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亀山社中

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しばらく竜馬からの連絡が途絶えた。
土方たちは、必死でその行き先を追っていた。
意外な情報を監察方がつかんで来た。

竜馬が亀山社中なるものを設立し、その京都事務所が酢問屋の老舗酢屋に置かれたと言う。
亀山社中とはどんなものなのか、新選組で知る者は誰もいなかった。

八月になり、さらに驚愕すべき情報が飛び込んで来た。
倒幕急先鋒の長州藩は、外国との武器弾薬の取引を幕府から厳しく禁止されていた。

その長州が、薩摩を通じて最新武器七千三百丁を調達したというのだ。
竜馬の亀山社中が仲介して、犬猿の仲の長州薩摩間の取引を成立させたのだ。

最新の武器弾薬が欲しい長州と兵糧が不足している薩摩、その両者を満足させることでミニエー銃四千三百丁、ゲベール銃三千丁と言う大量の武器をグラバー商会から買い付けることに成功したのだ。

当然、亀山社中が手にする利益は、膨大なものになる。
敵ながらあっぱれ!と言う外はない。
さすがの土方も、この離れ業には絶句した。

竜馬、恐るべし!
そのために、竜馬は京から姿を消していたのだ。
長州は会津・幕府を圧倒する量と質の最新兵器を手にした。

しかも薩長同盟を成立させる、お膳立てまでして!
会津・幕府は戦わずして、竜馬に完敗したのだ。
俺はその辣腕、行動力に舌を巻いた。

こうなったら戦わず、どうやって幕府の立場を維持するかが最大の問題となるはずだった。
正面から激突したら、戦いの趨勢は目に見えている。

だが、新選組はそうはしなかった。
年が明けた一月始め、薩摩藩士・小松帯刀の京屋敷で長州・桂小五郎と薩摩・西郷隆盛の薩長同盟へ向けての会談が持たれることが分かるや、土方は隊の総力を挙げて屋敷の襲撃を命じたのだ。

どう見ても暴挙だった。
薩摩屋敷を攻めれば、一気に薩摩と会津新選組の戦闘に発展する。
俺は土方さんに、思いとどまるよう説得した。

薩摩、長州が手を結べば、天下の形勢は雪崩を打って薩長へ傾く。
新選組がどうあがこうと、すべては手遅れなのだ。
竜馬ひとりで天下が動いたのだ。

俺には天下の情勢など、どうでもよかった。
頭にあるのは、どうしたら新選組の邪魔なく彼に会えるか、だけだった。

それには、竜馬死ぬな!
死にさえしなければ、いつか会える!
俺もそれまではくたばらない!

今度会つたら、そう約束するつもりだった!
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