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第3章 エルフ大公国を襲う悪意!

第1話(累計・第82話) クーリャ74:わたし、新たな事に挑戦するの!

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「わたくしが留守の間に、このような立派なものを作っていただき、ありがとう存じます」

 わたしは、農園や鍛冶場などで働いてくれている方々の前で、お礼を言う。
 わたしが、ドワーフ王国で暴れていた間に、セメントを焼く窯を作ってくれていたからだ。

「クーリャ姫様が欲しがっていましたから、我々も頑張りました。これで水路や建物を作れるんでしょ? 農作業も姫様の作った耕運機で便利になりましたから、このくらいはお安い御用です」

「クーリャちゃん。ホントに君は不思議な子だね。そろそろボクにも種明かししてよね」

「エル。細かい事はどーでもいいじゃん。クーリャはアタイの友達ダチで大恩人。今はクーリャが何を作るのか毎日楽しいもん!」

 農園とかで働いてくれている獣族の方々は、嬉しそうな顔。
 わたしが、新たなる農法として堆肥の積極的利用方法やカブ、トウモロコシ、サイレージ等を家畜飼料として用いる事で冬も家畜を飼育できる方法、更には休耕地として放牧地にはレンゲ、ウマゴヤシ、クローバーを植える事を伝えたからだ。

 ……中世農業から近代農業への進化をさせる方法として中世農業革命ってのがあったのよね。アタシ時代に『ゲーム』設定を作る時にお姉ちゃんに調べさせられたのが、今役に立つなんて複雑な気分なの。

「ええ。クーリャ姫様からお教え頂きました方法で、作物や家畜の生産力が倍ほどになりました。この方法を領内に広めましたから、来年の今頃は更に領内が豊かになっていると思います。本当にありがとうございました」

「それは良かったですわ。わたくしも皆様からのパテント代が手に入りましたので、今回のセメントプラント製造に成功しました。本当にありがとう存じます」

 プラント建設に働いてくれた方々への追加給金は、わたしが貰っているパテント代が元。
 本来、一生懸命に働いてくれた人が、沢山儲けてくれたから出来た事なので、いわば恩返し。

「クーリャ姫様、良かったですわね。さて、ここから何を作るのかは、勝手になさらないで下さいませ。マクシミリアン様からは、暴走させないようにお言葉頂いていますから」

「先生。わたくし、簡単には暴走しませんことよ。次に作る物は、反射炉です。コンクリートと耐熱レンガで熱に強い建物を作って製鉄を行います。あと、コンクリートは農園の水路や小屋作りに使いましょう!」

「なら、俺達の出番だな。ゲッツ、これからが忙しくなるぞ」

「ああ、師匠。俺も、もっと勉強しないといけないな」

 ドワーフ師弟は、今日も元気。
 今回もセメント窯運転開始用の石炭とかを運んでくれた。

「姫様ぁ。お茶入りましたから休憩しますよぉ」

 遠くからカティが、わたし達を呼んでくれる。

「はい、カティ。では、ダニエラ、エル君。それに先生、マスカー。あちらに行きましょう。ゴットホルトさん、ゲッツは、こちらの窯の温度管理を農園の方にお教え下さいませ」

「姫様、お任せを!」

  ◆ ◇ ◆ ◇

「今日も美味しいお茶ですわ」

「アタシ、アデーレさんにも褒められましたぁ」

「カティは、筋が実に良いですね。さすがはクーリャ様専属でございます」

 わたし達に給仕してくれるカティとアデーレさん。
 後ろで警護をしてくれているマスカー以外は、一休み中。

 ……あれから大変だったけど、今は平和が一番なの。

 既にドワーフ王国でのゴーレム「暴走事件」から半月以上が過ぎた。
 事態が落ち着いた頃、わたしはドワーフ王国から帰宅をした。
 わたしと一緒に居たいダニエラとエル君も、わたしと同じ便でウチに来る事になった。

 ……いくらお付きが数人だとは言え、一国の王女、王子様2人が留学となれば大変な荷物量になるよね。そりゃ、馬車一台分くらいだったからテストゥード号で牽引して、その日の内に到着したけどね。

 既にテストゥード号の便利さを知っているダニエラとエル君。
 留学する際には、わたしが帰る時に一緒に行きたいと王妃様に話し、王妃様は苦笑しつつも認めてくれた。
 更に道中に問題が無いようにと、事前に街道の整備やら山賊・怪物退治もしてくれて、とても助かった。

 ……山賊も殆どいなかったそうだし、怪物もゴブリンの巣が少々あったくらいだったって。

 わたしが来るときに戦った山賊グループはかしらを失って壊滅しており、アジトは空っぽだった。
 わたしの行動で、歴史がまた大きく変わり、助かった人が多くなったのは良かったと思う。

「クーリャちゃん。いつになったらボクにキミの秘密教えてくれるの? なんか、ボクだけ外様っぽいんだけど」

「おい! エルは口にする言葉と場所を考えろって。アタイは、この件は迂闊に言えない事だと前から察しているぞ」

 ダニエラはエルを蹴って怒る。

「確かに、いつまでも今のままではいけませんね。今晩お父様に聞いてみますわ」

「クーリャ姫様、くれぐれもお気をつけて下さいませ」

「先生、わたくしも成長はしていますわ。言って良い事と言って良い相手くらいは把握していますわ」

 今、ここに居る人では、アデーレさん以外は、わたしが既に信用している人達。
 また、アデーレさんも「あの」ヤンチャなダニエラにちゃんと仕えて意見も言ってくれる人だから、多分大丈夫だろう。

 ……問題は、ドワーフ王様や王妃様にアデーレさんが秘密を教えてくれって言われた時だよね。王様には逆らえないだろうし。

「あ、クーリャ。安心してね。ウチの国はクーリャの秘密に関しては、一切他言しないって決めているぞ。王国全部を救ってくれた大恩人を守るのは当たり前だからね」

「あ、それはありがとう存じます。実際、あちらでは少しやりすぎましたものね。お礼にまた技術供与をしても良いか、お父様の許可をもらってみます」

 ……わたしが普通じゃないのはモロバレだよね。11歳の女の子が、とんでもない科学技術振り回した上に戦闘指揮までやっちゃったんだもん。

 実際、やりすぎてしまったと帰宅直後、わたしはお父様とお母様にこっぴどく叱られた。
 多くの人々を救うためとはいえ、無茶しすぎた上に秘密の暴露をしすぎたと。

「クーリャ。キミが人々を助けたいって気持ちは素晴らしいし、僕も父親として誇らしいよ。でもね、あまりに自分の存在を軽く見すぎだぞ。キミに何かあったら、どれだけの人が悲しむのか。少しくらいは考えて行動してよね」

「わたくしの大事な娘、クーリャ。頼みますから戦場で戦うのは辞めて下さいませ。わたくし、心配でたまりませんでしたのよ。全く、マクシミリアン様も自分ですぐに動いてしまう性分ですし。クーリャ、貴方が悪だくみが得意なのはマクシミリアン様にも、わたくしにも似ていますわ。本当に貴方は、わたくし達の悪い部分も受け継いだ可愛い娘なのね」

「ニーナ、どうして僕にまで飛び火するのかなぁ。まあクーリャが可愛い娘ってのは同意だけどね」

 お母様のお小言は途中からお父様へのお小言になっていたけれども、言いたいことは理解できる。
 両親に存分にハグされて、自分がどれだけ愛されているのかを、今更ながらに思った。
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