ様」
――まだ学園に編入したばかりのヒーナ。
もし本当に主人公としてお姉様たちに関わることがあるのならば、私は……ヒーナが穏やかに学園生活を重ねられるように行動しよう。
そんなことを思いながら、その日のお茶会は終わった。
事態が動いていったのはその後である。ヒーナはデル兄様たちと同じ学園の生徒として少しずつ親しくなっていたようだ。本当に少しずつ……、急激に距離が縮まっていったということはない。
だけどお姉様が過剰反応をしている。
お姉様は、乙女げぇむの登場人物たちに過剰反応をしていた。それ以外はどうでもよさそうなのに、ただお姉様はただのクラスメイトとして接しているヒーナとデル兄様に過剰反応して、ヒーナにもよく分からないことを言ったようだ。
デル兄様だけに留めず、よく分からないことを言ってきたお姉様にヒーナは大変驚いて、困惑したようだ。
お姉様は、人の話を聞いているようで全く聞いていない。お姉様にとって乙女げぇむの世界のことだけを信じている。
ただでさえ、お姉様は高等部に進学してから様子がおかしくて、人から浮いているのに……周りから好かれているヒーナに変な絡み方をしているから益々浮いていると言えるだろう。
「……イエルノ様、こんなことを相談していいのか分からないのですが」
「お姉様のこと?」
「……はい。何故だかわかりませんが、アクノール様は私によく話しかけてきます。よく分からないことを言っていて」
困惑したようなヒーナに相談されてしまった。
高等部の様子はお姉様についている侍女たちに聞いているから知っている。お姉様は、変な絡み方をヒーナにしていて、ヒーナや周りを困惑させていると。そしてそのことでデル兄様がヒーナに謝っていたのだと。
「いえ、いいですわ。お姉様がヒーナにそういう風に話しかけていることは報告で聞いていました。お姉様が申し訳ありません。お姉様は……自分の世界にずっと入っているのです」
お姉様が直接ヒーナに話しかけたのならば、ヒーナも無関係ではいられない。
私はそう思って、そう口にした。
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