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第1章 爆裂令嬢、爆誕!!

第4話 クーリャ2:当面の方針、めざせ運命逆転劇!

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「とにかく、今後の方針を決めなきゃね」

 深夜の寝室、ベットの横ではキツネ耳の少女メイド、カティが半分椅子から落ちそうで、むにゃむにゃと毛布や自らの大きな尻尾に抱きついて寝ている。

 わたしは、さし当って問題になりそうな事を思い出す。

「このままなら、5年後にウチの領地は王族やアントニー達に反逆罪をでっち上げられて、軍勢に踏み潰されるんだったっけ?」

 わたしは、「アタシ」の記憶、ゲーム「乙女革命戦記」のクーリャが巻き込まれる運命、シナリオを思い出す。

「前世でも親不孝して、今世でも家族みんなが殺されるって、どれだけアタシ不幸なんだろうね。こんなシナリオ考えたお姉ちゃんを恨むのぉ!」

 わたしは、12歳になると王都にある貴族達が集まる王立魔法学院へと通うことになる。
 この世界での貴族、平民が普通持たない魔法の力を持ち、それを生かすため、更に貴族としての生き方や考え方、領地運営に必要な知識を学び、武術に優れる者は騎士としての作法や戦い方を学ぶために学院へと通う。

 学院で、わたしはゲーム主人公のカトリーヌ・レオンや彼女の仲間達と友達になる。
 しかしアントニーは、平民なのに自分よりも優れているカトリーヌを逆恨みし、彼女の仲間達に対して酷い仕打ちをする。
 そして、元々気に食わなかったわたしを見せしめとして、罠にはめた。
 まだ学生で力の無い仲間達は、わたしを助けようと頑張ってくれるも、既に時遅し。
 15歳になった時、わたしと家族は反逆者の汚名を着せられ、領地に王国の軍勢が襲い掛かった。

 お父様とうさまは、不利な戦いを随分としのぎ、戦いは一ヶ月も続いた。
 病弱だった弟ラマンは、過酷な状況の中に熱病にかかって亡くなる。
 お母様かあさまは、そんな苦しい状況でも戦う兵士や領民達を励ますも、最早陥落は時間の問題。
 最後は、わたしを北のドワーフ王国へと逃がすために、アントニーの軍勢にお母様とお父様共に立ち向かい、無残に殺された。

「こんなの、絶対に許せないの!」

 わたしは、怒りがこみ上げるのをじっと我慢する。
 わたしの声で、横で眠るカティが小さく身じろぎをする。

 ただ1人、生きて逃げ延びたわたしは、ドワーフ王国から更に北の島にある魔族帝国へと逃げ、そこで復讐を誓う。
 数年後帝国で力を得たわたしは、魔族帝国・ドワーフ王国連合軍の派遣軍将軍になり、科学と魔法を合わせた強力な軍隊で王国を蹂躙した。
 王国自体に恨みはあったが、一番憎いのはアントニーに代表される無能な貴族どもや王族。

「アントニーめ、どうしてやろうかしら!」

 わたしは、命乞いをする貴族達を蹴散らし殺し、とうとう王都へと迫った。
 そこに立ちはだかったのが、王国内で市民革命を目指していたカトリーヌ。
 王都で戦う事は市民を巻き込むから、わたしに王都で戦わないでと提案してきた。
 王と愚かな貴族以外には大した恨みは無いわたしは快諾、条件として王の身柄を差し出す事を要求した。

「そこでまた邪魔をするのが、アントニーなのよね」

 そんな条件を呑めない王族やアントニー達バカ貴族は、カトリーヌ達も国家反逆罪に認定、敵と判断した。
 3つどもえの戦いが発生し、結局王都は戦場になる。

 わたしは、不毛な戦いを嫌ってカトリーヌを味方にしたいと思い、一時休戦と共同戦線を提案した。
 元々わたしを良く知るカトリーヌは条件を承諾し、その後わたしは彼女の仲間達と一緒に王族・貴族打破の力になる。
 カトリーヌの仲間達にはドワーフ族や魔族の王族に近い娘達が居たのも話が早かった理由だろう。

「これで『フラグ』が上手くいけば、わたしはカトリーヌの仲間としてエンドだけど、何か足らなければわたしは、アントニーの攻撃からカトリーヌを庇って死ぬのよ。どんだけ、アタシに恨みがあるのよ、アントニーはぁ!」

 これから起こる悲劇。
 それを、わたしはナンとしても阻止したい。

「わたしだけが助かるのは絶対イヤ! 皆で幸せにならなきゃ意味無いもん! なら、今からアントニーを暗殺するのが一番早いかしら?」

 わたしの不幸フラグに必ず居るのがアントニー。
 なれば、彼が居なくなればフラグは立たない。

「でも、歴史の修正力っていうか、裏シナリオがあったら困るかも。今は敵がアントニーって分かっているから対策も取れるけど、別の人が、というか王族が最初から敵になったら勝てないものね」

 わたしは、「アタシ」が知りうる事から一生懸命考える。

「最大の分岐点は、15歳の反逆罪のでっち上げよね。それを阻止、もしくは逆手に取れれば、皆助かるかもしれないの」

 アントニーの行動を先読みし、彼の行動を全て塞ぐ。
 そして彼と王族の接触を遮断する。

「王族さえアントニーの味方にならなきゃ、まだ勝算はあるものね。アントニー達だけなら軍勢はゴーレム達だけになるし」

 アントニーの一族は、アイアンゴーレムを使った戦闘が得意で、それにより身を立てている。
 遠い祖先が王家に連なる魔力豊富な家系の公爵家。
 彼らの軍勢は、王国最強とも言われている。

「人間相手はあんまり気乗りしないけど、ゴーレム相手なら手加減いらないし、アントニーなら気兼ねなく吹っ飛ばせるものね」

 わたしは、「アタシ」のミリタリー記憶を見る。
 そこには大砲やミサイル、核兵器などのおそるべし兵器の知識がある。

「今は無理かもだけど、5年の間に知識と努力でアームストロング砲や野戦榴弾砲に機関銃くらいは作れるよね。そうしたら、ゴーレムなんて敵じゃないもん!」

 火薬を作るには硝酸が必要、そして硝酸は肥料にもなる。
 硝酸、つまり窒素は、農業の三大栄養素のひとつ。

「硝酸作って肥料にしつつ火薬作って、冶金やきん頑張って鋼鉄作って、大砲や銃火器作って、例え王国全体を敵に回しても勝てる軍事国家を作るんだ!」

 まだまだ18世紀の軍隊レベルな王国、そこに20世紀や21世紀の科学力からなる近代軍隊をぶつけたら、負けるはずも無い。

「元々ゲームでも、わたしは大砲作って王国へ喧嘩を売るんだもん。それが早くなるのと、領民共々守れて農地も肥えて、王政打破を早くしたって何の問題も無いじゃん!」

 ゲームでは、わたしは爆裂令嬢ボンバーガールの異名で呼ばれる。

「そうなの! 今日からわたしは爆裂令嬢になって、運命を吹っ飛ばしてやるんだから!」

 わたしは、大きく宣言した。
 その声を聞いて、カティは「え!」っと目を覚ました。
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