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龍馬発見

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朝、土方さんから副長助勤全員に召集がかかった。
部屋の前の廊下へ行くと、助勤全員が集まっていた。
土方さんが言った。

「早朝、監察方から、竜馬の居場所が分かったとの報告があった。各番隊総出動で、竜馬捕獲に向かう。手に余ったら斬れ!」
俺は震えあがった。

監察方と浪士取調べ役が必死で探ったのだろう。
俺は新選組隊士にもあるまじく、竜馬救出の方法を咄嗟に頭に浮かべた。

いや、それは無理だ!
すでに竜馬の部屋には監視が張り付き、連絡の方法はない。
もう一度会いたかった。

猫のことでもいい、親しく会話を交わしたかった。
しかし、手遅れだ。
彼に動きがあれば、張り付いている浪士取調べ役が即座に飛び込む。

土方さんが言う捕縛の方法や心得など、何も耳に入らなかった。
ただ、彼に会いたかった!
恋しい感情さえあった!

どうしたらいい!何か方法があるはずだ!
ある!!
それを竜馬自身が教えてくれていた。

ミケだ!ミケを使うんだ!
俺はそっとその場を離れようとした。
すぐに土方さんの声が飛んできた。

「総司、どこへ行く!」
「厠です。すぐに戻ります」
後も見ずに俺は母屋を出た。

中庭にミケはいなかった。
離れにも土蔵にも姿がない。
竜馬のところへ行っているのか。

だったら万事窮す、だ!
竜馬の居場所は、ミケと監察方と浪士取調べ役しか知らない。
俺自身が教えに走ることなど不可能なのだ。

焦った!
必死でミケを探した。
居た!!

たった今戻って来たらしく、土塀の上をのんびりと歩いて来る。
口を鳴らして彼女を呼んだ。
ミケは俺の姿を見ると肩に乗って来た。

喉をゴロゴロ鳴らしている。
俺は小声で耳元へ言った。
「すぐに竜馬の所へ行け!逃げろと言うんだ!」

こんなことが猫に分かるはずがない。
だが、今はこれしか方法がなかった。
俺は必死でささやいた。

「分かるか!竜馬に伝えるんだ、すぐに逃げろ!と」
ミケを土塀の上に戻した。
彼女は横たわって体をなめ始めた。

ため息をついて、俺は母屋へ引き返した。
すでに土方さんの話は終わり、助勤たちは配下を集めて出動準備にかかっていた。

俺も一番隊を集めるべく伍長の杉山を探すと、背後から土方さんが言った。
「お前は行くな!一番隊の指揮は、伍長に任せろ!」
俺の動きで、彼は何かを感じたのか!

土塀を見るとミケの姿はなかった。
半刻後、続々と見廻り組が屯所を出て行った。
俺はミケを信じ、ただ運を天に任せるしかなかった。


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