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第2章 ドワーフ王国動乱!

第21話(累計・第60話) クーリャ53:作戦開始! めざせ無血開城!

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「では、皆さま。準備出来ましたわよね。最悪の場合は、テストゥード号まで撤退、そのまま逃げます。が、そんな事は起こさせませんよ!」

「おー!」

 わたしは、全員を集めて作戦直前の決起集会をする。
 誰の顔も緊張はしているものの、やる気に溢れている。
 なぜなら、自分達が行うことは過激ながらも人助け。
 だれも傷つけない為の戦いだから。

「では、出発です!」

  ◆ ◇ ◆ ◇

「ようこそ、クーリャ様。ダニエラ様もお待ちしていますよ」

「ありがとう存じます。あと、ごめんなさいね」

 わたしは、いつも丁寧に挨拶をしてくれている離宮門番の2人に丁重に挨拶を返す。

 ……首をかしげちゃうわよね。でも、先に謝りたかったの。

「クーリャ! ようこそ、とうとう今日お父ちゃんを助けに行けるんだね」

「ボクも頑張るね!」

「では、2人とも大事なものだけ持っていくよー!」

 わたし達は2人を連れて、離宮を出る。
 ここまでは、今までの見送りと同じ、妨害も無い。
 しかし、ここから先は全てがダニエラとエル君を出させないために妨害してくるはずだ。

「警備の方、申し訳ありませんが、ダニエラ様はわたくし達と王様にお会いしますの。通して頂けますか?」

「クーリャ様。我々は、そんなお話は聞いていません。申し訳ありませんが、ダニエラ様を通すことは出来ません」

 予想通りに2人の警備兵は、わたし達の前で斧槍ハルバードを交差し、通せんぼをする。

「はぁ。予想通りですか。だから、先ほど謝ったのです。もう一度言いますね、ごめんなさい」

 わたしは警備兵のおじさんに謝って、アトマイザー噴霧器を2人の顔に向けてひと吹き、中身を吹きかけた。

「ぎ、ぎゃぁぁ」
「痛い、痛いー!」

 警備兵のおじさん、眼を両手で抑えて苦しみ、斧槍を手放した。

「では、先に行きますよ。あ、痛いですが、しばらくしたらちゃんと見える様になるので、ご安心を」

 可愛そうだけど、目を押さえて苦しむ警備兵の方の横を通る。

「ごめん。アタイ、どうしてもお父ちゃんに会いたいんだ! 先に進むね。終わったら、謝りにくるよ」

 ダニエラは、顔見知りだろう警備兵のおっちゃんにすまなそうに声を掛け、わたしの後を追う。

「いくね、ダニエラ!」
「うん!」

  ◆ ◇ ◆ ◇

「カプサイシンスプレー、凄いですわね」

「ええ。わたくしも、ここまで凄いとは思わなかったですの」

「あれの威力は喰らったゲッツと自分が良く理解しています」

「ああ、もう勘弁して欲しいよ」

「ボクもなんか眼が痛くなりそうだよ」

「後でアタイにも教えてね、クーリャ」

「皆さま、ちゃんとついて来てくださいませぇ」

 わたし達は、カティやダニエラに案内されて、城内迷宮を進む。
 目指すは王様の寝室。

 幸いなことに要所要所にいる警備兵のおじさん達を毎回問答無用、先制攻撃スプレー一撃で撃破しているので、別の部署に通報もできない。
 また、わたし達は先生の作った風の壁で守られているので、スプレーを被る危険性も低い。

「ごめんなさいね。わたくし、先に進まなくてはなりませんですの」

「アタイ、お父ちゃんに会いたいんだ。ごめんね!」

 わたしは、飛沫付着防止の伊達メガネをぬぐい、どんどん先に進む。


「ダニエラ様、クーリャ様。ここから先へは進ませは出来ませぬ。皆さまが誰も傷つけたくないのは理解しています。しかし、絶対に勝手は許しません!」

 王様の眠る寝室への直前にある駐屯室、絶対通らなくてはならない場所に、8人もの警備兵が待っていた。

 ……前回、ダニエラが潜んで王様の寝室に入ったときは、誰もいなかったって。一度、突破されたから警備が厳しくなったようね。

「みんな! アタイ、お父ちゃんに会いに行きたいの! 早く通して!!」

 ダニエラは、わたし達の前に進み、警備兵のおっちゃん達に涙をこぼしながら訴える。

「ダメです! 特に今は、薬師とマルゴット様が王にお薬を出しているお時間ですから、誰もお部屋には入れられません」

 なんと今、目の前の寝室に敵がいる。
 このタイミングを逃す機はあり得ない。
 そして徐々に、背後から何かが迫る音が聞こえてくる。
 このままでは逃げ道さえ封じられてアウトだ。

「ダニエラ、泣き落としはダメの様ですね。警備兵の方々、申し訳ありません。出来たらお怪我させたくは無かったのですが、お邪魔されるなら、押し通ります! 先生、ゲッツ、準備を」

「はい、姫様」
「おうさ、姫様!」

 わたしは、ダニエラの肩に手を置き、首を振って説得がダメなのを話し、ゲッツを隠す様にダニエラの前に進む。
 そして先生とゲッツに「秘密兵器その3」を準備してもらう。

 ……先生とゲッツが準備中に、警備兵の視線をわたしに向けさせるの!

「姫様、あまり前に出るのは危険です!」

 わたしの前にマスカーが出る。
 そして警備兵へと日本刀を向けた。

「何をする気か? いくらダニエラ様のお友達でも我らに刃を向けたら容赦致しません!」

 警備兵も、わたし達へと短めの剣や戦斧を向ける。
 彼らは室内戦を想定してか、鎖帷子チェーンメイル主体の鎧を着ている。

 ……流石に狭い部屋で斧槍は使わないよね。でも甘いの!

「ゲッツ、発射!」

「おう!」

 ゲッツは、わたしの背後から身体を出し、太い筒の先を警備兵達へと向けて引き金を引いた。
 引き金は火縄に繋がっており、火皿に火を押し付けた。
 そして火皿の中にある黒色火薬が燃えあがり、筒の中で爆破する。

 ぱん!

 軽い破裂音と共に筒先から飛び出したものが、警備兵達を襲った。

「ぐ!」
「ぎ!」
「あ!」

 密集体形で居たのと装甲が薄いのが幸い、一撃で彼らの半数は倒れた。
 そこにマスカーが突撃、まだ倒れていない混乱中の警備兵達にスプレーを吹きかけた。

 そして、わたしは倒れた彼らに、トドメとばかりにカプサイシンスプレーをダメ押しした。

「ごめんなさいね。大丈夫、弾はゴムだったから死にはしませんわ。ゲッツ、部屋に入る前に次弾装填です!」

 わたし達は、悶絶している彼らの横を謝りながら通った。

 ……ゴム散弾銃、だいせいこー!

 もしもカプサイシンスプレーが効かなかった時を考えて、ゲッツに頼んで作ってもらった火縄式散弾銃を持ち込んでいたのだ。
 そしてゴムも沢山仕入れていたので、大怪我させない様に散弾全部をゴムにしていた。
 なお、火縄着火は先生の魔法。

 ……さあ、王様のところに行くの!
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