34 / 40
小ネタ
小ネタ⑥
しおりを挟む
⑥ある日の小休憩(まだサバイバル中)
昼食後。一時間ほどの休憩で、ゼアロルドはシオウに言葉を教えてくれていた。
最初は必死に頷いていたのだが、食後のあとの木漏れ日と風だ。
いくら聞かなきゃという気持ちがあっても、つい授業中に舟を漕いでしまうように、まるで学校の集会で校長先生の話が子守唄に聞こえるように… 大変心地よかった。
「で、これが……、と、シオウ?」
シオウは、あろうことか眠りの誘惑に負け、すーすー…とゼアロルドの肩で居眠りを始めていた。
(……参ったなぁ)
シオウとは他の団員達と同様、夜は冷えないよう身を寄せ合って眠っている。だから自然とシオウも距離感を学んだのだろうが、それは生きる術であり、こんなに無防備でいていいわけがない。
「シオウ、起きなさい」
「ん、んー……」
「隊長。たまにはいいでしょう、シオウだって疲れてるんですよ」
「……アルタイル」
苦労の多い旅路だ。
野営に必要な設備も寝床もなく、毎夜毎夜、冷たくて硬い地べたの上で眠るのだ。
訓練など受けたことなどないシオウの体が、疲れ休みたがるのは当たり前だ。
「彼を、どこぞの脳筋達と一緒にしては気の毒です。それに…、貴方も昨日は遅くまで起きていたでしょう?」
「やっぱり聞いていたのか」
星々の前で、シオウは自分の無力さを嘆いて泣いた。
そこに思うところは全員があったのだ。
「悪いが、あと少しだけ… 構わないか?」
「他の仲間も疲れています。長めの休憩も悪くないでしょう」
イーリエが動けない今、副隊長はアルタイルだ。
その存在が全員の疲労状態を気にかける以上、強くは言えない。
(んー…、なんか…、もぞもぞする…)
分からない言葉の羅列。
まるで海外ドラマを観ているようだった。
どちらの声も穏やかで、シオウを起こさない控えめな声量。
"あたたかい、心地いい、もっと寝たい…"
いいんだ。きっと…BGMの一つなんだ。
体は楽な姿勢を求め、シオウは崩れるようにゼアロルドの膝に頭を乗せて、ぷぅぷぅと呑気に眠る。
「「…………」」
「まぁ森は抜けたんだ、また俺かミンデが運んでやるよ」
そして…… 静かに、 "誰の膝の上でシオウが一番寝られるのか選手権"が開催されそうになったのを、
ゼアロルド以上に怒ったイーリエが黙らせた。という事件を、シオウだけが知らないのだった。
(騎士という職業病故に、庇護欲を煽られると"俺が守る!"てなってしまう人達)
昼食後。一時間ほどの休憩で、ゼアロルドはシオウに言葉を教えてくれていた。
最初は必死に頷いていたのだが、食後のあとの木漏れ日と風だ。
いくら聞かなきゃという気持ちがあっても、つい授業中に舟を漕いでしまうように、まるで学校の集会で校長先生の話が子守唄に聞こえるように… 大変心地よかった。
「で、これが……、と、シオウ?」
シオウは、あろうことか眠りの誘惑に負け、すーすー…とゼアロルドの肩で居眠りを始めていた。
(……参ったなぁ)
シオウとは他の団員達と同様、夜は冷えないよう身を寄せ合って眠っている。だから自然とシオウも距離感を学んだのだろうが、それは生きる術であり、こんなに無防備でいていいわけがない。
「シオウ、起きなさい」
「ん、んー……」
「隊長。たまにはいいでしょう、シオウだって疲れてるんですよ」
「……アルタイル」
苦労の多い旅路だ。
野営に必要な設備も寝床もなく、毎夜毎夜、冷たくて硬い地べたの上で眠るのだ。
訓練など受けたことなどないシオウの体が、疲れ休みたがるのは当たり前だ。
「彼を、どこぞの脳筋達と一緒にしては気の毒です。それに…、貴方も昨日は遅くまで起きていたでしょう?」
「やっぱり聞いていたのか」
星々の前で、シオウは自分の無力さを嘆いて泣いた。
そこに思うところは全員があったのだ。
「悪いが、あと少しだけ… 構わないか?」
「他の仲間も疲れています。長めの休憩も悪くないでしょう」
イーリエが動けない今、副隊長はアルタイルだ。
その存在が全員の疲労状態を気にかける以上、強くは言えない。
(んー…、なんか…、もぞもぞする…)
分からない言葉の羅列。
まるで海外ドラマを観ているようだった。
どちらの声も穏やかで、シオウを起こさない控えめな声量。
"あたたかい、心地いい、もっと寝たい…"
いいんだ。きっと…BGMの一つなんだ。
体は楽な姿勢を求め、シオウは崩れるようにゼアロルドの膝に頭を乗せて、ぷぅぷぅと呑気に眠る。
「「…………」」
「まぁ森は抜けたんだ、また俺かミンデが運んでやるよ」
そして…… 静かに、 "誰の膝の上でシオウが一番寝られるのか選手権"が開催されそうになったのを、
ゼアロルド以上に怒ったイーリエが黙らせた。という事件を、シオウだけが知らないのだった。
(騎士という職業病故に、庇護欲を煽られると"俺が守る!"てなってしまう人達)
252
お気に入りに追加
358
あなたにおすすめの小説
召喚勇者の餌として転生させられました
猫野美羽
ファンタジー
学生時代最後のゴールデンウィークを楽しむため、伊達冬馬(21)は高校生の従弟たち三人とキャンプ場へ向かっていた。
途中の山道で唐突に眩い光に包まれ、運転していた車が制御を失い、そのまま崖の下に転落して、冬馬は死んでしまう。
だが、魂のみの存在となった冬馬は異世界に転生させられることに。
「俺が死んだのはアイツらを勇者召喚した結果の巻き添えだった?」
しかも、冬馬の死を知った従弟や従妹たちが立腹し、勇者として働くことを拒否しているらしい。
「勇者を働かせるための餌として、俺を異世界に転生させるだと? ふざけんな!」
異世界の事情を聞き出して、あまりの不穏さと不便な生活状況を知り、ごねる冬馬に異世界の創造神は様々なスキルや特典を与えてくれた。
日本と同程度は難しいが、努力すれば快適に暮らせるだけのスキルを貰う。
「召喚魔法? いや、これネット通販だろ」
発動条件の等価交換は、大森林の素材をポイントに換えて異世界から物を召喚するーーいや、だからコレはネット通販!
日本製の便利な品物を通販で購入するため、冬馬はせっせと採取や狩猟に励む。
便利な魔法やスキルを駆使して、大森林と呼ばれる魔境暮らしを送ることになった冬馬がゆるいサバイバルありのスローライフを楽しむ、異世界転生ファンタジー。
※カクヨムにも掲載中です
おっぱいみるく~乳首からミルクが出るようになっちゃった~
多崎リクト
BL
徹也(てつや)と潮(うしお)はラブラブの恋人同士。乳首好きの徹也。気持ちいいことに弱い潮。
ある日、潮の乳首からミルクが出るようになってしまって……!
タイトル通りとっても頭の悪い話です。頭を空っぽにして読んでね!
Twitterで連載したものをたまったら加筆修正してます。
他、ムーンライトノベルズ様と自サイトにも掲載中。
不遇な孤児でβと診断されたけどαの美形騎士と運命の恋に落ちる
あさ田ぱん
BL
ノアはオランレリア王国に何にも恵まれず生まれた。ノアの両親はエヴラール辺境伯家から金を持ち逃げし、ノアを捨てた。残されたノアは両親の悪行を理由に蔑まれながらも、懸命に修道院で働きながら少しずつ借金を返済をしている。ノアは毎週、教会の礼拝にやってくる名門・騎士家の嫡男で美しく心優しいローレン・エドガーに一目惚れしていたが、十四歳で行われた第二性の検査でノアはβと診断されローレンはαと診断される。αのローレンとβのノアでは番になれないと知りながらもノアはローレンを好きになってしまう。同じ日にΩと診断されたエヴラール辺境伯家のマリクは、両親揃ってαと言うこともありΩという事実に苦しんでいた。癇癪を起こしたマリクを止めたローレンとノアをマリクは怒って修道院に閉じこめるが、それがきっかけで共同生活をするローレンとノアの仲は深まっていく。でも、マリクも態度とは裏腹にローレンが好きなようで、マリクとローレンは婚約するとの噂が持ち上がる…。
※美形で強い騎士攻め×不憫で健気な平凡受け
※R-18は※でお知らせします。
※7/11改題(旧タイトル:麗しのアルファと持たざる男の運命の恋)
【完結】苦しく身を焦がす思いの果て
猫石
恋愛
アルフレッド王太子殿下の正妃として3年。
私達は政略結婚という垣根を越え、仲睦まじく暮らしてきたつもりだった。
しかし彼は王太子であるがため、側妃が迎え入れられることになった。
愛しているのは私だけ。
そう言ってくださる殿下の愛を疑ったことはない。
けれど、私の心は……。
★作者の息抜き作品です。
★ゆる・ふわ設定ですので気楽にお読みください。
☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。
☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!)
☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。
★小説家になろう様にも公開しています。
(仮)攫われて異世界
エウラ
BL
僕は何もかもがイヤになって夜の海に一人佇んでいた。
今夜は満月。
『ここではないどこかへ行きたいな』
そう呟いたとき、不意に押し寄せた波に足を取られて真っ暗な海に引きずり込まれた。
死を感じたが不思議と怖くはなかった。
『このまま、生まれ変わって誰も自分を知らない世界で生きてみたい』
そう思いながらゆらりゆらり。
そして気が付くと、そこは海辺ではなく鬱蒼と木々の生い茂った深い森の中の湖の畔。
唐突に、何の使命も意味もなく異世界転移してしまった僕は、誰一人知り合いのいない、しがらみのないこの世界で第二の人生を生きていくことになる。
※突発的に書くのでどのくらいで終わるのか未定です。たぶん短いです。
魔法あり、近代科学っぽいモノも存在します。
いろんな種族がいて、男女とも存在し異種婚姻や同性同士の婚姻も普通。同性同士の場合は魔法薬で子供が出来ます。諸々は本文で説明予定。
※R回はだいぶ後の予定です。もしかしたら短編じゃ終わらないかも。
ヘタレ淫魔は変態小説家に偏愛される
須藤うどん
BL
精神年齢が幼児で、かつ自分は不出来だというコンプレックスの塊のためすぐいじける淫魔のリケは、小学生男子にすら勝てない。
寝ぐらにしていた公園で纏っていたボロきれを悪ガキたちにめくられ、もっとエロいパンツを履けと紐パン着用を強要されたのち、恐怖にえぐえぐ泣きじゃくるみっともない姿に萎えられて捨て置かれ、へたりこんで泣き続けているところを、優男風の三十路のお兄さん・簪 苑生(かんざし そのお)に優しくされたリケは苑生の雄としての優秀さを淫魔の本能で嗅ぎつけ、ぐちょぐちょに濡れてしまい……?
騎士は愛を束ね、運命のオメガへと跪く
夕凪
BL
サーリーク王国郊外の村で暮らすエミールは、盗賊団に襲われた際にオメガ性が顕現し、ヒートを起こしてしまう。
オメガの匂いに煽られた男たちに体を奪われそうになったとき、狼のように凛々しいひとりの騎士が駆け付けてきた。
騎士の名は、クラウス。サーリーク王国の第二王子であり、騎士団の小隊長でもあるクラウスに保護されたエミールは、そのまま王城へと連れて来られるが……。
クラウスとともに過ごすことを選んだエミールは、やがて王城内で湧き起こる陰謀の渦に巻き込まれてゆく。
『溺愛アルファの完璧なる巣作り』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/504363362/26677390)スピンオフ。
騎士に全霊で愛されるオメガの物語。
(スピンオフにはなりますが、完全に独立した話ですので前作を未読でも問題ありません)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる