76 / 83
(二章)小ネタ
あったかもしれないやり取り
しおりを挟む
①シオウの声
「なんで、俺を一人にしたの」
「――――――」
「ずっと待ってた、待ってたのに…・・俺は、」
「シオウ」
いくら名前を呼んでも手を伸ばしても、聞こえてくるのはシオウの哀しげな声ばかりだ。
どうやら魔石にユリアが仕掛けをしたらしく、時々ゼアロルドだけに聞こえる声が届いた。
「シオウ…」
ただし、石にそっと触れてもぬくもりまでは届けてくれない。ヒヤッとした無機質な冷たさしか感じない。
聖人、神子だと勝手に祭り上げているだけで、彼はこんなにも心が弱くて、ゼアロルドがいなければ…。
(……俺にはその資格がない)
少し前までは当たり前にあった、この両腕の中に彼はいた。
娘が出来たのは予想外だったが、三人で過ごすのも当たり前だった。
「ゼアロンさんに、会いたい」
「俺もだ」
王龍を倒した魂が、どうなるのかは分からない。
一説によると目も当てられないほどに醜い、魔物化するという話もある。
それでも選べるのなら、シオウのそばに還りたいと願う。
「……、っ、ん、」
「!」
この魔石は、稀に声は違うモノを送ってくることもあった。
ごそっと服の擦れる音が聞こえた瞬間、ゼアロルドはなにも聞かぬように、そっと部屋を出た。
(……は?自分で触っただけで…声を?まさか…っ、そんなに敏感でシオウは大丈夫なのか?)
ゼアロルドから全くいらない心配をされていることを、シオウは知らない。
②浮気…? in 死の森
それは二人が魔石でユリア達と通信をしていた頃。
たまに聞こえてくるオズグ、オズの名前だ。
ゼアロルドの大半は移動と道中の討伐で、シオウについては最低限の情報と安否しか確認することが出来なかった。
「その、オズグとは誰だ?」
「あ。俺と同行してくれてたマクミランの魔法使いです」
『そしてママの新しい男ね』
「は?」
「確かにオズグさんは男だけど仲間、友達な?」
というか、さっき真面目にしろってゼアロンさんに叱られたばかりだろ?
ユリアも話ができて嬉しいのも分かるけど…、ん?
「ゼアロンさん?」
「えぇ問題ありません、なにも。決して、私は冷静です」
「え、いや…全然そうは見えないんですが」
「大丈夫です。そうですね、最初にシオウと寝たのも過ごしたのも私ですからね。おかげでユリアという娘まで授かってますので全然平気だ」
「ちょっとゼアロンさん!?!?」
魔石越しでも何言い始めるんですか!?と顔を真っ赤にして慌てふためくシオウ。
(ゼアロン、君は…!)と、悟られない程度に腹を抱えて笑うイーリエと。
(ママが浮気した場合、全力でわたしが守らなきゃ)と、謎の決意をしたユリア。
『私は一体、なにを聞かされているんだ…?』
か細く困惑するオズグの聞こえた。
「なんで、俺を一人にしたの」
「――――――」
「ずっと待ってた、待ってたのに…・・俺は、」
「シオウ」
いくら名前を呼んでも手を伸ばしても、聞こえてくるのはシオウの哀しげな声ばかりだ。
どうやら魔石にユリアが仕掛けをしたらしく、時々ゼアロルドだけに聞こえる声が届いた。
「シオウ…」
ただし、石にそっと触れてもぬくもりまでは届けてくれない。ヒヤッとした無機質な冷たさしか感じない。
聖人、神子だと勝手に祭り上げているだけで、彼はこんなにも心が弱くて、ゼアロルドがいなければ…。
(……俺にはその資格がない)
少し前までは当たり前にあった、この両腕の中に彼はいた。
娘が出来たのは予想外だったが、三人で過ごすのも当たり前だった。
「ゼアロンさんに、会いたい」
「俺もだ」
王龍を倒した魂が、どうなるのかは分からない。
一説によると目も当てられないほどに醜い、魔物化するという話もある。
それでも選べるのなら、シオウのそばに還りたいと願う。
「……、っ、ん、」
「!」
この魔石は、稀に声は違うモノを送ってくることもあった。
ごそっと服の擦れる音が聞こえた瞬間、ゼアロルドはなにも聞かぬように、そっと部屋を出た。
(……は?自分で触っただけで…声を?まさか…っ、そんなに敏感でシオウは大丈夫なのか?)
ゼアロルドから全くいらない心配をされていることを、シオウは知らない。
②浮気…? in 死の森
それは二人が魔石でユリア達と通信をしていた頃。
たまに聞こえてくるオズグ、オズの名前だ。
ゼアロルドの大半は移動と道中の討伐で、シオウについては最低限の情報と安否しか確認することが出来なかった。
「その、オズグとは誰だ?」
「あ。俺と同行してくれてたマクミランの魔法使いです」
『そしてママの新しい男ね』
「は?」
「確かにオズグさんは男だけど仲間、友達な?」
というか、さっき真面目にしろってゼアロンさんに叱られたばかりだろ?
ユリアも話ができて嬉しいのも分かるけど…、ん?
「ゼアロンさん?」
「えぇ問題ありません、なにも。決して、私は冷静です」
「え、いや…全然そうは見えないんですが」
「大丈夫です。そうですね、最初にシオウと寝たのも過ごしたのも私ですからね。おかげでユリアという娘まで授かってますので全然平気だ」
「ちょっとゼアロンさん!?!?」
魔石越しでも何言い始めるんですか!?と顔を真っ赤にして慌てふためくシオウ。
(ゼアロン、君は…!)と、悟られない程度に腹を抱えて笑うイーリエと。
(ママが浮気した場合、全力でわたしが守らなきゃ)と、謎の決意をしたユリア。
『私は一体、なにを聞かされているんだ…?』
か細く困惑するオズグの聞こえた。
183
お気に入りに追加
569
あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
勇者召喚に巻き込まれて追放されたのに、どうして王子のお前がついてくる。
イコ
BL
魔族と戦争を繰り広げている王国は、人材不足のために勇者召喚を行なった。
力ある勇者たちは優遇され、巻き込まれた主人公は追放される。
だが、そんな主人公に優しく声をかけてくれたのは、召喚した側の第五王子様だった。
イケメンの王子様の領地で一緒に領地経営? えっ、男女どっちでも結婚ができる?
頼りになる俺を手放したくないから結婚してほしい?
俺、男と結婚するのか?

実はαだった俺、逃げることにした。
るるらら
BL
俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!
実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。
一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!
前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。
!注意!
初のオメガバース作品。
ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。
バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。
!ごめんなさい!
幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に
復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる