13 / 47
・
しおりを挟む(…・熱いっ)
散々付き合わされた深夜、あまりの暑苦しさに目を覚ます。チラッと見ると、いつものように俺を後ろから抱きしめてすやすや寝気を立てている菊池の姿。
体が痛い、何度も噛まれた背中や腕が痛い。
そんな俺の悲鳴や嘆きを聞いても、俺が苦しんでいることを理解しちゃいない。
まるで子供がお気に入りのおもちゃを噛む行為と同じだ。
好きも愛も、与えなければ返ってくるものじゃない。
それがその年になっても分からないのか
頭上の置き時計を見ると、23時50分。
『今日、誕生日なんだよ』
なら、なんで実家に帰らないんだよ。
「俺じゃなくても、いいくせに…」
祝ってくれそうな友達も、いくらでもいるだろ?
ケーキなんか買ってきてご機嫌取りかと思いきや叩かれ泣かされ、こっちは散々だ。
気にせず目を瞑り眠ろうとした時、
「…・…、ない、で…」
「………っ、!?」
耳元で、か細く弱弱しい声が聞こえた。
たぶん『いかないで…』と。
消えそうで悲痛な声で訴えかけている。
思わず目を見開いて身をよじろうとしたれど、実は起きていてまたロクな目に遭わないとも限らない。
そう考えると自然と動きは止まった。
「…、い…っ、で……」
「………」
やはり聞き間違いではないらしい。
ぐぐぐと縋りつく力が強くなる腕と、震える声。固く閉じた目尻からは今にも涙が出てきそうだ。
最低な暴君が、
さびしい、と…泣いている.
(くそ、なんでこんなこと…考えなきゃいけないんだよっ)
被害者は俺だ。
こんな最低なヤツなのに…俺よりも年上なのに…。
「………お誕生日、おめでと…」
「…・…っ…」
ぼぞぼそとまだ何かを呟いている。
その声は歩には理解できないほど小さい。
「…………ケーキ、美味しかったね」
「…・…うん…」
菊池は満足そうに頷いたけど…
なんだろう、俺の方が泣きそうだ。
_______________
(お誕生日おめでとう、雅之)
そうやって俺に笑いかける君がいる.
そんな夢を見た。
0
あなたにおすすめの小説
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
年下幼馴染アルファの執着〜なかったことにはさせない〜
ひなた翠
BL
一年ぶりの再会。
成長した年下αは、もう"子ども"じゃなかった――。
「海ちゃんから距離を置きたかったのに――」
23歳のΩ・遥は、幼馴染のα・海斗への片思いを諦めるため、一人暮らしを始めた。
モテる海斗が自分なんかを選ぶはずがない。
そう思って逃げ出したのに、ある日突然、18歳になった海斗が「大学のオープンキャンパスに行くから泊めて」と転がり込んできて――。
「俺はずっと好きだったし、離れる気ないけど」
「十八歳になるまで我慢してた」
「なんのためにここから通える大学を探してると思ってるの?」
年下αの、計画的で一途な執着に、逃げ場をなくしていく遥。
夏休み限定の同居は、甘い溺愛の日々――。
年下αの執着は、想像以上に深くて、甘くて、重い。
これは、"なかったこと"にはできない恋だった――。
ビジネス婚は甘い、甘い、甘い!
ユーリ
BL
幼馴染のモデル兼俳優にビジネス婚を申し込まれた湊は承諾するけれど、結婚生活は思ったより甘くて…しかもなぜか同僚にも迫られて!?
「お前はいい加減俺に興味を持て」イケメン芸能人×ただの一般人「だって興味ないもん」ーー自分の旦那に全く興味のない湊に嫁としての自覚は芽生えるか??
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる