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第2章 ドワーフ王国動乱!

第15話(累計・第54話) クーリャ47:ダニエラ様と会うわたし。そして困った子にも出会う。

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「では、こちらでございます」

 城内下働きのお姉さん? に案内されて、わたし達は迷宮のような城内を抜け、第一王女が管理する離宮へと来た。

「このお城、もし攻め落とすなら大変ですわね。このように迷宮となっているのでしたら、普通の手では難しい気がしますの」

「姫様、不穏な発言はお控えくださいませ」

「あら、マスカー。わたくしは間違ってもドワーフ王国を攻める気はありませんの。今回は逆に助けに来てますのにね」

 離宮門番として立つ斧槍ハルバードを持つドワーフ警備兵が、わたしの発言でぴくりと反応するのを、心配してくれるマスカー。
 もちろん、わたしは口にして考えただけで、実際に攻め落とす気は毛頭ない。

 ……本気でやるなら、塩素ガスとか一酸化炭素ガスでのガス攻めかしら。一応、鉱山当時の排気系はあるっぽいけど、中を皆殺しにするならガスでやっちゃえば簡単。でも、それはそれ。逆に言えば、味方なんだから弱点を教えてあげて、対策をしてもらった方が良いもん。

「では、中にお入りください」

 わたしの発言を受けて、少し硬い表情の警備兵。

「変な事を言って、ごめんなさいね。わたくし、この城やドワーフ王国の皆さまが素晴らしいと思っています。なので、皆さまとも仲良くしたいですわ」

 わたしは門を通り過ぎる時に、警備兵達に謝罪をした。

「え? お貴族様が俺たちに謝るのか?」

「もちろんですの。誰でも間違ったことをしてしまったら謝るのは当然。貴方方は職務に真面目なのですから、変な事を言ったわたくしが悪いですものね」

 わたしは、軽く頭を下げながら離宮の門を通った。

 ……失敗しちゃったの。でも、離宮警備兵を見るに愛国心も高いから、ダニエラ様を閉じ込めているのは本位じゃなさそうね。

「姫様、お口チャックですよ。ほんと、姫様には困りますわ。でも、今の警備の方の反応ですと、ダニエラ様を今すぐ害するということは無さそうですね」

「ふぅ、姫様が話される時はドキドキもんだ。今のは結果オーライっぽいけど、注意してくれよ」

「先生、ゲッツ。心配させて、ごめんなさい」

 わたしは、もう一度皆に謝って離宮内に入った。

  ◆ ◇ ◆ ◇

「では、ダニエラ様にお会いする前に、再度情報をまとめましょう。まずは、ダニエラ様が幽閉されている理由です」

 ゼリーが出来上がり、ダニエラ様が幽閉されている離宮に向かう前。
 わたし達は、最終調整をした。

「王族が言われるには、王様が体調不良な時期に外に遊びに行くのは不謹慎だから、第一王女様の所有する離宮に閉じ込めたとあります。しかし、巷に流れる噂では、王族同士の相続争いに巻き込まれ、知ってはならない情報を知ったので幽閉されていると……」

「そこが辻褄が合わねぇな。師匠が直接城内で働く人に聞いた話でも噂どおり。しかし、カティが調理場などで聞いた話とも違う。城内で働く人の中で話が一致しないのもおかしいぞ」

「ええ。わたくしがカティと一緒に聞いた話でも、姫様と一緒に晩さん会で聞いた話通りです」

「つまり、誰かが情報操作をしている事になります、姫様。さすれば、その犯人は……」

 全員が聞いてきた話を纏めると、ダニエラ様を害したい勢力は王族以外に存在する事になる。

「ゲッツ。ゴットホルトさんがお話を聞いたのは何方どなたでしたか?」

「酒場で聞いたらしいんだが、只人ヒト族の庭師だったらしいな」

 ……なら、多分。

「先生、カティ。第一王女様がウチの王国から連れてきたという薬師くすしさんは、もちろん只人族ですわよね」

「はい。男性で名前はイゴーリと言われるとか。今まで見たことも無い薬を調合しているそうです」

 ……これで、なんとなく繋がったかも。

「まだ確定では無いですが、最終的判断はダニエラ様にお会いしてお話を聞いてからにしましょう。わたくしの予想が当たっていれば……」

  ◆ ◇ ◆ ◇

「初めまして、ダニエラ様。わたくし、隣国ロマノヴィッチ王国、ニシャヴァナ男爵マクシミリアンの娘、クーリャ・マクシミリアーノヴァ・カラーシュニコヴァでございます」

「アタイがイルヴァータル・ゲーベロス・ドワーフ王国第五王女のダニエラだ! 其方そなたがゴットホルトの話に出ていた、アタイそっくりの子だな。ゲッツの主とも聞く。ずっとアタイはクーリャと話をしたかったんだ!」

 この元気そうな褐色元気幼女がダニエラ様。
 身長は今のわたしより少し低めで130センチは無く、ボブカットの焦茶色な髪が、彼女の元気っぷりを示している

 わたくしは、デボラや先生に習ったお貴族様定番のご挨拶を丁寧にしたのだが、ダニエラ様は話し慣れない言葉の問題なのか、べらんめい調かつドヤ顔でまっ平らな胸を張り、とてもお姫様とも思えない挨拶をしてきた。

 ……『ゲーム』でも、この子は残念な感じだったものね。

「ダニエラ姫様。そのようなご挨拶では……」

 お付きのおばちゃんが、わたしに申し訳ない風な視線を向けて、ダニエラ様を叱責する。

「だって、アタイ。こんな所に閉じ込められて王女様じゃないよ? 同じくらいの子供が遊びにきたんだもん。ややこしい礼儀なんてどっちでもいいじゃん」

「ダニエラちゃんたら、しょうがないね。では、ボクはちゃんとご挨拶致します。クーリャお嬢様、ボクはエルフの国から参りましたエルロンド・マイアールと申します。今後ともよろしくお願いします」

 そして彼女の横に立つ少年。
 長い耳と華奢な体躯、身長もまだ145センチ程度と低く、声も変声期前。
 エルフ族らしい優美な顔と銀色に近いプラチナブロンドに、翡翠の眼。
 彼も学園で、わたしの友人になるはずの子。

 ……どうして、ここにエル君がいるの? あれ、もしかして歴史の動きが変になっているのかな?

「よ、よろしくですわ。エルロンド様、ど、どうしてエルフの方がここにいらっしゃるのですか?」

「クーリャ様。ボクの事はエルとお気軽にお呼びくださいませ。ボクも子供ですので政治は詳しく知りませんが、友好使節団としてドワーフ王国に父達といっしょに来ましたが、ダニエラちゃんと友達になって、彼女の危機を感じまして一緒に居るのです」

 おもわず予想外の人物に出会って動揺するわたし。

 ……なんでよりによってエル君なのぉ!

「そ、そうなのですか。エル様」

「様は要らないですよ、君でよろしくです、クーリャちゃん。君もお美しく可愛い。将来が実に期待できますね」

「は、はぁ。エル君」

 ……忘れてたの。コイツは、美的感覚が微妙にエルフ族とはズレててロリコン傾向あったんだった。だから、わたしやダニエラ様にくっつく事が多かったの。

 わたしは、話がややこしくなりそうな気がしてきた。
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