巻き込まれた脇役は砂糖と塩と共に

田舎

文字の大きさ
上 下
71 / 83
2章 脇役と不死の王龍

神様再び

しおりを挟む





もう無理、無理だ。


さらにゼアロンさんの、『すまない』の言葉だ。
それってどうゆう意味?
俺の声が理解できていてのノーだったのか、それとも「なんて言ったんだ?」というワンモアだったのか。
え。そもそも、ちゃんと俺の好きって伝わった?likeとloveを間違えてない??


(し、しんどい…… )

しかし二回も同じことを言えるほど俺のメンタルは強くはない。


なのに…………

すーすーっと俺を抱き締めて眠る、ゼアロンさんの寝顔だ。



「ずるいなぁ。ほんと…」
「……」
「………しょうがない」

今回のヒロインはゼアロンさんだもんね?
だって予想外の事態でも、真っ先にピンチに駆け付けたのって俺だもんね??

ゼアロンさんの手を見れば、ちゃんと呪いも消えていた。
今はそれに満足して、俺も目を瞑った。













「こ、ここは…!」

美しい星々と、大きな惑星たち。
シオウが来ていたのは 静かでどこか居心地がいい。星座の間だった。

「ほんとに――――、君は無茶をするね」
「やっぱり、オルべリオンさん!」

二度と会えないと思っていた。
だって、三回目の質問はしていたから。


「ありがとう、シオウ」
「へ?」

思わず駆け寄ろうとしたタイミングで、精霊王が頭を下げてきた。
ありがとう、とは??

「君が対峙した王龍―――…ウナバラは、私の友人だった」
「えっ、それは…っ、すみませんでした…」
「いいや、何も謝る必要はない。私と彼と宗士郎……いずれ聖人と呼ばれて慕われる人間と共に、三人で旅をした」

当時を懐かしむように、オルベリオンさんは語った。
楽しい事ばかりじゃなかった。それでも宗士郎は瘴気をどうにかしようと、旅を選んだのだと。

旅の結末までは教えてくれなかったけど、様子から察するに無事に瘴気は収まったんだと思う。

(けど瘴気は消滅せず、また戻った。なるほど…)

この世界は、瘴気が充満して人々の生活が脅かされる度に聖女を降臨して浄化してもらう。だけど瘴気は完全には消えず、ずっと歴史を繰り返しているのか…。

その後、宗士郎さんは「やるべきことがある」と元の世界に戻り、オルべリオンさんは色々あってを"神"の座についた。
そして王龍ウナバラは、………聖人の消えた森の守護者となった。


「しかし、いつしか人間達はこの事を忘れた」

人々はあの土地で戦いを繰り返し、ウナバラは致命傷を負った。それでも彼は離れず、いつしか瘴気に汚染された。


「オルベリオンさん…」
「かつての友が瘴気に堕ちていくのを、私は見るしかできなかった」


助けてほしい、助けてくれと……。
何度願っただろう。ウナバラ同様に、自身の無力さを呪いそうになったとき、世界に異物が送られてきた。

「あの微精霊はセイレーンだ。ずっと前にウナバラを迎えにきていたというのに…相変わらず鈍感な奴だ。イーリエという人間が死なないよう庇ったあとは、シオウ。君にくっついた」

それは気づかなかったし、もっと通訳してくれてたお礼も言いたかった。

「ええ…でも俺は、墓標の名前を呼んだだけですよ?」
「十分活躍してくれたよ。宗士郎も待っていた、現にあの場にあった墓は消えたんだ」
「……みんな、とても仲が良かったんだね」

ウナバラとオルベリオン。
オルべリオンの意味は分からないけど、空を見たゼアロンさんがよく言ってた。
だから星々の名前なんだろ?
精霊王は満足げに微笑んだ。


「シオウ。あの質問には私よりも先にセイレーンが動いた。だから、君の質問はあと一つ残っている」
「え」
「さぁ、君はなにを知りたい?なんでも与えよう」

本当ですか!?
俺はてっきり、使い果たしたと思ってた。
なのに違う? え……?そうだったの??


「なら!」

もちろん言葉だ、エルナ語をいち早く習得したい。

だって――――――――…… だけど…… オルべリオンの穏やかな表情をみて、躊躇ってしまった。


「…… 俺は宗士郎さんのことは知らないけど…、だけど、とても懐かしい気がするんだ」
「ん?」

甘利は、母さんの旧姓だ。
おじいちゃんの名前は甘利「桃李とうや」だけど、もしかすると宗士郎さんは俺のご先祖様……だったのかもしれない。
だってウナバラの記憶で見た男の人が、少しだけじぃちゃんに似てた気がするから。

「旅の話を聞かせてくれませんか?ちょっとでもいい、時間があれば教えて欲しい。これが俺の三つ目のお願いって言ったら、ダメかな?」
「……わ、私の話?それでいいの?」
「はい!話せる範囲でいいので」


こんなに広い空間で一人だ。
時々俺と話すくらいなら、いいよね?


俺も、言葉が通じる人とストレスなく話がしたい。



「………はは… 正直、ゼアロルドと戦うのは嫌だなぁ」
「ん??」
「だって彼は、ウナバラを倒したところで余裕だったもん。ほんと末恐ろしい騎士だ。化け物と呼ばれても、」
「化け物なんかじゃないっ!ゼアロンさんはいっつも俺や、みんなを心配して守ってくれる。立派な騎士です!」

むむ゛ーっと睨むと、そうだね。と失笑するオルべリオンだった。


「じゃ、約束です。また話しましょう。今度はお茶菓子を持ってきます」
「シオウ、………」


「は、……っ!」


チュッ

そっと肩を寄せられて、触れた右頬の熱も………






朝起きても、消えなかった。


しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

処理中です...