爆裂令嬢(ボンバーガール)は、あきらめない~科学チートで乙女ゲームを攻略するの! アタシを追放した悪徳貴族は後悔しても、もう遅い!!~

GOM

文字の大きさ
上 下
42 / 127
第2章 ドワーフ王国動乱!

第2話(累計・第41話) カエデ6:なおも眠るカエデ。犯人に警察の手が伸びる!

しおりを挟む
 今日もわたしさくらは妹、カエデの眠る病院へ自動車を運転して行く。

「いつになったら、カエデは起きるのかなぁ、お母さん?」

 わたしは、助手席に座る母に聞く。

「そうねぇ。美味しいもの匂わせてもダメだったし、アンモニアでも嗅がそうかしら?」

 すでに事故から6日目。
 父は、いつまでも寝坊助なカエデを待てずに、後ろ髪を引かれながら再び海外出張へと一人戻った。
 母は、カエデの入院中の面倒を見るために、残ってくれている。

「それは病院でもやっているんじゃないかしら? 脳波もサイクルが早い以外は異常も無いって話だし、気長に待ちましょうね。起きてもしばらくはリハビリで大変だし。春にはお父さんも日本に帰ってくるから大丈夫よ」

「お母さんもお父さんも、のん気ねぇ。わたしなんか、心配で仕方ないもん」

 両親は、カエデに対面したとき、大きく動揺して泣いたが、それ以降は落ち着いたもの。
 入院保険の処理やら、父の出張期間短縮やら、いろいろと動いてて、いつカエデが起きだしても問題が無いようにしている。

 ……なまじ、わたしが事故じゃないかもしれない事を知っているから、気が気じゃないのかもね。

「あなたは、ちゃんと明日からは仕事に行きなさいね。そして雅也マサヤさんにも会って甘えてきなさい。カエデの事はわたしが面倒見るから。落ち着いたら、アイツにお礼参りにいかなきゃだわ。嫁入り前の娘を傷つけた罰は受けてもらわなきゃね」

「な、なんで、ここで雅也さんの名前が出るのよ。って、それよりも何でお母さんが事故じゃない事知っているの!」

 わたしは、予想外の答えを聞いて驚き、ハンドルさばきを間違えそうになった。

「あら、さくら。顔真っ赤にして初々しいわね。よそ見運転はダメよ。おかーさんの情報収集能力を舐めちゃダメね。アカネちゃんだったっけ。あんな可愛い子も、爆発に巻き込みそうになるなんて許せないわ! どうして社内争いで事故まで起こさせるんだか」

 どうやら、わたしが知らなかっただけで、母はすべてお見通しらしい。

「お母さん、ハッキングとかはやっていないよね? 後は警察に任せた方が良いと思うよ。わたしが調べただけでも、やっかいそうな相手だし」

「わたしが、どういう手段とったかはナイショね。今、会長さんや社長さんと直接交渉中だから、近日中に決着がつくと思うわ」

 おそるべしは母の愛と暴走。
 「犯人」は近日中に痛い目に合うのだろう。

 ◆ ◇ ◆ ◇

正人まさと、いや松沢まつざわ専務。今日は、何で呼ばれたのかは分かっているな?」

「オヤジ、それにアニキ。俺は何もやっていないぞ?」

 大帝都化成株式会社、会長室。
 そこには会長、社長が硬い表情をして専務を待ち受けていた。

正人まさと! 今日は、息子としてではなく、専務として呼んでいる。公私をわきまええるんだ!」

「分かりました、会長。忙しい時に呼び出した理由をお聞かせくださいませ」

 会長は、声を荒げて息子を叱る。
 しかし、怒られた息子は気にもしていない。

「では、私から説明しよう。我が社は大学との産学協力で、空気中二酸化炭素固定技術を研究している。この研究プラントが一週間前に爆発を起こした。そこまでは知っているな?」

「ああ、アニキ。いえ、社長。よく知ってます」

 爆発事故の原因を作ったにも関わらず、知らぬ顔の専務。

「よくそんな顔で言えるな、専務! 事故はオマエが勝手に視察に行った直後に発生している。普通ではありえない事故だったとも警察から聞いている」

「そうですか? 私はプラントには一切触れていませんから、無関係ですよ?」

「確かにオマエは一切触っていないな。しかし、あの時連れて行った部下はどうかな? 実はな、外部からタレコミがあったんだよ。そして確認をしたら、同行したオマエの部下は事実を吐いたぞ!」

 部下からの取り調べ調書、及び事故工作に使った証拠が専務の目の前に示された。

「これはこれは。アイツらにも困ったものです。私の才能を逆恨みして、私に罪を擦り付けるなんて」

「まだ言い逃れをするのか、正人まさと! 兄として、社長として恥ずかしいぞ。オマエこそ、常務に仕事を取られたのを逆恨みしたそうじゃないか。もうオマエを庇うのも無理だ。会長、父さんも今回の事でオマエを切る事に決めた!」

「ああ、もう終わりだ、正人まさと。会社内の問題で済まなくなった以上、家族であろうとも終わりだ。もっと早くオマエを会社から切り離して、施設にでも送るべきだったのだろう」

 大汗をかきながらも、しらを切る専務。
 しかし、兄は泣きながら会社の為に専務を切り捨てる判断をした。
 また、父は今までの教育が間違っていたのを、今更ながら後悔した。

「オヤジ、それにアニキ! 俺の言うことを信じずに、バカ共の言うことを信じるのか! 誰もかれも俺の才能をうらやんで妬んでいるんだ!」

「まだ分からないのか、正人まさと。本当にオマエはダメだったんだな。部下の一人がオマエが彼の家族を人質にして命令するのを録音していたんだよ」

 社長はパソコンを操作して音声を流す。

『オマエ、もししくじったらオマエの妻がどうなるか、分かっているんだろうなぁ! オマエにはもったいない美人だ。俺の二号にしたくなかったら、絶対にあのプラントを壊せ。絶対に俺が関係しているって証拠を残すなよ!』

「こ、これは……。何かの間違いだよ、なあ、オヤジ、アニキ。俺は何も悪くない!」

「もう手遅れなんだよ。警察も動いている。もみ消しもできない。今から会長と私はマスコミに会見の準備をしなくてはならない。オマエは罪を償え! すいません、お待たせいたしました」

 自らの醜い声を聞いて狼狽するも、まだ己の罪を認めない専務。
 しかし、社長の掛け声で会長室のドアが開き、背広だがゴツイ人達が入ってきた。

「いえいえ。こちらこそ、ご協力ありがとうございました。では、午後2時45分。松沢まつざわ 正人まさと。激発物破裂罪、現住建築物等放火罪、傷害罪、その他もろもろで逮捕する!」

 おののく専務の前に刑事たちが迫る!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

素材採取家の異世界旅行記

木乃子増緒
ファンタジー
28歳会社員、ある日突然死にました。謎の青年にとある惑星へと転生させられ、溢れんばかりの能力を便利に使って地味に旅をするお話です。主人公最強だけど最強だと気づいていない。 可愛い女子がやたら出てくるお話ではありません。ハーレムしません。恋愛要素一切ありません。 個性的な仲間と共に素材採取をしながら旅を続ける青年の異世界暮らし。たまーに戦っています。 このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。 裏話やネタバレはついったーにて。たまにぼやいております。 この度アルファポリスより書籍化致しました。 書籍化部分はレンタルしております。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

処理中です...