示現流見届け人

工藤かずや

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4 見届け役命令

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三日後の午後、お目付から使者がきた。
今夜五つ(午後七時)に会いたいと言う。
場所は城中ではなく、お目付の役宅だ。

来た来た!ついに来た!
織部は舞い上がった。
目付津田勘解由の役宅は、
大手門前の大名小路にあった

少し早めに六つ(六時過ぎ)には
津田の屋敷へ着いていた。
門番が潜り戸を開けてくれた。

若侍に奥の部屋へ通された。
五つ丁度に津田は現れた。
織部は平服した。

脇息にもたれて津田はじっと織部を見た。
「小普請は退屈か」
「い、いえ左様なことは」

「次の上意討ちの討手は、すでに決まっておる」
織部はがっくり来た。
遅かったか!

「しかし、討手を志願して来るとは珍しい男よ」
「は、はい」
まさかお小夜のことは言えない。

「やる気があるなら見届け人をやるか」
見届け人!聞いたことがない役だ。
「申して置くが、討手以上に厳しいぞ」

織部は思わず顔を上げた。
津田はにこやかだが、目は鋭かった。
「ぜ、ぜひその見届け人とやらのお役目を!」

「見届け人とは、尋常に上意がなされたか
確かめる役!討手が返り討ちにあったなら
代わって相手を仕留める」

なるほど、こりゃ大変だ!
「討手が情にほだされ、相手を逃しでもしたら、
即座に両者ともにその場で討ち取れ」

二人とも斬るのかよ!
「どうだ、できるか!これまで何人を切って来た」
一人も斬ってない!なんて言うない。

「す、数人ほど」
「うむ、見届け人は討手が斬り損なって
相手が逃げたら、たとえ隣国といえども
追って仕留める!できるか!」

「逃げられた討手はどうなりますか」
「即刻、切腹!」
ちょっとひるんだが、織部は頭を下げた。

「その見届け人のお役目、何卒この一文字織部めに!」
「よう申した!真木兵馬之介御上意見届け人を、
一文字織部に申しつける」

織部は平服した。
やった!ついに上意討ち見届け人を取った!
「詳しいやり方は、そちの父左衛門にきくが良い」

えッ!お、親父!!
「左衛門は若い頃、優秀な見届け役をしておった。
血は争えぬよのう」

津田は笑いながら部屋を出て行く。
ま、待ってくれ!親父が見届け人を!
これまで聞いたこともない!

家へ戻って、父にそれを告げるなり
「大バカ者ォ!!」と怒鳴られた。
なんのこっちゃ!

やっと取った役だってのに!
「お前は見届け人がどう言うものか、
分かって受けたのか!」

「それはお目付から聞いたけど!」
「わしを上意討ちで討ち取れ!
と命じられたらできるか!!」

詰まった。
それは考えても見なかった。
「弟が叔父貴が、従兄弟が上意討ちにあったら
貴様はお役目だと行って、斬れるのかァ!」

ちょ、ちょっと待ってくれ!
それはないだろ!


「貴様、討手人、見届け人の、
ど本当の意味を知っとんのかァ!」
「どんなものって・・・ご上意の相手を」

「討手と見届け人を、
ご城内の藩士たちから、蛇蝎の如く嫌われる!
なんせ仲間を斬るんだからな!」

その蛇蝎を、親父殿もやってたんじゃないのか!
「討手と見届け人は一度やったら、
絶対にやめさせてはもらえぬ!次のなり手がないからじゃ」

俺はそれでも構わん!側にお小夜がいてくれるなら。
「人斬り役には、嫁の来ても絶対ない!」
お小夜は来てくれる!

「わしは討手をやめるのに十年かかった。
父を斬られ、息子を斬られ、
今でもわしを恨んでいる者が大勢おる!」

おいおい、おい!そんなヤバい役なんかよ!
左衛門、懐から数珠をだす。
「これまでお役目で斬った者たちを
朝に夕に詫びておる!」

「俺、二日後には見届け役やらなきゃならん」
「やれ!」
手にした数珠を織部の前に置く。

「そして、これを肌身話さず持ち歩き、
斬った相手を必ず供養してやれ!」
織部は数珠を見つめ、
えらいことになったと思った。

こんなはずじゃなかった!
人を斬るって、大勢のやつから恨まれるこことなんかよ!
右門はそんなこと言ってなかったぞ!

でもお小夜さんだけは、きっと俺について来てくれる!
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