巻き込まれた脇役は砂糖と塩と共に

田舎

文字の大きさ
上 下
72 / 83
2章 脇役と不死の王龍

最終話なんてそんな… おや?

しおりを挟む



完全にコミュニケーション能力が振出しに戻ってしまった。
けどまぁ……いままでの環境に戻っただけど思えば、さほどの苦労はない。うん、大丈夫だ。


(そ、れ、に!ヘンな空気になってゼアロンさんと気まずくなるよりマシだろ)

ゼアロルドさんが生きてた。
嬉しいって気持ちが昂りすぎて告白なんてしちゃったけど、よくよく考えてみればゼアロンさんが俺を選んでどうなる?

俺=異世界人。言葉が通じない。
顔面偏差値と身長は、平均どころか以下。
魔力ゼロ。さらに加護は塩と砂糖のみで派手さも花もない……。

挙句の果てに、言葉が通じるようになっても――――、やったことは脱獄の幇助罪。


(あははは……俺。と付き合うことに魅力はない、ゼロじゃん!!)


うわぁぁーーっと頭を抱えていたところに、ユリアがバンッと扉を叩いてやってきた。


それは、一番の心配事の件だった。
ユリア曰く、俺の脱獄幇助罪については本来ならば、社会の奉仕活動として生涯に渡る「塩と砂糖」の無償提供を。
そしてオズグさんは終身刑が言い渡されてもおかしくないところだったが、これらはドラゴンゾンビ討伐の功績により無罪放免だ、その日のうちに決まったらしい。

『そもそもママを投獄?そんなことしたら、怖いわね』
『だよね、怖いよね…。俺は妹に会わなきゃだ、罪を償うのは真里亜を無事に帰した後に』
『違うよ、ママ?シュヴァルの王都を更地にしてでも、ユリアは”唐揚げの妖精さん"としてママを助けにいくってこと』

ひぇ、それは確かに怖い!!
物騒なことを言うのはダメって叱ったけど、「本気よ?」と微笑まれると……次からは慎重に行こうと思った。軽率な行動はちゃんと反省しよう。

ただし、オズグさんはマクミランの魔法使いだ。
功績があっても自由にさせるのは厳しいようで、たいした休息の間も無く、再び取り調べのため翌の早朝には王都へと出発した。


『オズさん、たくさんありがとうございました!また会えますよね?』
『xxx、xxx……』

あらまぁ、ユリアに魔力をたっぷり吸い取られたせいだな?いつもの元気も覇気もないけど大丈夫かな?俺特製のスポーツドリンクもってくればよかった。
それでも竜車に乗る手前、見送りをする俺の顔を見たオズさんが、ペコっと頭を下げた気がした。


(―――!うん、きっと大丈夫だな!)



それから二日間、のんびり過ごした。
たくさん寝て休息をとって、砦の竜舎にいるヒューバートに… べしょべしょになるまで舐められて(主に顔と手を)、一緒にボール遊びをした。
それで、イーリエさんだ!


「ひょぇ」

―――――声が出た。
完全に包帯のとれたイーリエさんの顔だ。その笑顔と顔圧があまりにも眩しすぎて、俺は思わず自分の顔面を両手で覆った。

「シオウ」
「わっ!ま、まってください!その笑顔は強ぎますっ!」

美人とカッコいいが混ざった美男子だ、まるで一般人が、アイドルか芸能人と街中で出会ったような反応をしてしまう。
そんな俺のあたふたする様子をユリアからは『浮気?』と揶揄われてしまった。

「う、浮気!?違うよ!」
「違う?シオウ、この顔は嫌いかい?とイーリエは言ってる」
「うぅ、うっ…!」

イーリエさんも満更でもないよ、みたいな反応しないでください!もう!!



西の砦での休息後はもちろん、俺達も王都への騎士舎に帰った。
の、だけど………

ひと悶着はあった、主にゼアロルドさんに。
まぁ散々仲間に心配させたんだ、たぶん俺も皆から叱られると思ってたのに――――何故か胴上げをされた。




「ただいまー!我の家――!」


ユリアは真っ先にベッドの上にダイブした。
移動・移動ばかりでとても疲れた、はやく寝たいと。

久しぶりに川の字になって仲良く三人で眠って、ようやく……なんだか我が家って感じだよ。


そして翌朝。


「…………これは、たまご?」

俺の目の前には――――――鶏の卵サイズの小さな白い、卵があった。




とくとくと脈を打つように温かい。
間違いない、卵だった。
しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。

処理中です...