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第1章 爆裂令嬢、爆誕!!

第29話 カエデ4:事故の真相! さくらは、真実を知る。

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 爆発事故から翌日。
 さくらは、妹カエデが入院している総合病院を訪れた。

医師せんせい! 妹の容態はどうですか?」

「現状は、昨日とは大きく変化は無いです。少なくとも悪い方向には、いってません。背中の火傷は1度くらいですし、他の傷も大きく無いですから、頭部以外の傷は殆ど残らないと思います。頭も髪が生えたら目立たなくなるくらいでしょう。嫁入り前の女の子に傷残るのは嫌ですものね。後は、彼女がいつ眼を覚ますかです」

 ICUのベットに眠る妹。
 酸素マスクも外されて、点滴を複数受けているのと、髪を短く切られた頭など身体の一部がガーゼと包帯に覆われているくらい。
 顔が綺麗なので、普通に眠っているようにしか見えない。

「お父さん達は、明後日にならないと帰ってこれないから、それまでには眼を覚ましてよ。アンタが居ないと家が寂しいのよ」

「お姉さん、今日もいらしていたのですね」

 さくらは、背後から少女に呼ばれた。

「えっと、確かアカネちゃんだったっけ? 怪我は大丈夫?」

「はい、今日は傷の処置に来ました。先輩は、まだ眠っているんですね」

 アカネは心配そうな顔で、さくらに聞いた。

  ◆ ◇ ◆ ◇

「まだ確定じゃないんですが、爆発事故は事故じゃないかも知れないんです」

 アカネちゃんという妹の後輩が、わたしさくらに驚くべき事を言う。

 ……ホント、この子はまだ高校生くらいにしか見えないわ。お胸のサイズは見事なんだけど。大学3年っていうから、二十歳は越えているんだよね

「それは、どういう事なの?」

「警察の鑑識の人から、先輩。あ! 男の大学院生の先輩が聞いた話なんですが、触媒の量や送られるガス圧が計器の指示値よりも多かったんです。先輩たちが鑑識の人に設定値を言ったら、そんなはずは無い。これなら倍はエチレンガスが発生したに違いないって言うんです」

 アカネちゃんは、可愛い童顔を曇らせて事件について語る。

「じゃ、どうしてそうなったのかしら? そのお話しだと、学生達が最後に設定した後に、誰かがプラントを触って事故が起こるようにしたみたい……」

「ええ、その可能性があるんです。そして、事件直前の早朝に教授の元に来て、わたし達よりも先にプラントを見た人も居るんです」

「じゃ、その人がカエデを酷い目にあわせた犯人!!」

 わたしは、病院の休憩室にも係らず、大声を出してしまう。

「お姉さん、お静かに。驚かれるのも分かりますが、今は『まだ』犯人とも言えません」

「あ、ごめんなさい。歳上のわたしが狼狽しちゃったらダメだよね」

「いえ。先輩の事を思ったら慌てちゃうのも仕方が無いです。わたしも男の先輩方から聞いた直後、その男の会社に突撃しようと思っちゃったんです。教授に止められましたけどね」

 アカネちゃんは涙ぐみながらも、しっかりとした声で話す。

 ……この子もカエデの事が大好きなのね。まったく、男っ気無いと思ったら、女の子を落としていたのね、カエデったら。

「とりあえず犯人かどうかは別にして、その男が来た後で事故が起きたのだから、怪しいよね。その事は警察には話したの?」

「はい、既に話しています。流石に捜査内容は、わたし達には教えてくれませんが、何か掴んでくれていたらとは思います」

 事故から事件となるかどうか、後は警察に任せるしかない。
 しかし、妹を酷い目に合わせた男が誰か、わたしは知りたい。

「アカネちゃん。そいつが誰か教えてくれない? もちろん、わたしも会社に殴りこみには行かないわ」

「はい、彼はスポンサー会社、大帝都化成の重役、……」

  ◆ ◇ ◆ ◇

「おい! 会社にまで警察が来たそうじゃないか!! 俺のところまで来たら困る! どうして、こうなった!!!」

 大手化学会社、大帝都化成株式会社。
 そこは化学繊維やプラスチックなどの有機合成を主とする大手化学品メーカー。
 近年は、エコにも力を入れており、カエデの研究室で行われている二酸化炭素固定、エチレン合成は、今後の主要産業にもなりうると、一大プロジェクトとして大規模資金投入をした。

「はっ! 専務が研究室に赴いて事故前のプラントに触れた事が大学側から警察に伝えられたからでしょう」

「そんな事で俺が疑われても困る! 俺は常務のアイツの邪魔をしたかっただけで、事故までは起こしたかった訳じゃない。オマエらが勝手にしただけだ!」

 本社ビルの役員室、そこに座る四十路後半の不健康そうに太った男。
 彼こそが、松沢まつざわ 正人まさと
 大帝都化成、会長の松沢 隆俊たかとしの三男。
 中学時代から勉強についてゆけず、不登校寸前だったのを当時社長だったタカトシが金の力で大学付属学校に強制転校、大学卒業まで持って行き、そのまま自らの会社に入社させた。

「常務のやつ、俺のことなんか無視して直接社長アニキやオヤジに話をするんだぞ。そして、会社のメインプロジェクトを任されやがった。本当なら専務の俺がすべき仕事だろ?」

 しかし、愚かで周囲を妬み恨むばかり。
 大きな事を言っては、自分では何もせずに部下任せ。
 そして失敗した部下を叱責するだけ。

 満足に仕事が出来ないマサトに困り果てた会長、社長は専務にした彼を、飼い殺す事にした。

 身内から賢くて美しい嫁も探してきたが、マサトのあまりも愚かな行動や堕胎まで起きた浮気に業を煮やした妻は、子供を連れて離婚。
 彼らの面倒は、子供の祖父に当たる会長が見ている。

 もはや、会社内でもお荷物、「仕事せんむしない人」と揶揄されている。
 いや、仕事をさせたら大変な人扱いだ。

 会社のOLにも手を数回出し、警察ざた寸前になって会長が金の力でもみ消した事例も多い。
 次に何か大きな事をやれば、流石に会長や社長も縁を切るとまで言われている。

「しかし、専務。もし社内でも、今回の事件が我々の仕業だと分かればお終いです。会社に損害を与えただけでなく、業務命令に逆らい、破壊工作までしたとなれば、懲戒免職だけではすみません。刑事罰や民事訴訟すらも……」

「うるさい! それは、実行犯のオマエらだけの問題だろ? 俺は何も具体的には命じていないぞ。常務のプロジェクトを失敗させろと言っただけだ!」

 マサトは、自分勝手な事を言って、自分は無関係だと叫ぶ。
 部下の家族をある意味人質にとって、悪行を命令したにも係らず。
 その外道さに、部下達も自らが仕えた相手が間違いだったのを後悔した。
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