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2章 脇役と不死の王龍
神様再び
しおりを挟むもう無理、無理だ。
さらにゼアロンさんの、『すまない』の言葉だ。
それってどうゆう意味?
俺の声が理解できていてのノーだったのか、それとも「なんて言ったんだ?」というワンモアだったのか。
え。そもそも、ちゃんと俺の好きって伝わった?likeとloveを間違えてない??
(し、しんどい…… )
しかし二回も同じことを言えるほど俺のメンタルは強くはない。
なのに…………
すーすーっと俺を抱き締めて眠る、ゼアロンさんの寝顔だ。
「ずるいなぁ。ほんと…」
「……」
「………しょうがない」
今回のヒロインはゼアロンさんだもんね?
だって予想外の事態でも、真っ先にピンチに駆け付けたのって俺だもんね??
ゼアロンさんの手を見れば、ちゃんと呪いも消えていた。
今はそれに満足して、俺も目を瞑った。
「こ、ここは…!」
美しい星々と、大きな惑星たち。
シオウが来ていたのは 静かでどこか居心地がいい。星座の間だった。
「ほんとに――――、君は無茶をするね」
「やっぱり、オルべリオンさん!」
二度と会えないと思っていた。
だって、三回目の質問はしていたから。
「ありがとう、シオウ」
「へ?」
思わず駆け寄ろうとしたタイミングで、精霊王が頭を下げてきた。
ありがとう、とは??
「君が対峙した王龍―――…ウナバラは、私の友人だった」
「えっ、それは…っ、すみませんでした…」
「いいや、何も謝る必要はない。私と彼と宗士郎……いずれ聖人と呼ばれて慕われる人間と共に、三人で旅をした」
当時を懐かしむように、オルベリオンさんは語った。
楽しい事ばかりじゃなかった。それでも宗士郎は瘴気をどうにかしようと、旅を選んだのだと。
旅の結末までは教えてくれなかったけど、様子から察するに無事に瘴気は収まったんだと思う。
(けど瘴気は消滅せず、また戻った。なるほど…)
この世界は、瘴気が充満して人々の生活が脅かされる度に聖女を降臨して浄化してもらう。だけど瘴気は完全には消えず、ずっと歴史を繰り返しているのか…。
その後、宗士郎さんは「やるべきことがある」と元の世界に戻り、オルべリオンさんは色々あってを"神"の座についた。
そして王龍ウナバラは、………聖人の消えた森の守護者となった。
「しかし、いつしか人間達はこの事を忘れた」
人々はあの土地で戦いを繰り返し、ウナバラは致命傷を負った。それでも彼は離れず、いつしか瘴気に汚染された。
「オルベリオンさん…」
「かつての友が瘴気に堕ちていくのを、私は見るしかできなかった」
助けてほしい、助けてくれと……。
何度願っただろう。ウナバラ同様に、自身の無力さを呪いそうになったとき、世界に異物が送られてきた。
「あの微精霊はセイレーンだ。ずっと前にウナバラを迎えにきていたというのに…相変わらず鈍感な奴だ。イーリエという人間が死なないよう庇ったあとは、シオウ。君にくっついた」
それは気づかなかったし、もっと通訳してくれてたお礼も言いたかった。
「ええ…でも俺は、墓標の名前を呼んだだけですよ?」
「十分活躍してくれたよ。宗士郎も待っていた、現にあの場にあった墓は消えたんだ」
「……みんな、とても仲が良かったんだね」
ウナバラとオルベリオン。
オルべリオンの意味は分からないけど、空を見たゼアロンさんがよく言ってた。
だから星々の名前なんだろ?
精霊王は満足げに微笑んだ。
「シオウ。あの質問には私よりも先にセイレーンが動いた。だから、君の質問はあと一つ残っている」
「え」
「さぁ、君はなにを知りたい?なんでも与えよう」
本当ですか!?
俺はてっきり、使い果たしたと思ってた。
なのに違う? え……?そうだったの??
「なら!」
もちろん言葉だ、エルナ語をいち早く習得したい。
だって――――――――…… だけど…… オルべリオンの穏やかな表情をみて、躊躇ってしまった。
「…… 俺は宗士郎さんのことは知らないけど…、だけど、とても懐かしい気がするんだ」
「ん?」
甘利は、母さんの旧姓だ。
おじいちゃんの名前は甘利「桃李」だけど、もしかすると宗士郎さんは俺のご先祖様……だったのかもしれない。
だってウナバラの記憶で見た男の人が、少しだけじぃちゃんに似てた気がするから。
「旅の話を聞かせてくれませんか?ちょっとでもいい、時間があれば教えて欲しい。これが俺の三つ目のお願いって言ったら、ダメかな?」
「……わ、私の話?それでいいの?」
「はい!話せる範囲でいいので」
こんなに広い空間で一人だ。
時々俺と話すくらいなら、いいよね?
俺も、言葉が通じる人とストレスなく話がしたい。
「………はは… 正直、ゼアロルドと戦うのは嫌だなぁ」
「ん??」
「だって彼は、ウナバラを倒したところで余裕だったもん。ほんと末恐ろしい騎士だ。化け物と呼ばれても、」
「化け物なんかじゃないっ!ゼアロンさんはいっつも俺や、みんなを心配して守ってくれる。立派な騎士です!」
むむ゛ーっと睨むと、そうだね。と失笑するオルべリオンだった。
「じゃ、約束です。また話しましょう。今度はお茶菓子を持ってきます」
「シオウ、………」
「は、……っ!」
チュッ
そっと肩を寄せられて、触れた右頬の熱も………
朝起きても、消えなかった。
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