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彼の視線が、私を捕えている。
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彼が、私を見ている。
彼の、視線が私を捕えている。
その事実に動揺してならなかった。
何故、彼が私を見ているのか。
何故、彼の瞳が私を捕えているのか。
それに気づいた時、顔を赤くしてしまった。ただ、彼が、私を認識して、私を見つめているというそれだけの話なのに。
本当に、たったそれだけの事だったのに。
それなのに、私に見つめられてしまっていた事に対して動揺してならなかったのだ。
それは確かに私が彼を好きだからで。
彼を好きで見つめてしまっている私は、ずっと彼の事を見つめていたのにもかかわらず、逆に彼に見つめられると動揺が隠せなかった。体温が上がる。これだけ一気に体温が上昇する事に驚いた。
……私はなるべく、その体温の上昇を、自分の動揺を、誰にも悟られたくないと思っていた。そもそもこんな風に誰かに見つめられたからと言ってこれだけ動揺してしまうなんて私には初めての経験でどうしたらいいか分からなかった。
そんな私に、彼女は——私の親友として存在するシュア・ミルガントは気づいていた。そして、それはもうニヤニヤしていた。
「どうして、ニヤニヤしているのかしら……。私がこんな風で面白がっているの?」
「いいえ、とっても可愛いですわ」
「か、可愛い……?」
「ええ、本当にとても可愛いですわ。私はずっと、こんなリサを見てみたいと思ってましたもの。リサは本当に可愛いんですよ!!」
「……シュア、私はそこまで言われるほどではないわ」
正直、私の冷たい一面を知っている風なのにそういうことを言う意味が分からない。私の冷たさを知っておきながらも、そういう風に私の事を言うのはなぜだろうか。
「ふふ、リサは本当に可愛い子。リサ、私もガナル様も……貴方が恋をしていることが嬉しいの」
「何なの、それは……それに、おじい様もって何かしら」
まさか、おじい様まで私の事をちゃんと理解しているというのだろうか。私自身は私の冷たい一面を隠していて上手くやっているつもりだったのに。
「大丈夫ですわ。私とガナル様だけですわ。私もガナル様もリサが大好きだから気づいているだけですもの。ねぇ、リサ、私がリサが可愛いと思いますの。そしてリサが恋をしていることが本当に嬉しいのですわ。誰にも興味を持たないリサが彼だけを特別に思っている事。私はそれが嬉しい。リサが今まで見せなかったかわいらしい表情を見せてくれることが嬉しい」
「……そう。それで、いいの?」
「ふふ、いいのですわ。リサは私やガナル様をその他大勢と同じ位置付をしているでしょうけれども、それでも私達はリサを大好きですから」
私がシュアをそこまで大切にしていない事を、シュアは知っている。シュアの言葉を信じるならばおじい様も。それなのに、私の事を大切などという。本当に、シュアは不思議だ。
「シュア……貴方、彼に何か言った?」
私は彼——シィク・ルサンブルが私を見ている理由の心当たりが、シュアしかいなかった。だからシュアに問いかければ、シュアは笑っている。
「……何を、言ったの」
「リサにとって都合が悪い事は何も言っておりません。私は只、リサが大好きでリサのために動きたいだけですもの」
うふふと笑うシュアは、私の事が大好きだと相変わらず口にする。
……そうね、シュアはいつもそうだわ。私が動きやすいように整えてくれている。時折調整は必要だけれども、私が動きやすいように整えてくれている。
だから私が都合が悪い事はしないだろうと思っていて、彼にシュアが働きかけるとは思っていなかった。誰かのためにと行動を起こして、その誰かのためににならない行動をする人は世の中には多く居るけれどシュアは今までそういう軽率な行動はしてこなかったから。
だけど、シュアは今回、彼に話しかけた。
私は彼を拾うつもりがなく、彼を見ていたいと言ったにもかかわらず、シュアは動いた。
「リサ……、リサは勝手に動いた私を嫌うかもしれない。いえ、違うわね。リサは私を好いても嫌ってもないから……。そうね、私を傍に置かないという選択肢を選ぶかもしれませんけれど、私はリサが大切だからこそ彼に話しかけに行きました」
「……そう」
「ええ、そうですわ。私はリサに笑っていてほしい。それに、好きな方に気にされてリサも嬉しいでしょう?」
ふふふと笑うシュアは、私が例えばシュアを傍に置かなくなったとしても気にしないと言った様子だった。本当にシュアはよく分からない。理解が出来ない。人の事を観察して、自分がやりやすいようにいつも動かしていた。でも、シュアは、本当によくわからない。でも私の敵には回らないだろうという事は分かる。
ひとまず……シュアが何か彼に言ってしまったようだけど、私は自分から彼に近づく気はないのだ。
でも、彼が近づいてきたならば……私はどうするだろうか。自分で、私がどうするか分からなかった。
――彼の視線が、私を捕えている。
(彼が見つめている。その原因は、親友。近づかれたらどうするだろうか、私はそれが分からない)
彼の、視線が私を捕えている。
その事実に動揺してならなかった。
何故、彼が私を見ているのか。
何故、彼の瞳が私を捕えているのか。
それに気づいた時、顔を赤くしてしまった。ただ、彼が、私を認識して、私を見つめているというそれだけの話なのに。
本当に、たったそれだけの事だったのに。
それなのに、私に見つめられてしまっていた事に対して動揺してならなかったのだ。
それは確かに私が彼を好きだからで。
彼を好きで見つめてしまっている私は、ずっと彼の事を見つめていたのにもかかわらず、逆に彼に見つめられると動揺が隠せなかった。体温が上がる。これだけ一気に体温が上昇する事に驚いた。
……私はなるべく、その体温の上昇を、自分の動揺を、誰にも悟られたくないと思っていた。そもそもこんな風に誰かに見つめられたからと言ってこれだけ動揺してしまうなんて私には初めての経験でどうしたらいいか分からなかった。
そんな私に、彼女は——私の親友として存在するシュア・ミルガントは気づいていた。そして、それはもうニヤニヤしていた。
「どうして、ニヤニヤしているのかしら……。私がこんな風で面白がっているの?」
「いいえ、とっても可愛いですわ」
「か、可愛い……?」
「ええ、本当にとても可愛いですわ。私はずっと、こんなリサを見てみたいと思ってましたもの。リサは本当に可愛いんですよ!!」
「……シュア、私はそこまで言われるほどではないわ」
正直、私の冷たい一面を知っている風なのにそういうことを言う意味が分からない。私の冷たさを知っておきながらも、そういう風に私の事を言うのはなぜだろうか。
「ふふ、リサは本当に可愛い子。リサ、私もガナル様も……貴方が恋をしていることが嬉しいの」
「何なの、それは……それに、おじい様もって何かしら」
まさか、おじい様まで私の事をちゃんと理解しているというのだろうか。私自身は私の冷たい一面を隠していて上手くやっているつもりだったのに。
「大丈夫ですわ。私とガナル様だけですわ。私もガナル様もリサが大好きだから気づいているだけですもの。ねぇ、リサ、私がリサが可愛いと思いますの。そしてリサが恋をしていることが本当に嬉しいのですわ。誰にも興味を持たないリサが彼だけを特別に思っている事。私はそれが嬉しい。リサが今まで見せなかったかわいらしい表情を見せてくれることが嬉しい」
「……そう。それで、いいの?」
「ふふ、いいのですわ。リサは私やガナル様をその他大勢と同じ位置付をしているでしょうけれども、それでも私達はリサを大好きですから」
私がシュアをそこまで大切にしていない事を、シュアは知っている。シュアの言葉を信じるならばおじい様も。それなのに、私の事を大切などという。本当に、シュアは不思議だ。
「シュア……貴方、彼に何か言った?」
私は彼——シィク・ルサンブルが私を見ている理由の心当たりが、シュアしかいなかった。だからシュアに問いかければ、シュアは笑っている。
「……何を、言ったの」
「リサにとって都合が悪い事は何も言っておりません。私は只、リサが大好きでリサのために動きたいだけですもの」
うふふと笑うシュアは、私の事が大好きだと相変わらず口にする。
……そうね、シュアはいつもそうだわ。私が動きやすいように整えてくれている。時折調整は必要だけれども、私が動きやすいように整えてくれている。
だから私が都合が悪い事はしないだろうと思っていて、彼にシュアが働きかけるとは思っていなかった。誰かのためにと行動を起こして、その誰かのためににならない行動をする人は世の中には多く居るけれどシュアは今までそういう軽率な行動はしてこなかったから。
だけど、シュアは今回、彼に話しかけた。
私は彼を拾うつもりがなく、彼を見ていたいと言ったにもかかわらず、シュアは動いた。
「リサ……、リサは勝手に動いた私を嫌うかもしれない。いえ、違うわね。リサは私を好いても嫌ってもないから……。そうね、私を傍に置かないという選択肢を選ぶかもしれませんけれど、私はリサが大切だからこそ彼に話しかけに行きました」
「……そう」
「ええ、そうですわ。私はリサに笑っていてほしい。それに、好きな方に気にされてリサも嬉しいでしょう?」
ふふふと笑うシュアは、私が例えばシュアを傍に置かなくなったとしても気にしないと言った様子だった。本当にシュアはよく分からない。理解が出来ない。人の事を観察して、自分がやりやすいようにいつも動かしていた。でも、シュアは、本当によくわからない。でも私の敵には回らないだろうという事は分かる。
ひとまず……シュアが何か彼に言ってしまったようだけど、私は自分から彼に近づく気はないのだ。
でも、彼が近づいてきたならば……私はどうするだろうか。自分で、私がどうするか分からなかった。
――彼の視線が、私を捕えている。
(彼が見つめている。その原因は、親友。近づかれたらどうするだろうか、私はそれが分からない)
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