巻き込まれた脇役は砂糖と塩と共に

田舎

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(一章)小ネタ

小ネタ⑨

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シオウの言った「俺も騎士になれませんか?」.
それが発端だった。




(ロイン視点)




ぼたぼたと焦りと緊張から汗が止まらない。



「ぜ、っ…ゼアロルド隊長…!殺す気ですか……?」
「実践を思い出せ。死の森でなにを感じた?」
「…………っ、それは」

もちろん忘れはしない。
だけど!今俺の前に隊長が立ちはだかっているのは別件だよな!?
ロインは冷や汗を流しながらも、命綱でもある剣を必死に握り前を見据えた。


まるで走馬灯だ。
ロインが騎士を目指したきっかけは、己に火属性に強い適性があったからだ。数十年前にいた火の守護神と呼ばれた英雄のようになりたいという憧れ。
もっと鍛えて才能を開花させれば、同等の中級魔法あたりは使えるようになれると信じ…、その一身で魔法騎士になりたいと門を叩いた。

それが何故、こんなことになったのか………?
突如開催された騎士同士による模擬戦闘など…



「ロインさーーーーん、頑張って!!!」
「―――――!」


ロインの後ろにいるのは、随分と遠い席に用意された観客席から身を乗り出し、エールを送ってくれるシオウだった。

(み、神子様…!)

背後からでもしっかりと聞き取った声援。
この世界にいる、絶対無二の御の姿。


「は…、はい!!!」


カタカタと震える剣先が止まった。

神子のシオウは不思議な子だ、ロインも共に旅をしたからこそ分かる。
死の森だけではない。
王都でも騒動はあったものの、彼がした事は体調を崩し困っていた果物屋の店主を手伝い、貧困の子供達に果物を配るという奉仕活動だった。

力や加護にも溺れない。
まさに俺も憧れていた、強くて優しい英雄の気質だった。


「ロイン。君はいい素質を持っている、実戦経験も増えて強くなった。死の森での経験が生かされている」
「た、たいちょ…………!」

思わず感動に震える。
ゼアロルドはイーリエとは違い、努力を認めても人の素質や才能を褒めるのが苦手だった。その人が部下を励ますようになるなど、誰が期待していただろう?

これも、全員で過酷な旅路を乗り越えたからこそ――――




「ゼアロンさんも、負けないで―――!」


しかし…………”これ”だ。
途端、周りの仲間らから送られる「う、うわぁ……」「ロインがんばれ」「組み合わせが悪い」などと憐れみの視線。



「さぁ、死ぬ気でかかってこい」
「はい…!」


キラキラと輝く青春…のように見える地獄絵図があった。






「さぁて、次は誰の番かな?」


「おう。俺だ。ロインの敵討ちだ、イーリエがいねぇのは残念だが……全力で殴ってやるよ」




誰もが強く願う。必死に。



(もう二度とこんな模擬戦闘は嫌だと)





シオウが何か出来ることないかと軽々しく自分と剣を指さしたことで起きた事件
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