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第2章 ドワーフ王国動乱!
第2話(累計・第41話) カエデ6:なおも眠るカエデ。犯人に警察の手が伸びる!
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今日もわたしは妹、カエデの眠る病院へ自動車を運転して行く。
「いつになったら、カエデは起きるのかなぁ、お母さん?」
わたしは、助手席に座る母に聞く。
「そうねぇ。美味しいもの匂わせてもダメだったし、アンモニアでも嗅がそうかしら?」
すでに事故から6日目。
父は、いつまでも寝坊助なカエデを待てずに、後ろ髪を引かれながら再び海外出張へと一人戻った。
母は、カエデの入院中の面倒を見るために、残ってくれている。
「それは病院でもやっているんじゃないかしら? 脳波もサイクルが早い以外は異常も無いって話だし、気長に待ちましょうね。起きてもしばらくはリハビリで大変だし。春にはお父さんも日本に帰ってくるから大丈夫よ」
「お母さんもお父さんも、のん気ねぇ。わたしなんか、心配で仕方ないもん」
両親は、カエデに対面したとき、大きく動揺して泣いたが、それ以降は落ち着いたもの。
入院保険の処理やら、父の出張期間短縮やら、いろいろと動いてて、いつカエデが起きだしても問題が無いようにしている。
……なまじ、わたしが事故じゃないかもしれない事を知っているから、気が気じゃないのかもね。
「あなたは、ちゃんと明日からは仕事に行きなさいね。そして雅也さんにも会って甘えてきなさい。カエデの事はわたしが面倒見るから。落ち着いたら、アイツにお礼参りにいかなきゃだわ。嫁入り前の娘を傷つけた罰は受けてもらわなきゃね」
「な、なんで、ここで雅也さんの名前が出るのよ。って、それよりも何でお母さんが事故じゃない事知っているの!」
わたしは、予想外の答えを聞いて驚き、ハンドルさばきを間違えそうになった。
「あら、さくら。顔真っ赤にして初々しいわね。よそ見運転はダメよ。おかーさんの情報収集能力を舐めちゃダメね。アカネちゃんだったっけ。あんな可愛い子も、爆発に巻き込みそうになるなんて許せないわ! どうして社内争いで事故まで起こさせるんだか」
どうやら、わたしが知らなかっただけで、母はすべてお見通しらしい。
「お母さん、ハッキングとかはやっていないよね? 後は警察に任せた方が良いと思うよ。わたしが調べただけでも、やっかいそうな相手だし」
「わたしが、どういう手段とったかはナイショね。今、会長さんや社長さんと直接交渉中だから、近日中に決着がつくと思うわ」
おそるべしは母の愛と暴走。
「犯人」は近日中に痛い目に合うのだろう。
◆ ◇ ◆ ◇
「正人、いや松沢専務。今日は、何で呼ばれたのかは分かっているな?」
「オヤジ、それにアニキ。俺は何もやっていないぞ?」
大帝都化成株式会社、会長室。
そこには会長、社長が硬い表情をして専務を待ち受けていた。
「正人! 今日は、息子としてではなく、専務として呼んでいる。公私を弁えるんだ!」
「分かりました、会長。忙しい時に呼び出した理由をお聞かせくださいませ」
会長は、声を荒げて息子を叱る。
しかし、怒られた息子は気にもしていない。
「では、私から説明しよう。我が社は大学との産学協力で、空気中二酸化炭素固定技術を研究している。この研究プラントが一週間前に爆発を起こした。そこまでは知っているな?」
「ああ、アニキ。いえ、社長。よく知ってます」
爆発事故の原因を作ったにも関わらず、知らぬ顔の専務。
「よくそんな顔で言えるな、専務! 事故はオマエが勝手に視察に行った直後に発生している。普通ではありえない事故だったとも警察から聞いている」
「そうですか? 私はプラントには一切触れていませんから、無関係ですよ?」
「確かにオマエは一切触っていないな。しかし、あの時連れて行った部下はどうかな? 実はな、外部からタレコミがあったんだよ。そして確認をしたら、同行したオマエの部下は事実を吐いたぞ!」
部下からの取り調べ調書、及び事故工作に使った証拠が専務の目の前に示された。
「これはこれは。アイツらにも困ったものです。私の才能を逆恨みして、私に罪を擦り付けるなんて」
「まだ言い逃れをするのか、正人! 兄として、社長として恥ずかしいぞ。オマエこそ、常務に仕事を取られたのを逆恨みしたそうじゃないか。もうオマエを庇うのも無理だ。会長、父さんも今回の事でオマエを切る事に決めた!」
「ああ、もう終わりだ、正人。会社内の問題で済まなくなった以上、家族であろうとも終わりだ。もっと早くオマエを会社から切り離して、施設にでも送るべきだったのだろう」
大汗をかきながらも、しらを切る専務。
しかし、兄は泣きながら会社の為に弟を切り捨てる判断をした。
また、父は今までの教育が間違っていたのを、今更ながら後悔した。
「オヤジ、それにアニキ! 俺の言うことを信じずに、バカ共の言うことを信じるのか! 誰もかれも俺の才能を羨んで妬んでいるんだ!」
「まだ分からないのか、正人。本当にオマエはダメだったんだな。部下の一人がオマエが彼の家族を人質にして命令するのを録音していたんだよ」
社長はパソコンを操作して音声を流す。
『オマエ、もししくじったらオマエの妻がどうなるか、分かっているんだろうなぁ! オマエにはもったいない美人だ。俺の二号にしたくなかったら、絶対にあのプラントを壊せ。絶対に俺が関係しているって証拠を残すなよ!』
「こ、これは……。何かの間違いだよ、なあ、オヤジ、アニキ。俺は何も悪くない!」
「もう手遅れなんだよ。警察も動いている。もみ消しもできない。今から会長と私はマスコミに会見の準備をしなくてはならない。オマエは罪を償え! すいません、お待たせいたしました」
自らの醜い声を聞いて狼狽するも、まだ己の罪を認めない専務。
しかし、社長の掛け声で会長室のドアが開き、背広だがゴツイ人達が入ってきた。
「いえいえ。こちらこそ、ご協力ありがとうございました。では、午後2時45分。松沢 正人。激発物破裂罪、現住建築物等放火罪、傷害罪、その他もろもろで逮捕する!」
おののく専務の前に刑事たちが迫る!
「いつになったら、カエデは起きるのかなぁ、お母さん?」
わたしは、助手席に座る母に聞く。
「そうねぇ。美味しいもの匂わせてもダメだったし、アンモニアでも嗅がそうかしら?」
すでに事故から6日目。
父は、いつまでも寝坊助なカエデを待てずに、後ろ髪を引かれながら再び海外出張へと一人戻った。
母は、カエデの入院中の面倒を見るために、残ってくれている。
「それは病院でもやっているんじゃないかしら? 脳波もサイクルが早い以外は異常も無いって話だし、気長に待ちましょうね。起きてもしばらくはリハビリで大変だし。春にはお父さんも日本に帰ってくるから大丈夫よ」
「お母さんもお父さんも、のん気ねぇ。わたしなんか、心配で仕方ないもん」
両親は、カエデに対面したとき、大きく動揺して泣いたが、それ以降は落ち着いたもの。
入院保険の処理やら、父の出張期間短縮やら、いろいろと動いてて、いつカエデが起きだしても問題が無いようにしている。
……なまじ、わたしが事故じゃないかもしれない事を知っているから、気が気じゃないのかもね。
「あなたは、ちゃんと明日からは仕事に行きなさいね。そして雅也さんにも会って甘えてきなさい。カエデの事はわたしが面倒見るから。落ち着いたら、アイツにお礼参りにいかなきゃだわ。嫁入り前の娘を傷つけた罰は受けてもらわなきゃね」
「な、なんで、ここで雅也さんの名前が出るのよ。って、それよりも何でお母さんが事故じゃない事知っているの!」
わたしは、予想外の答えを聞いて驚き、ハンドルさばきを間違えそうになった。
「あら、さくら。顔真っ赤にして初々しいわね。よそ見運転はダメよ。おかーさんの情報収集能力を舐めちゃダメね。アカネちゃんだったっけ。あんな可愛い子も、爆発に巻き込みそうになるなんて許せないわ! どうして社内争いで事故まで起こさせるんだか」
どうやら、わたしが知らなかっただけで、母はすべてお見通しらしい。
「お母さん、ハッキングとかはやっていないよね? 後は警察に任せた方が良いと思うよ。わたしが調べただけでも、やっかいそうな相手だし」
「わたしが、どういう手段とったかはナイショね。今、会長さんや社長さんと直接交渉中だから、近日中に決着がつくと思うわ」
おそるべしは母の愛と暴走。
「犯人」は近日中に痛い目に合うのだろう。
◆ ◇ ◆ ◇
「正人、いや松沢専務。今日は、何で呼ばれたのかは分かっているな?」
「オヤジ、それにアニキ。俺は何もやっていないぞ?」
大帝都化成株式会社、会長室。
そこには会長、社長が硬い表情をして専務を待ち受けていた。
「正人! 今日は、息子としてではなく、専務として呼んでいる。公私を弁えるんだ!」
「分かりました、会長。忙しい時に呼び出した理由をお聞かせくださいませ」
会長は、声を荒げて息子を叱る。
しかし、怒られた息子は気にもしていない。
「では、私から説明しよう。我が社は大学との産学協力で、空気中二酸化炭素固定技術を研究している。この研究プラントが一週間前に爆発を起こした。そこまでは知っているな?」
「ああ、アニキ。いえ、社長。よく知ってます」
爆発事故の原因を作ったにも関わらず、知らぬ顔の専務。
「よくそんな顔で言えるな、専務! 事故はオマエが勝手に視察に行った直後に発生している。普通ではありえない事故だったとも警察から聞いている」
「そうですか? 私はプラントには一切触れていませんから、無関係ですよ?」
「確かにオマエは一切触っていないな。しかし、あの時連れて行った部下はどうかな? 実はな、外部からタレコミがあったんだよ。そして確認をしたら、同行したオマエの部下は事実を吐いたぞ!」
部下からの取り調べ調書、及び事故工作に使った証拠が専務の目の前に示された。
「これはこれは。アイツらにも困ったものです。私の才能を逆恨みして、私に罪を擦り付けるなんて」
「まだ言い逃れをするのか、正人! 兄として、社長として恥ずかしいぞ。オマエこそ、常務に仕事を取られたのを逆恨みしたそうじゃないか。もうオマエを庇うのも無理だ。会長、父さんも今回の事でオマエを切る事に決めた!」
「ああ、もう終わりだ、正人。会社内の問題で済まなくなった以上、家族であろうとも終わりだ。もっと早くオマエを会社から切り離して、施設にでも送るべきだったのだろう」
大汗をかきながらも、しらを切る専務。
しかし、兄は泣きながら会社の為に弟を切り捨てる判断をした。
また、父は今までの教育が間違っていたのを、今更ながら後悔した。
「オヤジ、それにアニキ! 俺の言うことを信じずに、バカ共の言うことを信じるのか! 誰もかれも俺の才能を羨んで妬んでいるんだ!」
「まだ分からないのか、正人。本当にオマエはダメだったんだな。部下の一人がオマエが彼の家族を人質にして命令するのを録音していたんだよ」
社長はパソコンを操作して音声を流す。
『オマエ、もししくじったらオマエの妻がどうなるか、分かっているんだろうなぁ! オマエにはもったいない美人だ。俺の二号にしたくなかったら、絶対にあのプラントを壊せ。絶対に俺が関係しているって証拠を残すなよ!』
「こ、これは……。何かの間違いだよ、なあ、オヤジ、アニキ。俺は何も悪くない!」
「もう手遅れなんだよ。警察も動いている。もみ消しもできない。今から会長と私はマスコミに会見の準備をしなくてはならない。オマエは罪を償え! すいません、お待たせいたしました」
自らの醜い声を聞いて狼狽するも、まだ己の罪を認めない専務。
しかし、社長の掛け声で会長室のドアが開き、背広だがゴツイ人達が入ってきた。
「いえいえ。こちらこそ、ご協力ありがとうございました。では、午後2時45分。松沢 正人。激発物破裂罪、現住建築物等放火罪、傷害罪、その他もろもろで逮捕する!」
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