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第3章 エルフ大公国を襲う悪意!

第10話(累計・第91話) クーリャ83:出発前の準備。わたしは銃剣も作るの!

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「さあ、残り10個。ラストスパートなのぉ!」

 わたしは、西方エルフ大公国へ向かう最終準備中。
 既に雷管をセットしている真鍮製しんちゅうせい薬莢やっきょう発射火薬コルダイトを詰め、弾丸をはめ込んで工具で締める。
 完成したライフル銃の銃弾製造だ。

「クーリャ、それ危なくないの? 弾飛び出さない?」

「ここには火花が出るものは無いですし、火薬も比較的安全なものを使っていますので、注意をすれば大丈夫ですわ。この間作ったアレの方が危なかったですの」

 わたしは、秘密兵器として作ったアレを思い出す。

 ……面制圧兵器としては簡単だけど、ちゃんと飛ぶかなぁ。試射は、出発前にしなきゃね。もうHEATハンマーの二の前は嫌なの。

 試射は大事、もはや不発は許されないのだ。

「ホント、クーリャちゃんは凄いね。どんだけの事覚えているのかい?」

「それはわたくし自身不思議なくらいですの。前世よりも物覚えが良い感じがしますわ」

 エル君の質問に答えながら、完成した銃弾を固定具から外し、次の薬莢を準備するわたし。

 ……これ、単発銃でこれだけ大変なのだから、ガトリングとか機関銃作ったら、弾薬作りでも大変。今回の『出張』終わったら、農園の方々に外注することも考えないとね。もう一人でやる仕事量ではないの。

「わたくし、武器は好きですが、武器が人を傷つけるのは大嫌いです。ですが、この世界、言葉だけでは納得する方々は少ないです。議論・対話をする前段階で力を見せつける必要があります。力なき正義は無力ですものね。なので、こうやって武力を貯えますの」

「うん。アタイ、この間のクーリャの活躍で思ったもん。クーリャの言うことは聞かなきゃって。そりゃクーリャも間違うかもしれないけど、話を聞く価値はあるって思ったし」

「ボクもそうだね。決して無視できない力だもの。これを味方にしたい、敵対したくないって思うのは自然だよね。ボクの国でもクーリャちゃんは暴れるの?」

「それが『抑止力』というものですね。力を見せる事で、敵対したくないと思わせる。そして対話のテーブルに付かせる訳です。もちろん、わたくし個人は誰も殺したくないです。ですが、選択肢として戦いを外すのは愚かとも思っています。あ、エル君の国では攻めてこない限り、荒事はする気無いですよ」

 戦争は愚かではあるが、政治の一形態。
 政治が失敗して最後に行う大博打。
 自分から攻める気が無くても、敵対者が愚かな選択をする場合もある。
 そんな時、非暴力は無力でしかない。
 国民を、仲間達を守るために攻めてきた敵対者を容赦なく撃退する必要がある。

 ……専守防衛とか永久中立は、すっごい武力必要だものね。国際政治に非暴力はあり得ない、世の中はわたし程甘くないの。

「まあ、わたくしは友達は絶対守りますし、裏切ることはあり得ません。決して銃口は一生、ダニエラやエル君には向けません!」

 わたしは作業を中断し、ダニエラとエル君の手を取り、ぎゅっと握る。

「そうだね。クーリャちゃんは、本当にお人好しだもの。わざわざダニエラちゃんとかボクを助けたいって言ってくれるしね。そしてボクの女神様第2号。ボクもクーリャちゃんを守るね」

「アタイはダチのピンチには、何処にいても飛んでくるぞ! クーリャもエルもアタイのダチさ。さあ、エルの母国を3人で救うぞ!」

「おー!」

 3人の幼い誓い、この先もずっと続くと良いなと、わたしはこの時思った。

  ◆ ◇ ◆ ◇

「ゲッツ、ゴットホルトさん。頼んでおいたアレ、出来ましたか?」

「ああ、今までの銃とかに比べたら楽勝さ。既に4丁分作って装着しておいたぞ、姫様」

「で、いつから出張るんだい、クーリャ姫様。それ次第で俺は姫様から教えてもらう事が変わるんだが……」

 わたしは、工房で重い銃を受け取る。
 銃口の先には小ぶりなナイフ、銃剣が取り付けられている。

「ゴットホルトさん。おそらく後5日程度で出発になると思います。では、今晩から各種プラントの概念図とそれに必要な知識をお教えしますので、宜しくですの」

「それは楽しみだ。ゲッツ、お前は2人の姫様を守れよ。後は俺に任せておけ!」

「あーあ。俺も残ってプラント作りたかったなぁ。でも、テストゥード号は、まだまだ試作段階で俺がいなきゃトラブル起った時に逃げる事も出来なくなるし、しょうがないか」

「あら、ゲッツも一緒にお勉強ですわ。先生も聞きますわよね」

「はい、クーリャ姫様。わたくしも学ぶものが多くて楽しみです」

 わたしが出張中、ゴットホルトさんにはプラント建設を依頼している。
 代金は、わたしが与える科学技術。
 今後、彼がドワーフ王国で今回の技術を使う許可も与えている。

 ……技術供与も、実務を行って学ぶのが一番だものね。フランジとかの配管技術は、誰も知らないだろうしね。

「そうそう。マスカーは銃剣の扱い方も勉強してくださいませ。これは槍の感覚で扱うのです。切るよりは刺す武具です」

「ふむ。銃をいちいち手放さずに接近戦に対応できるのは素晴らしいです。もしかして姫様は、この武器を使った武術もご存じですか?」

「銃剣術ですね。一応、基本の型くらいは知ってます。突きからの切り払い。ストックを使った打撃技、刺してからの銃撃などですね」

 わたしは、そこにあった木の棒で、大体の動きを見せる。

「確かに槍術の流れですね、了解です。流石姫様でございます」

 マスカーは、またまたわたしを持ち上げる。

 ……わたし、そんなに賢くも偉くもないもん。ただのオタクなだけだもん! 間違っても女神でも崇拝される者でもないもん。

「クーリャ。アタイいつも思うけど、武器が好きで戦いが嫌いで、武術も科学も知っている女の子ってふつーじゃないよね? 鍛冶仕事が好きなアタイ以上に変じゃない?」

「ダニエラちゃん、それ直球すぎるって。そりゃ、僕もクーリャちゃんは変な子だって思うけど」

「もー、皆。ひどいですのぉ。そりゃ、わたくし。前世から変な子扱いでしたけれどもぉ」

「皆様、アタシの姫様にひどい事言わないでぇ!」

 工房で仲間たちの笑い声が広がった。
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