26 / 56
龍馬発見
しおりを挟む
朝、土方さんから副長助勤全員に召集がかかった。
部屋の前の廊下へ行くと、助勤全員が集まっていた。
土方さんが言った。
「早朝、監察方から、竜馬の居場所が分かったとの報告があった。各番隊総出動で、竜馬捕獲に向かう。手に余ったら斬れ!」
俺は震えあがった。
監察方と浪士取調べ役が必死で探ったのだろう。
俺は新選組隊士にもあるまじく、竜馬救出の方法を咄嗟に頭に浮かべた。
いや、それは無理だ!
すでに竜馬の部屋には監視が張り付き、連絡の方法はない。
もう一度会いたかった。
猫のことでもいい、親しく会話を交わしたかった。
しかし、手遅れだ。
彼に動きがあれば、張り付いている浪士取調べ役が即座に飛び込む。
土方さんが言う捕縛の方法や心得など、何も耳に入らなかった。
ただ、彼に会いたかった!
恋しい感情さえあった!
どうしたらいい!何か方法があるはずだ!
ある!!
それを竜馬自身が教えてくれていた。
ミケだ!ミケを使うんだ!
俺はそっとその場を離れようとした。
すぐに土方さんの声が飛んできた。
「総司、どこへ行く!」
「厠です。すぐに戻ります」
後も見ずに俺は母屋を出た。
中庭にミケはいなかった。
離れにも土蔵にも姿がない。
竜馬のところへ行っているのか。
だったら万事窮す、だ!
竜馬の居場所は、ミケと監察方と浪士取調べ役しか知らない。
俺自身が教えに走ることなど不可能なのだ。
焦った!
必死でミケを探した。
居た!!
たった今戻って来たらしく、土塀の上をのんびりと歩いて来る。
口を鳴らして彼女を呼んだ。
ミケは俺の姿を見ると肩に乗って来た。
喉をゴロゴロ鳴らしている。
俺は小声で耳元へ言った。
「すぐに竜馬の所へ行け!逃げろと言うんだ!」
こんなことが猫に分かるはずがない。
だが、今はこれしか方法がなかった。
俺は必死でささやいた。
「分かるか!竜馬に伝えるんだ、すぐに逃げろ!と」
ミケを土塀の上に戻した。
彼女は横たわって体をなめ始めた。
ため息をついて、俺は母屋へ引き返した。
すでに土方さんの話は終わり、助勤たちは配下を集めて出動準備にかかっていた。
俺も一番隊を集めるべく伍長の杉山を探すと、背後から土方さんが言った。
「お前は行くな!一番隊の指揮は、伍長に任せろ!」
俺の動きで、彼は何かを感じたのか!
土塀を見るとミケの姿はなかった。
半刻後、続々と見廻り組が屯所を出て行った。
俺はミケを信じ、ただ運を天に任せるしかなかった。
部屋の前の廊下へ行くと、助勤全員が集まっていた。
土方さんが言った。
「早朝、監察方から、竜馬の居場所が分かったとの報告があった。各番隊総出動で、竜馬捕獲に向かう。手に余ったら斬れ!」
俺は震えあがった。
監察方と浪士取調べ役が必死で探ったのだろう。
俺は新選組隊士にもあるまじく、竜馬救出の方法を咄嗟に頭に浮かべた。
いや、それは無理だ!
すでに竜馬の部屋には監視が張り付き、連絡の方法はない。
もう一度会いたかった。
猫のことでもいい、親しく会話を交わしたかった。
しかし、手遅れだ。
彼に動きがあれば、張り付いている浪士取調べ役が即座に飛び込む。
土方さんが言う捕縛の方法や心得など、何も耳に入らなかった。
ただ、彼に会いたかった!
恋しい感情さえあった!
どうしたらいい!何か方法があるはずだ!
ある!!
それを竜馬自身が教えてくれていた。
ミケだ!ミケを使うんだ!
俺はそっとその場を離れようとした。
すぐに土方さんの声が飛んできた。
「総司、どこへ行く!」
「厠です。すぐに戻ります」
後も見ずに俺は母屋を出た。
中庭にミケはいなかった。
離れにも土蔵にも姿がない。
竜馬のところへ行っているのか。
だったら万事窮す、だ!
竜馬の居場所は、ミケと監察方と浪士取調べ役しか知らない。
俺自身が教えに走ることなど不可能なのだ。
焦った!
必死でミケを探した。
居た!!
たった今戻って来たらしく、土塀の上をのんびりと歩いて来る。
口を鳴らして彼女を呼んだ。
ミケは俺の姿を見ると肩に乗って来た。
喉をゴロゴロ鳴らしている。
俺は小声で耳元へ言った。
「すぐに竜馬の所へ行け!逃げろと言うんだ!」
こんなことが猫に分かるはずがない。
だが、今はこれしか方法がなかった。
俺は必死でささやいた。
「分かるか!竜馬に伝えるんだ、すぐに逃げろ!と」
ミケを土塀の上に戻した。
彼女は横たわって体をなめ始めた。
ため息をついて、俺は母屋へ引き返した。
すでに土方さんの話は終わり、助勤たちは配下を集めて出動準備にかかっていた。
俺も一番隊を集めるべく伍長の杉山を探すと、背後から土方さんが言った。
「お前は行くな!一番隊の指揮は、伍長に任せろ!」
俺の動きで、彼は何かを感じたのか!
土塀を見るとミケの姿はなかった。
半刻後、続々と見廻り組が屯所を出て行った。
俺はミケを信じ、ただ運を天に任せるしかなかった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
近衛文麿奇譚
高鉢 健太
歴史・時代
日本史上最悪の宰相といわれる近衛文麿。
日本憲政史上ただ一人、関白という令外官によって大権を手にした異色の人物にはミステリアスな話が多い。
彼は果たして未来からの転生者であったのだろうか?
※なろうにも掲載
【完結】風天の虎 ――車丹波、北の関ヶ原
糸冬
歴史・時代
車丹波守斯忠。「猛虎」の諱で知られる戦国武将である。
慶長五年(一六〇〇年)二月、徳川家康が上杉征伐に向けて策動する中、斯忠は反徳川派の急先鋒として、主君・佐竹義宣から追放の憂き目に遭う。
しかし一念発起した斯忠は、異母弟にして養子の車善七郎と共に数百の手勢を集めて会津に乗り込み、上杉家の筆頭家老・直江兼続が指揮する「組外衆」に加わり働くことになる。
目指すは徳川家康の首級ただ一つ。
しかし、その思いとは裏腹に、最初に与えられた役目は神指城の普請場での土運びであった……。
その名と生き様から、「国民的映画の主人公のモデル」とも噂される男が身を投じた、「もう一つの関ヶ原」の物語。
【架空戦記】炎立つ真珠湾
糸冬
歴史・時代
一九四一年十二月八日。
日本海軍による真珠湾攻撃は成功裡に終わった。
さらなる戦果を求めて第二次攻撃を求める声に対し、南雲忠一司令は、歴史を覆す決断を下す。
「吉と出れば天啓、凶と出れば悪魔のささやき」と内心で呟きつつ……。
誠眼の彼女 -Seigan no Kanojo- @当分、毎日投稿
南雲 燦
歴史・時代
【奇怪な少年が居た。その者新選組十一番隊隊長、盲目の女剣士、無類の戦好き】
盲目の小さな剣士が居た。
白妙の布で目元を隠し、藍の髪と深い碧眼を持つ奇怪なその剣士の正体は、女であった。
辻斬りの下手人として捕縛された彼女は、その身を新選組に置くこととなる。
盲目ながら、獣のように戦う腕利きの二刀流剣士であった彼女の手綱を握ったのは、新選組"鬼の副長"、土方歳三。
因縁の相手長州・土佐との戦い、失明の過去、ふざけた日常、恋の行方を辿る、彼等が生き抜いた軌跡の物語。
ーーーーー
サブエピソードはこちら
『誠眼の彼女 挿話録』
https://kakuyomu.jp/works/16816927862501120284
ーーーーー
史実に基づきつつ、普段歴史ものを読まない方にも読んでいただけるよう書いております☺︎2022.5.16 執筆開始@アルファポリス
※歴史・史実と異なるところがあります。
※この物語はフィクションです。
※歴史の知識は文章内に記載してある為不要です。
※起首までは過去作の改訂版です(執筆開始 2016.11.25 『起首』まで)
⚠︎一切の引用転載転記を禁じます
お誘いを受けたきっかけで、このサイトでも公開してみることにしました(*´꒳`*)
歴史小説大賞にエントリーしてみます。
織田信長IF… 天下統一再び!!
華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。
この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。
主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。
※この物語はフィクションです。
柳鼓の塩小町 江戸深川のしょうけら退治
月芝
歴史・時代
花のお江戸は本所深川、その隅っこにある柳鼓長屋。
なんでも奥にある柳を蹴飛ばせばポンっと鳴くらしい。
そんな長屋の差配の孫娘お七。
なんの因果か、お七は産まれながらに怪異の類にめっぽう強かった。
徳を積んだお坊さまや、修験者らが加持祈祷をして追い払うようなモノどもを相手にし、
「えいや」と塩を投げるだけで悪霊退散。
ゆえについたあだ名が柳鼓の塩小町。
ひと癖もふた癖もある長屋の住人たちと塩小町が織りなす、ちょっと不思議で愉快なお江戸奇譚。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる