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伊東甲子太郎
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江戸から近藤局長が戻って来た。
伊東甲子太郎と言う北辰一刀流の剣客と、その門人、友人など六名を伴っている。
伊東は江戸深川の北辰一刀流の道場主で、思想的にも深いものをもっていると局長は言っていた。
しかし、気になることがあった。
新選組は局長にしても土方さんにしても、立場上攘夷佐幕派である。
すなわち徹底して幕府を擁護する立場にある。
幕府と会津から給金をもらって働いているのだから、当然と言えば当然だ。
だが、伊東一派の思想は攘夷討幕だ。
以前話のはずみで藤堂平助が漏らしたのだが、局長は攘夷でしか一致点を見ていないがこれは大きな問題である。
俺はそれを聞いて、反射的に危険だと思った。
藤堂一人なら何の動きもないが、伊東と言う大物が六名もの倒幕思想の者たちと組へ入ってくれば、やがて起きる事態は容易に想像できる。
俺はそれとなく、伊東の動きを気にしていた。
伊東の剣の流派の北辰一刀流は、藤堂と同門である。
江戸へ先行して行っていた藤堂から、局長は伊東を紹介されたらしい。
天然理心流でも言えるが、どうしても同門同士が集まってしまう。
人間、人それぞれに性格や生き方の違いがあるのだから、剣の流派が同じだからと言って、ウマが合うなどと言うことはないはずなのだが、どういうわけか群れつどう。
だが、もっと大きな問題が俺と伊東の間に起きた。
初対面の時、伊東はなんと肩にミケを乗せて来たのだ。
これには俺は驚愕した!
俺以外にミケが人の肩になど乗ることなど、あり得ないからだ。
伊東がよほどの猫好きであることを、ミケは察知したのだ。
そして、彼が人を斬ったことがないことの証明でもあった。
ミケは人を斬った人間には、絶対近寄らない。
血の匂いに敏感なのだ。
俺は数えきれないくらい人を斬っている。
彼の肩で安心して眠るミケを見て、俺は始めて嫉妬という感情を経験した。
ミケに近寄る雄猫を見ても何も感じない俺が、彼女がなつく人間に対しては、ぶった斬ってやりたいほど過激に嫉妬する。
嫉妬心自体が初めての経験だった。
事情を知らない伊東は、ミケを片時も離さず溺愛する。
辛かった!辛くて辛くて、俺は伊東から離れたかった。
伊東が新選組へ入ったことを、この時ほど俺は呪ったことはない。
これは人間に恋する感情と同じだ。
新しい指令が土方さんから出た。
伊東が新たに見廻り組二番隊を受け持つことになり、俺の見回りに何日か同行させろ、と言うのだ。
俺は引き受けたが、ミケが伊東について来ないことを心の底から願った。
伊東につきまとうミケを見ると、俺は嫉妬で狂いそうになる。
三日後の一番隊見回りに、伊東とその配下が同行することになった。
むろん、猫を間に死ぬほどの焼きもちを焼く俺を、伊東は知らない。
これは本当に、俺に取って冗談や笑い話ではないのだ!
前世でミケは、時男と言う俺の最愛の人だったのだから!
奇妙な三角関係に、俺は悶え苦しんだ。
ミケの心を再び俺のものに出来るなら、いつ伊東と白刃を交えてもいいとさえ思った!
伊東甲子太郎と言う北辰一刀流の剣客と、その門人、友人など六名を伴っている。
伊東は江戸深川の北辰一刀流の道場主で、思想的にも深いものをもっていると局長は言っていた。
しかし、気になることがあった。
新選組は局長にしても土方さんにしても、立場上攘夷佐幕派である。
すなわち徹底して幕府を擁護する立場にある。
幕府と会津から給金をもらって働いているのだから、当然と言えば当然だ。
だが、伊東一派の思想は攘夷討幕だ。
以前話のはずみで藤堂平助が漏らしたのだが、局長は攘夷でしか一致点を見ていないがこれは大きな問題である。
俺はそれを聞いて、反射的に危険だと思った。
藤堂一人なら何の動きもないが、伊東と言う大物が六名もの倒幕思想の者たちと組へ入ってくれば、やがて起きる事態は容易に想像できる。
俺はそれとなく、伊東の動きを気にしていた。
伊東の剣の流派の北辰一刀流は、藤堂と同門である。
江戸へ先行して行っていた藤堂から、局長は伊東を紹介されたらしい。
天然理心流でも言えるが、どうしても同門同士が集まってしまう。
人間、人それぞれに性格や生き方の違いがあるのだから、剣の流派が同じだからと言って、ウマが合うなどと言うことはないはずなのだが、どういうわけか群れつどう。
だが、もっと大きな問題が俺と伊東の間に起きた。
初対面の時、伊東はなんと肩にミケを乗せて来たのだ。
これには俺は驚愕した!
俺以外にミケが人の肩になど乗ることなど、あり得ないからだ。
伊東がよほどの猫好きであることを、ミケは察知したのだ。
そして、彼が人を斬ったことがないことの証明でもあった。
ミケは人を斬った人間には、絶対近寄らない。
血の匂いに敏感なのだ。
俺は数えきれないくらい人を斬っている。
彼の肩で安心して眠るミケを見て、俺は始めて嫉妬という感情を経験した。
ミケに近寄る雄猫を見ても何も感じない俺が、彼女がなつく人間に対しては、ぶった斬ってやりたいほど過激に嫉妬する。
嫉妬心自体が初めての経験だった。
事情を知らない伊東は、ミケを片時も離さず溺愛する。
辛かった!辛くて辛くて、俺は伊東から離れたかった。
伊東が新選組へ入ったことを、この時ほど俺は呪ったことはない。
これは人間に恋する感情と同じだ。
新しい指令が土方さんから出た。
伊東が新たに見廻り組二番隊を受け持つことになり、俺の見回りに何日か同行させろ、と言うのだ。
俺は引き受けたが、ミケが伊東について来ないことを心の底から願った。
伊東につきまとうミケを見ると、俺は嫉妬で狂いそうになる。
三日後の一番隊見回りに、伊東とその配下が同行することになった。
むろん、猫を間に死ぬほどの焼きもちを焼く俺を、伊東は知らない。
これは本当に、俺に取って冗談や笑い話ではないのだ!
前世でミケは、時男と言う俺の最愛の人だったのだから!
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