巻き込まれた脇役は砂糖と塩と共に

田舎

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(一章)小ネタ

シオウとおでかけ!

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小ネタ:シオウとおでかけ!


地球になら当たり前にあるインターネット。
配信動画、サブスク、ゲームにスマホ。
しかし異世界にはこれら全てがない。

勿論、この世界にも道楽はあるのだが、エルナ語にエルナ文字を理解できないシオウには難しい。


「神子様―つか、シオウって退屈してないのか?」

ロインの言った一言。
これが、ピッシャーンっと全員の心の中に衝撃を与えた。


確かにシオウが遊んでいるところを、誰も見たことがなかった。
騎士舎にきた今も、彼は当たり前のように出来ることを探し、それが終われば食事の下処理、洗濯。まだ理解できない言葉を学んで、―――しかし、それらは『娯楽』ではない。

さらにシオウは先日の事件があった。
規定に基づき外出に規制が掛けられているが、本来は自由であるべだ。


「分かった。なんとかしよう。ではロイン―――」


こうして言い出しっぺのロインは、………
シオウを連れ。アルタイルとミンデと共に森へピクニックにきていた。



(――――いや、なんで???)




◇ ◇ ◇





「シオウ、これがトリハナです」
「とり、はな…、これ?えぇっと」
「シオ~、これはただの石だが若干の魔結晶を含んでる~水の性質だなぁ多分~」
「みれ、…水、水の?石、の…・?」

気分転換とは何ぞや。
持ってきた図鑑や資料を一生懸命に見比べて、アルタイルとミンデの話をふんふんと懸命に聞き取ろうとするシオウ。
ピクニックというよりも課外授業である。


「~~~~あの、お二人とも!!今日はシオウ様の気分転換ですよ!教えてばっかりでどうするんですか!」
「「あ」」
「???」

その様子に首を傾げるシオウだった。






「あ、ロイン。今日は出かける日だったな、どうだった?」
「………隊長、それ本気で聞きたいっすか…」

戻ってきたロインは、げっそりとしていた。
もしかして何かあったのだろうか…?とゼアロルドも心配した。

「ロイン」
「はぁ~~~~…アルタイルさんは無口になるし、ミンデさんは勝手に鉱物探し。シオ・…神子様は好奇心旺盛」

あれはなんだろ?これはなんだろ?
あれは?あれは?あれは…・・、ある意味景色を楽しんではいるが、同じ目線に立って物事を教えるとは難しい。
さらに、シオウに故郷(マクミラン)を思い出させるような質問はご法度であった。上辺だけの苦しむ会話に、シオウの方がロインに気を遣ってくれていた。

「弁当まで用意してくれて、マジで神子様が神子様でした」
「そ、そうか」
「次はせめて持ち物を、」


「――――あ、ロインさん!」


背後から二人に声をかけてきたのは、笑顔満点のシオウ。
今日外出をさせてくれたお礼に、ドーナツを差し入れようとロインを探していたらしい。


「―――え、いいんですか!?」
「ロインさん、ありがとうございました、今日たのしかったです!」

アルタイルさんはいつも新しい知識をくれて、ミンデさんはおじいちゃんみたいで優しい。ロインさんは同じ目線で、俺でも分かりやすいよう懸命に教えてくれる。

シオウにとっては実りのある事ばかりだったと、拙い言葉でも笑顔で伝えてくれる。


「ロイン。次の外出では、もっと持ち物を増やせるよう私から進言しておく。今回は条件が厳しすぎたとも思う」
「え!?」
「次は、私も休みをとろう」
「…………は、、え゛!?」

ゼアロルド隊長が、休みをとる―――――――??
その言葉に耳を疑った。


「ではロイン。明日訓練所で。シオウも夜更かししないように」
「はい!ロインさん、また明日!」

シオウが理解しやすい言葉を選ぶゼアロルド。
そして、ロインにおやすみなさいを告げて隊長を追いかけていくシオウ。


「はい、おやすみなさいっす!」


実力と信頼故に、二人が同室であることは全員が納得しているが……。


「………あれは隊長 寝られないでしょうね」


ざまぁ見ろと思う。
きっと、今日のことを聞いて聞いて!と、ゼアロルドにシオウは報告するのだろう。


それを想像してロインは、にんまりと笑った。









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