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「はぁ~~~…狭い!!」
水がでる不思議とぐにぐにした細長い管はあるけど、泳げないんだわ、ここ。
けれど文句は言えない。
第一、そんな状況じゃないし……
(俺、……これからどうなるんだろ)
この海に来てから嫌な人間に会っては助けてもらって、その繰り返しだ。
あれは、俺がうみの屋敷から捨てられた日だ。
「xxx、xxx?」
振り返れば、俺を捕まえる時にいたうみといた、もう一人の若い男の人間がいた。
うみと同じ服を着ている。
うみより若く見えるし、うみより小柄で背が低い。
「xx、xxx!」
「!?」
俺の顔を見て、あぁやっぱり!みたいな笑顔を浮かべて近寄ってきたけど、それどころじゃない。
また酷い目に遭う前に逃げなきゃ…!
身をひねって深い場所にもぐろうとしたのに、今になって床に打ち付けた箇所が痛みを訴えた。
「――――い、痛、っ」
せっかく、うみが手当てしてくれて尾鰭も綺麗になってたのに……
じわっと涙が浮かんでくる。
「xxxx?」
「や、やだっ!こないで、くんなっ!」
逃げたいのに心が鉛ように、まるで体重に乗っかってて動けない、。
もう、ほっといてくれよ。
動けるようになったら出ていく。自分の故郷を探しに行くから…。
「……xxx?」
ただ男は困り眉のまま、そっと手を差し伸べて俺の返事を待ってくれた。
分からないよ、何を言ってるかなんて…
「うみ、…」
優しさに触れると、寂しさを堪えることができなくなる。
会いたい…
もう二度と会えないなんて、嫌だ……。
「うみ、うみっ…、どこだよぉお…、っ」
「!?」
ただただ、とめどない悲しみの形が目から溢れた。
「うっ、う゛ぅっ~~~~~っっ」
ずっと我慢してきた感情。
泣きたくなんかないのに…一度出たら止まらない、俺はみっともなく声をあげて泣いた。
人魚だって感情があるんだっ
理不尽な目に遭えば悲しくて泣くに決まってんだろ!
あいつら全員嫌いだ、だいっ嫌いだ~~っ!!
「うっ、う"みに会いだい"、あわせでっよ゛、っ馬鹿あ゛ぁああああああ~~~~っっ」
気がつけばあんなに警戒していた人間にしがみついて、子供のように泣きじゃくった。
・ ・ ・
(んんんっ~~~。いま思い出しても、超恥ずかしいなっ)
結果、めっちゃいい人だった。
俺を此処へ運んだあと手当てをしてくれて、よしよしと頭を撫でてくれた。
"大丈夫だよ~"、そんな言葉をたくさん掛けてもらえて嬉しかった。
うみとは正反対でよく笑って、よく話しかけてくれる。
絵をみせては指さしで俺のことを知ろうとしてくれたのが嬉しかったし、何度も話をするうち、彼の名前が”バージル”というのも分かった。
そもそもバージルはうみと一緒にいたけれど、二人は友達なんだろうか?
それなら、俺が此処にいることをうみに教えてくれんのかな…?
(それにしちゃ何日も経ってる…)
もしかしてうみに何かあった?
それとも、うみが俺に会いたくないのかも…。
ううっ、嫌だなぁ……暗い感情に囚われてしまうのは…。
「うみ……」
この部屋は壁に覆われてて外が見えない。
俺が退屈しないよう絵の描かれた板がたくさんあるけど、声がない時間は寂しい。
しょぼんと俯いたとき、ガチャンと
バージルが帰ってきたのか、だけどいつになく扉の外が慌ただしかった。
「xxx!?xxxx!?」
「xxxxx!」
(――――えっ)
バージルの声に混ざって聞こえた声に、ハッと顔を上げた。
「っ、うみ…?」
バタバタとうるさい足音。
怒鳴っているような慌てているような、誰よりも聞いた男は、俺を探しているかのように聞こえた。
「うみ、うみっ、俺はここだよ!!」
ぐっと浅い水槽から身を乗り出し、ぐっと目の前の扉を開けようとした瞬間
――――バンッッ!と乱暴に開かれた扉。
「―――xxx!!」
はぁはぁと息を切らすうみの姿に、一瞬時が止まるのを感じた。
「っ、うみ、っ…っ」
いつの間に涙脆くなってしまったのか…
その姿を見て、ぶわぁっと涙が滲む。
あうあうとさ迷う両手の意味を察したうみは、ぎゅうっと俺を強く抱きしめてくれた。
「――――っっ!」
うみのにおいだ、体温だ…
生きてる、生きてるぅ…!
「う、っ、よかったぁ、よかったぁああああ―――」
「xxxxx……」
うみが来てくれた事より、無事だったことが嬉しくってボロボロと泣いた。
水がでる不思議とぐにぐにした細長い管はあるけど、泳げないんだわ、ここ。
けれど文句は言えない。
第一、そんな状況じゃないし……
(俺、……これからどうなるんだろ)
この海に来てから嫌な人間に会っては助けてもらって、その繰り返しだ。
あれは、俺がうみの屋敷から捨てられた日だ。
「xxx、xxx?」
振り返れば、俺を捕まえる時にいたうみといた、もう一人の若い男の人間がいた。
うみと同じ服を着ている。
うみより若く見えるし、うみより小柄で背が低い。
「xx、xxx!」
「!?」
俺の顔を見て、あぁやっぱり!みたいな笑顔を浮かべて近寄ってきたけど、それどころじゃない。
また酷い目に遭う前に逃げなきゃ…!
身をひねって深い場所にもぐろうとしたのに、今になって床に打ち付けた箇所が痛みを訴えた。
「――――い、痛、っ」
せっかく、うみが手当てしてくれて尾鰭も綺麗になってたのに……
じわっと涙が浮かんでくる。
「xxxx?」
「や、やだっ!こないで、くんなっ!」
逃げたいのに心が鉛ように、まるで体重に乗っかってて動けない、。
もう、ほっといてくれよ。
動けるようになったら出ていく。自分の故郷を探しに行くから…。
「……xxx?」
ただ男は困り眉のまま、そっと手を差し伸べて俺の返事を待ってくれた。
分からないよ、何を言ってるかなんて…
「うみ、…」
優しさに触れると、寂しさを堪えることができなくなる。
会いたい…
もう二度と会えないなんて、嫌だ……。
「うみ、うみっ…、どこだよぉお…、っ」
「!?」
ただただ、とめどない悲しみの形が目から溢れた。
「うっ、う゛ぅっ~~~~~っっ」
ずっと我慢してきた感情。
泣きたくなんかないのに…一度出たら止まらない、俺はみっともなく声をあげて泣いた。
人魚だって感情があるんだっ
理不尽な目に遭えば悲しくて泣くに決まってんだろ!
あいつら全員嫌いだ、だいっ嫌いだ~~っ!!
「うっ、う"みに会いだい"、あわせでっよ゛、っ馬鹿あ゛ぁああああああ~~~~っっ」
気がつけばあんなに警戒していた人間にしがみついて、子供のように泣きじゃくった。
・ ・ ・
(んんんっ~~~。いま思い出しても、超恥ずかしいなっ)
結果、めっちゃいい人だった。
俺を此処へ運んだあと手当てをしてくれて、よしよしと頭を撫でてくれた。
"大丈夫だよ~"、そんな言葉をたくさん掛けてもらえて嬉しかった。
うみとは正反対でよく笑って、よく話しかけてくれる。
絵をみせては指さしで俺のことを知ろうとしてくれたのが嬉しかったし、何度も話をするうち、彼の名前が”バージル”というのも分かった。
そもそもバージルはうみと一緒にいたけれど、二人は友達なんだろうか?
それなら、俺が此処にいることをうみに教えてくれんのかな…?
(それにしちゃ何日も経ってる…)
もしかしてうみに何かあった?
それとも、うみが俺に会いたくないのかも…。
ううっ、嫌だなぁ……暗い感情に囚われてしまうのは…。
「うみ……」
この部屋は壁に覆われてて外が見えない。
俺が退屈しないよう絵の描かれた板がたくさんあるけど、声がない時間は寂しい。
しょぼんと俯いたとき、ガチャンと
バージルが帰ってきたのか、だけどいつになく扉の外が慌ただしかった。
「xxx!?xxxx!?」
「xxxxx!」
(――――えっ)
バージルの声に混ざって聞こえた声に、ハッと顔を上げた。
「っ、うみ…?」
バタバタとうるさい足音。
怒鳴っているような慌てているような、誰よりも聞いた男は、俺を探しているかのように聞こえた。
「うみ、うみっ、俺はここだよ!!」
ぐっと浅い水槽から身を乗り出し、ぐっと目の前の扉を開けようとした瞬間
――――バンッッ!と乱暴に開かれた扉。
「―――xxx!!」
はぁはぁと息を切らすうみの姿に、一瞬時が止まるのを感じた。
「っ、うみ、っ…っ」
いつの間に涙脆くなってしまったのか…
その姿を見て、ぶわぁっと涙が滲む。
あうあうとさ迷う両手の意味を察したうみは、ぎゅうっと俺を強く抱きしめてくれた。
「――――っっ!」
うみのにおいだ、体温だ…
生きてる、生きてるぅ…!
「う、っ、よかったぁ、よかったぁああああ―――」
「xxxxx……」
うみが来てくれた事より、無事だったことが嬉しくってボロボロと泣いた。
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