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2章 脇役と不死の王龍
脇役と飛竜(前半)
しおりを挟む馬鹿な…っ、とオズさんは張り紙の前で大変凹んでいた。
それよりも聞き捨てならない。
「ごめんユリア。俺は文字までは読めないみたいなんだ…だから、もう一回言ってくれる?」
「マクミランの魔法使いが王城の地下牢から脱獄。幼い少女と、少年括弧おおよそ16から18歳括弧閉じるを連れて今も逃亡中」
「「おい誰だ!?こんな手配書を作成したヤツは!!」」
仲良く揃ったシオウとオズの叫び声。
掲示板を前に、さぁて困ったことに指名手配されてしまったぞ。
やっぱり脱獄って罪に問われるのか、ん~~~~~~そうだよなぁ。こうなってしまった原因は俺だ、オズさんは何も悪くないのに。
「うむ、これでオズグと一緒にいる必要はなくなった!せめてもの慈悲にわたしがお前を地下牢に転送してやろう」
「うっ、精霊様… 手を煩わせてしまい申し訳ございません」
「まてまてユリア、オズさんも!周りを見てみろ?みんな手配書を見てるのに誰もこっちを疑ってないみたいなんだ」
ほら!とシオウは二人に言う。
『マクミランの!?』・『物騒だな、子供が二人も…』―・・
さっきから聞こえてくる呟きがある、なのに皆んな俺たちを当たり前のように素通りしていく。
「昨夜の酒場じゃ、あんなにオズグさんって呼んでいたのに誰も飛んでこないんだ」
「言われてみれば」
「確かに。誰も我々を怪しんでない」
三人は一斉に首を傾げた。
オズグ。マクミランの自称天才魔法使い、指名手配された脱獄者。
シオウ。人質その一、異世界から来た人間。オズの脱獄幇助罪に問われてもおかしくない。
ユリア。人質そのニ、幼女に見えるが正体は上位精霊。
こんなに目立ってもおかしくない三人組なのになぁ??
とまぁバレないなら、それに越したことはない。
一行は行商人の荷車に乗り、風景は街から平穏な牧場のような場所に変わっていた。
「オズさん。これって、どこに向かってるんですか…?」
「どうせ今朝のアレのせいで検問が厳しくなっている。なにより貴様を連れて陸路を使うのは目立つからな、この先の竜舎で飛竜を借りる」
「ひ、りゅう…飛竜!!それってドラゴン!?」
「ドラゴン?それは王龍の称号だ。飛竜は飛竜だ、知らんのか」
「せんぜん知らんでいいです!飛竜って空を飛ぶんですよね!?わぁ、楽しみだなぁ」
みんなと旅をしたときはずっと陸路だった。
最終的には徒歩じゃなくて専用の大きな猪に似た生き物が牽引する、箱型の乗り物に乗ったけど…まさかの空ときた。
飛竜かぁ!!
どんな見た目なんだろ!?ワクワクするなぁ!
「うわぁぁああ――!おっきい、かっこいい―――!!」
日本にいた頃に遊んだ、RPGゲームのまんまだ!
ドーンッ!と並んだ飛竜達はどれも立派で、艶やかで輝く鱗と逞しい肉体。これなら大人を一人や二。いや、三人を乗せて飛べそうだ。
「ママ、嬉しそう」
「……はぁ。幼体の飛竜ごときではしゃぐとは、品性のかけらもない」
「あ、でも瞳の色は全然違うんだ!君は柔らかい青色で、君は深い海の色だ。綺麗だねぇ」
人を乗せて飛び立つのかぁ…へぇ
飛竜は俺と目を合わせてくれないけど、飛んだ姿はもっと優雅で立派なんだろうなぁ。
「これ名前だよね?ごめんな、看板に書いてくれているのに俺は読めなくて…、でもカッコいい。いいなぁ飛んでる姿がみたいな」
―――ギュルッ、?グルルゥ…?
キュー…と高い声で鳴く飛竜。
喉を鳴らす音に俺は思わず手を、
「――おい。飼育されてきるとはいえ飛竜は気位が高い。うっかり前に立つと蹴られて死ぬぞ」
「えぇ!?」
いまの鳴き声って、威嚇だったのか!?
それは危ないと思わず一歩下がってしまった。
飛竜は「ん?触らないのか?」って様子に見えるのに…!
そのとき急にユリアが俺の手を握ってきた。
「ユリア?どうした、もしかして飛竜さんが怖いの」
「………やっぱり、来るのね」
「へ?」
「よぉ、シオウとユリア様。無事で何よりだと言っとくべきだな」
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