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第3章 エルフ大公国を襲う悪意!

第20話(累計・第101話) クーリャ93:強敵、ゴブリンキング! わたし達は仲間と協力して戦うの!

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「これは少し厳しいですね、アデーレ殿」

「といいつつも、まだ接敵していない分は楽ですねぇ」

 遺跡の奥、瓦礫を遮蔽物にして2人の戦士が銃を撃つ。
 彼らが引き金を引くたびに一匹、一匹とゴブリンは血の華を咲かせて倒れる。
 仮面の騎士マスカーが狙撃気味に奥に待機しているゴブリンを撃ち、遊底ボルトを引いて次の根物を狙う。
 二丁のやや短めに作られた銃を両手に持つドワーフ女戦士アデーレはレバーで次弾を込めながら交互に両手の銃を撃ち、焦れて飛び出したゴブリンを倒す。
 2人がお互いの装弾の隙をカバーすることで、たった2人がゴブリンの集団を足止めしていた。

「マスカー様、アデーレ殿。もう大丈夫だ。救出は終了、撤退命令が姫様から来ているぞ!」

「了解、では引きますぞ」

「はいですわ!」

 マスカーとアデーレが銃を撃ちながら後方へ引いていく。
 ゲッツは彼らに撤退命令を出しつつ、援護として手に持った筒を迫りくるゴブリン達へと向け、引き金を引いた。

  ◆ ◇ ◆ ◇

 どーん!
 遺跡内部から、再び爆発音が響く。

「あら、ゲッツがアレ撃ったのかしら。遺跡が崩れなきゃ良いのですのに」

 わたしは、試射もあまり十分ではない秘密兵器の使用を心配する。

 ……ゲッツに持たせたのは通常タイプだし、焼夷弾でも無いから大丈夫……だよね?

 既に人質の女の子達は救出済み、少し離れた場所へと送り、今はカティ、ダニエラ、エル君が看護をしている。

 ……まあ、エル君も今回はエロ行為は我慢するよね?

 遺跡の入り口は兵士の方々が弓矢を構えて待機中。
 このまま飛び出してくる敵を殲滅するのだ。

「あ! マスカー様達が出てきましたわ!」

 ゲッツを先頭に、マスカー、アデーレさんが出口から飛び出してくるのを、先生が報告してくれる。
 皆の持つ銃先の銃剣は血に濡れており、接近戦をしたことが分かる。
 だが、3人には大きな傷は無い様で一安心だ。

 ……結構危なかったのね。これは自動小銃の開発が急務なの。連射銃があれば、接近戦も必要ないものね。

「てぇ!」

 マスカー達の後を追って飛び出してきたゴブリン達に矢が次々と刺さる。

「ぐわぁぁ!」

 大きな咆哮を立てて飛び出す大きなゴブリン種、ホブゴブリン2匹。
 彼らは弓矢を無視してこちらに向かってくる。

「は!」

「ここは通しません!」

 彼らに対して銃を投げ出して剣を抜いたマスカーとアデーレさんが立ちはだかる。
 マスカーは、愛用の日本刀。
 アデーレさんは、二本の短刀、たぶんククリを両手に構えてホブゴブリンに向かう。

 ぴかり!
 遺跡の入口から閃光が飛び出して、兵士の方々へと向かう。

対抗魔法アンチマジックしますの!」

 先生は防御魔法を唱え、兵士の前に輝く魔法の盾を呼び出して魔法の矢マジック・ミサイルを危うく受け止める。

 ……シャーマンなの! あれは、わたしが止めるの!

 わたしは準備していた狙撃銃に飛びつき、銃口を遺跡入り口へと向けた。
 遺跡入り口から、杖を持ったゴブリンシャーマンが顔を出す。

 ……今なの!

 引き金は、霜が落ちるように引く。
 わたしは前世知識で覚えたように、引き金を引いた。
 二脚で固定されていた銃は、思ったほどの反動をわたしに与えずに火を噴いた。
 そして、わたしが放った銃弾はシャーマンの胸を貫いた。

「ごぉぉぉ!」

 先程とは違う咆哮が飛ぶ。
 倒れたシャーマンを踏み越えながら、大柄で鎧や兜、盾で完全武装されたゴブリン、多分キング種が魔法明かりに照らされた夜の野外に飛び出してきた。

 ……次弾装填急がなきゃ!

 わたしは、焦る気持ちで重いボルト遊底を動かして、銃に次弾を込めた。
 ホブ種と戦闘中の2人は、優勢に戦いをしている。
 おそらくまもなく敵を倒すことだろう。
 そしてキングに向けて、討伐隊の戦士たちが立ち向かった。

「ぐぎゃぁぁぁ!」

 大声で斧を振り回すゴブリンキング。
 その攻撃に戦士達は苦戦し、一人また一人と手傷を負わされて後方へと引いたり、倒れ伏す者も出ている。

「ここで、わたしがなんとかしなきゃ!」

 緊張と恐怖で手が震える。
 しかし、わたしが戦況を変える手段を持っているのは確か。
 どうすれば確実に勝てるのか?

 戦場を見回し、ある敵の動きが止まっているのに気が付く。

「マスカー! アデーレさん!」

 わたしは、引き金を引いた。

  ◆ ◇ ◆ ◇

 ゴブリンキングは怒り狂っていた。
 自分の作り上げた軍団が完全に崩壊したからだ。

 まずは、襲撃する通路が先手を撃たれて閉鎖されてしまった。
 やっと通路を確保して兵を先に進めたが、今度は遠くから殺されていく。

 見たことも無い杖から火が吹くたびに、ゴブリン兵の頭部が破裂し、腹部が大きく裂ける。
 たった2人に近づくことも出来ず足止めをされ、やっと敵が引いたと思ったら、火を噴く筒から爆発する火矢が飛び出して、さらに多くの兵を失った。

 そして遺跡を飛び出すと敵が待ち構えていて、頼みのシャーマンすら遠くから火矢で殺された。
 もはやホブも時間の問題。
 後は自分が暴れて、ここから逃げる事を考えるしかない。

 ……『アノモノ』ニシタガウ、マチガイ!

 今更、ヒトごときに従った自分を呪うゴブリンキング。
 憂さ晴らしに兵士に振るった斧が、飛び出してきた小柄な女性戦士の2つの短剣に受け止められる。
 そしてキングの眼に閃光が飛び込み、視界が遮られる。
 閃光を背後に飛び出してきた剣士の持つ剣が、体勢を大きく崩して避けようもない己に迫るのを、キングは眺めていた。

  ◆ ◇ ◆ ◇

「ふう。間に合いましたぜ、姫様」

 わたしの隣で銃を構えたゲッツ。
 わたしとゲッツは、マスカー達と戦っていたホブゴブリンを狙撃撃破した。

 そしてわたしの掛け声で状況を察したマスカー達は、ゴブリンキングへと向かい、アデーレさんが攻撃を受け止めた隙にマスカーがキングの首を切り飛ばした。

「わたくしも、冷や冷やものでしたぁ」

 先生も半分腰を抜かしながらも、閃光魔法をキングへと撃ち込んだ。
 皆のコンビネーション攻撃でゴブリンキングという大物を撃破することができたのだった。
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