巻き込まれた脇役は砂糖と塩と共に

田舎

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2章 脇役と不死の王龍

そして脇役は奮起する

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(ごめん、真里亜。お前知らない間に叔母さんになっちゃったよ)

心の中で謝っとく。
再会した時、『はあ!?お兄ちゃんどういうこと説明してよ!?』ってすごく怒られそうだけど……まぁ二人ならすぐ仲良くなってくれるはず。あまり深くは考えない。

それよりもだ!
俺の頼れる友達兼可愛い娘ユリアがだ、俺と同じくゼアロンさんに会えなくて、捨てられたと思い込んで悲しんでいた。

きっと事情があるんだって、その誤解を解きたい。でなきゃ俺も納得できない。


(―――――よし、腹は括った。ゼアロンさんの居場所をちゃんと聞こう)


早速情報集めからだ!









「あ、隊長?西の方だっけ?」
「ロインはアホですね、あの人は―――」
「ん~~わかんねぇなぁ。それよりこのサルガザンには鉱山があってだなぁ」
「ゼアロルド?んな薄情な奴、知らねぇよ」


残念ながら今日も有益な情報が得られなかった。
それどころか、ずっと旅をしてきた皆んなの反応はちぐはぐだ。

(やっぱり、なにか隠してるよな?主に俺とユリアに)

言葉が分からなくたって空気で伝わる。
食堂でもどこでも―――ゼアロンさんの話題だけを、あからさまに避けているみたいだった。


(ゼアロンさん、もしかして皆にもちゃんと挨拶してなかったのかな…?)

そりゃ拗ねられてもしょうがない。俺だってそのうちの一人なんだ。

――――ってことで今日は方針を変える。
仲のいい騎士達ばかりじゃなくって、他の人に話を聞いてみようと思ったんだ。






(ううっ、緊張するなぁ…)

朝一番に見つけたのは廊下で仲良さげにしている二人組。
俺は壁際に隠れて、心の中で何度も覚えたエルナ語を復唱する。

”ゼアロンさん、どこにいる?俺は会いたいです、どこにいるですか?”。

大丈夫だ。ユリアに確認しておかしいところはないと言ってもらえたんだ。
頑張れ俺!やればできる子だ!
グッと覚悟を決めて足を踏み出したとき、――――リンッ と鈴の音?が聞こえた。

(え、風鈴……?)

懐かしい音に振り向いても何もない。
気のせい、か……?



「あ。そういえばよぉ、例のマクミランの魔法使いってどうなった?」
「それが全然!ずっとゼアロルド隊長に会わせろ~!の一点張りだとさ」
「会っても勝てるわけないだろうになぁ、あの化け物に」


……!?
とっさに二人に見えないよう壁に隠れてしまった。

(………え、なんで急に会話が…?)


「今日はイーリエ様が尋問に当たるらしいぜ」
「うわぁ、マジかぁ。最近ずっとピリピリしてるもんなぁ怖ぇよ」
「けどさあの綺麗な顔だぞ、― ご褒美じゃ――、……」

無事、シオウに気付かないまま通り過ぎて行った騎士達。


(…………い、いまのは、一体?)

いまの人達の会話がストレートに耳に入った。聞こえない単語なんて一つもなく。
マクミランの魔法使いがゼアロンさんに会いたくてやってきた。いや…尋問するって言ってた、つまり捕まったってこと?

いや、まぐれ(?)かもしれない。
シオウはその後も、そこそこと騎士達の会話を盗み見して回った。



「やぁ、シオウ」

イーリエさんの声にドキッと心臓が跳ねた。


「ひぇ!?あ、おはようございます、イーリエさん」
「おはよう。今日は天気がいいね、ユリア様は?」
「……とても、いい天気ですね。えっとユリアは、ロインさんの、ところに……多分~ですが」
「そうかい。にしても随分エルナ語を覚えただけでなく流暢に話せるようになったね」
「あ、はは…ありがとうございます」

"皆さんのおかげです"、とは言わないほうがいい気がして曖昧な言葉と笑いで濁す。


今日になって突然言葉を理解できるようになった。

一体 なんでだ???





◇ ◇ ◇




「もしかするとそれは、わたしの影響か…しら?」
「へ?ユリアの?」

ユリアは俺と混じっていた。俺の一部はユリアにあって、ユリアの中には俺の一部がある。
こうして一緒に生活していく中で、俺に変化が現れるのはおかしな話ではないと。

いや。俺にとっては十分おかしな話なんですが……


「あ、それってつまり俺にも魔力が」
「それはない。魔力だけは生まれ持っての素質じゃ、ないものはない」
「………な、なるほど」

うぅ。オブラートに包まれることなく、きっぱりと言い放たれてしまった。



「だけど、言葉が分かるようになったんなら怖いものなしだな!」


ユリアの話を聞いて、ど~~~~~~~~うしても納得のいかなかったことがある!


『わたしの年齢だけは――――少年愛趣味があるんじゃないかって、パパが性癖を疑ってた影響』
『パパがママのこと、まだ幼いって思ってるってこと』

それを思い出すだけで、まだ恥ずかしさと怒りにぷるぷると肩が震える。



「ぜってぇ、訂正してやる!!俺は成人男性だって!!」
「ん~、ママはママねぇ」
「こうなったら、ユリア!一緒にパパんところに行こう!砦がどんなに遠くたって向こうが会いに来れないんなら、こっちから行けばいい話だよ!」
「!」

ロインさんの情報から始まり、ちょこちょこ”西の砦”・”ゼアロルド”ってワードが聞こえたんだ。

―――――――つまり辺境の土地にある西の砦だ。そこにゼアロンさんがいる可能性が高い。


どんなに遠くたって構うもんか。
もし違ってたって構わない。また探せばいいだけだ。


「ママが行くなら、当然よ」
「よし!まずは自己紹介の特訓だ!」


「は、何故じゃ???」


冷静にユリアは突っ込んだ。


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