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謀略戦

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翌日の朝、俺は近藤さんの部屋へ呼ばれた。
行くとすでに土方さんがいた。
三人で何を話すのか。

まず近藤さんが言った。
「斎藤から連絡があった。伊東が俺を斬り、組を乗っ取る計画が進んでいると言う」

俺は思わずつぶやいた。
「まさか・・・」
「総司、有り得んと言うのか」

土方さんが俺の言葉を咎めた。
「だってそうでしょう。新選組は隊士三百人を越え、近藤さんや土方さん大幹部は幕府直参だ。御霊衛士は人数わずかに十五人ですよ」

「新選組相手に何が出来るか、と言いたいのか」
土方さんが鋭く俺を凝視した。
でも、ここまで来ると常識の問題だろう。

仮に近藤さんや土方さんを謀略戦で斬ったとしても、十数人いる俺たち副長助勤はどうする!
俺にしても、永倉、原田、松原、井上、山崎たちにしても、一人で御霊衛士を相手に十分戦える強者ばかりだ。

そのことは、伊東が一番よく知っているはずだ。
御霊衛士の背後に薩摩がいるらしいのは分かるが、今は表立っては出て来れない。

薩摩には御霊衛士のために、新選組、会津、幕府と一戦交えるつもりはない。
「お前の考えは分かった。分かった上で敢えて言おう」
敵は長州、薩摩、土佐だけで十分だ。

御霊衛士まで敵に回すことはないだろう。
「俺たちはいかなる機会があろうと、御霊衛士を乗っ取るつもりはない。その時が来たら皆殺しにする!それが血肉を分けた味方が、敵となった時の鉄則だ!」

近藤さんは腕組みしてうなづいた。
土方さんの言いそうなことだった。
「俺はやめた方がいいと思いますよ。遺恨が遺恨を生み、決していい結果にはならない」

「三日後、伊東が近藤さんの別宅へ来ることになっている。その時に殺る!まず伊東をやり、その後に残党を誘き出して皆殺しにする」
土方さんが俺に指示した、銭取橋で観柳斎を殺った時の謀略戦だ。

おぞましかった。
血塗られた謀略戦に、また手を貸したくはなかった。
ミケとの約束もある。

「総司、お前は服部と篠原を斬れ」
「体調次第です。先日、銭取橋で血を吐いて、まだ回復していない」
近藤さんが口を開いた。

「無理をするな。お前に今欠けられては困る!」
そうだ、俺なんかいなくたって、土方さんの作戦は出来る。
俺をにらんで、土方さんが言った。

「三日後の御霊衛士始末は、新選組の総力戦になる!戦わなくてもよい。屯所で待機していろ」
無言で俺は部屋を出た。

その夜、俺は屯所にはいないつもりだ。
空き家になっている前川邸で、多分ミケを抱いて寝ているだろう。
土方さんがいかに怒ろうと、今度こそかつての仲間相手に俺は刀を手にしない!

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