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2章 脇役と不死の王龍

『おはよう、 』.

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「―――――ハッ」


ざわざわとした人通りと客を呼び込む声。
そして目の前には、ニコニコと微笑むアラビアンな女性から求められた勘定。
戸惑うシオウをよそにゼアロルドが財布を開いたのでシオウは必死に止めた。


(さっきまでのは、幻… じゃないか、さすがに)

白昼夢にしては生々しくて、ちゃんと話も神様の姿も合言葉まで覚えている。

―――不思議だ。
俺が神様と話している間は結構長かったはずなのに、ゼアロンさんの様子を見る限り俺に変わったところはなかったらしい。


「シオウ」
「ん?」

さぁ出して?と言わんばかりに左手を差し出して、にっこりと微笑むゼアロンさん。

俺が購入した魔石の件はバッチリばれていた。




 ◇ ◇ ◇ 






「う、うまい!」

聞こえた称賛の声に、ふにゃりと緩むシオウの顔。

夕暮れ前に騎士舎に戻るとパンケーキをたくさん焼いて、その上にドランさんの店で買ってきたフルーツをふんだんに乗せてみた。ちゃんとケーキだけじゃなくてカットしただけのフルーツもある。
こうした夕食後のデザートは皆にとても喜んでもらえたし、ミンデさんにはこっそり魔石の原石と依頼料を渡しておく事も出来た。

そして――――― 楽しかった一日も間もなく…



(………んん゛ー)

ベッドに座るシオウ。
ゼアロンさんはまだまだ寝ない。それをいつもなら俺は、仕事が終わるのを待ってるんだけど… うむむむ。

「シオウ…?」
「っ、おやすみなさい!」
「?あぁ、おやすみ」

騎士舎に来てはじめてだった。
ゼアロルドの布団で一緒に眠らないことを選んだシオウ。

ゼアロンさんは恋占いをした。
それってつまり相手がいるってことだよね。


(ゼアロンさんに好きな子がいるんなら… 一緒に寝るなんてのは良くない)

ひとりで布団にもぐって冷静に考えれば、そもそも男の添い寝はゼアロンさん的には問題なかったのだろうか??
ここは屋内だ。野宿していたような危険は一切なく、密集して体を温め合う必要なんかない。

気持ち悪いとか…、一秒も思わなかったのか?


(馬鹿。それは、あまりにもズルいだろ…、俺)

ゼアロンさんは、心細さで精神的に落ちていた俺を慰めてくれてた。
俺だけが変わらず優しさに…… めちゃくちゃ甘えていた。甘えていたからこそ、ゼアロンさんに好きな子がいるとか一切考えなかった俺が、恥ずかしい。


(ーーー恥ずかしいさっ、恥ずかしすぎる!!)


今更ながら恥ずかしい!!!
これは真里亜にすら話せない!いや誰にも!!兄としての沽券に関わってしまう!!
 

このまま「うわぁぁぁぁあ――!!」と大声で叫び悶絶したい気持ちを必死で耐えるシオウだったが、ふっとゼアロルドにより少し部屋の灯りが落ちたことで落ち着いた。
シオウが眠りやすいようにと… ゼアロンさんの気遣いが伝わってきて胸がジンとする。


(……いつか紹介してもらいたいな。ゼアロンさんの大切な人)


そして思い出す。
神様からの忠告のような言葉を。


『”死の森にいなければ、君は大切なものを失う"』。


大切なもの… この世界に来て大切なものなんて妹か、騎士のみんなくらいなものだ。
だから、 もしそれが本当ならば俺は行かなきゃならない。


(でも、いつ?どうやって――――?)


具体的に、なにをどう失うかも分かっちゃいない。
俺は、自分がいる場所の事すら知らないのに。




 * * *







そして、朝の光が差し囲む部屋。
自分以外の温もりを、んー…と手繰り寄せば柔らかくてあたたかい、にふっとしたものがあった。

ふに…、?


(あれ?でも…俺は一人で寝た はず…?)


それに筋肉じゃない。
手触りとか、なにもかもが違う気がする…と違和感で開いた目。


んー…これは甘栗… ?

触っていたのは白い頬だった。


「は、!?!?!」


――――――いやいや!!咄嗟に手を放して体を起こした。

さらさらとした甘栗色の髪色に ぷくっくりした頬



!?!?!?!?!?



たまらず、「ええええぇ―――――!?」と大きな叫び声を上げた.



俺のベッドの中にいたのは全く知らない 幼い女の子。



そして、目を覚ました少女は 綺麗な薄緑色の瞳で笑う。




「おはよう、ママ」。


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