巻き込まれた脇役は砂糖と塩と共に

田舎

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(一章)小ネタ

唐揚げの妖精爆誕記

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―――正しい呼び方などはない。
姿もなく、形もない、自我もない。

希望に打ち捨てられた者、祈るしかできない者、非力な者。
縋ることでしか具現化することのできない中身。それが、"聖女を降臨させる"ための装置の一つだった。


人々の祈りを受けて 、ソレはうまれて、役目が終われば無に還る。


ソレも、そうなるはずだった…。


(くそっ!光のせいで…ッ、眩しすぎて開けてられないっ…)

チカチカする視界と何処までも落ちていくような感覚。
いま、少しでも力を緩めてしまったら、俺も真里亜もバラバラに引き裂かれてしまう気がした。


"ヒツヨウデハナイ。"

コレは異物だ。計画にも予定にもない、弱い器。
転移が終わる前に引き離せばいいと装置は判断した。

そして光の手が異物に触れた瞬間、それは目を閉じたままハッと顔を上げ、強く掴み返してきた。


『まり、あ…っ!!離さない、絶対にッ、…!』


ただの装置の一部。
それを己の妹の手だと、強く信じて放さない。
なぜ、シオウが真里亜と間違えたのかは分からない。必死すぎただけなのかもしれない。
けれど細くて小さな腕を、ぬくもりを、守らなければと叫んだ。


『にぃ、ちゃんが…っ、守るから!!』




そして世界が 弾けた。





それからソレは、… 



『お前、ほんと唐揚げが好きだよな。ドーナツも好き?』

ニコニコと微笑まれて、唐揚げを受け取る。
おいしい、おいしい…。
まだ何もできないけれど、『食べすぎて太るなよ??』と、どこまでも穏やかな声を聞いていた。

その人の顔を見て、
ソレは、まだ使命も願いもなく、何者でもないが…… 悪意はより鮮明に見えた。


【黒髪に黒い目…、災いの象徴だ】
【なぜ、あんなモノが聖女様の身内なのだ!?聖女様は騙されている!】


【あとはコイツを死の森に送るだけだ】
【この異端者が…、すぐ冥府へと送ってやる】


…… 見知った光をみた瞬間


かつて一部だった "わたし"には

ようやく、しなければならないことが分かった。




補足:
唐揚げの妖精さんの元々は、魔法陣から発生した腕の一本。
一つ一つが自我のない妖精もどきの集合体。
シオウが妹の手と間違えてたので本体から引きちぎれ、ずっとシオウの中で眠っていたのだけど、シオウが加護の鑑定を受けた時に目覚めた。
誕生の声は小さすぎて聞き取れなかったようですね


『うま れたよ…、まま』.




感想いただけたので唐揚げの妖精さん目線を書きました。
ありがとうございます!
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