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1章 脇役は砂糖と塩と共に
うちの神子に触らないでもらえます?
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あっという間すぎて何が起こったのか…。
出入り口のドアが木っ端微塵になった瞬間、俺を床に押さえつけていた二人組が"なにか"の強い衝撃を受けたかのように吹っ飛んだ。
えぇーと… そのまま強く壁に打ち付けられてピクリとも動かないけど、たぶん気絶!!
そして、俺の目の前には……
「遅くなって申し訳ございません、シオウ様」
「―――――っ」
俺の体は一人の騎士の背中に護られていた。
頭から鎧を被っているから顔も表情も分からないけど、カッコよすぎて惚れちゃいそうだ。
「……その声…ゼ…、あっ」
「はい。ゼアロンです」
名前を言う前に返事をして、怪我をした俺の頬をそっと撫でてくれた。
ゼアロンさんだ、ホンモノの!……でも、なんでここに??
俺が質問するより先に、ゼアロンさんは颯爽とマントを脱ぐと俺の上半身を隠すように煽ってくれた。
「シオウ、”待機”」
「はい…!」
もちろん従うけどさ、ゼアロンさんの雰囲気がいつもと全然違う。
紳士的だけど即座に向けた背中からはゼアロンさんが放つ、ビリビリとした重い空気が伝わってきて… 。
「っ、なんで騎士が此処に!?」
「おいおい!いきなし相手を斬りつけるとか、騎士道に反するんじゃねぇのか??」
「!?」
音と騒ぎを聞きつけたのか、他の部屋にいたゴロツキ達まで集まってきたと慌てるシオウ。
しかし、いくら取り囲まれようともアジトに乗り込んできた騎士に焦りなどあるものか。
「お前達は既に大罪人だ。騎士道に従う理由がない」
ーーーごくり。と、氷のように冷たい声にシオウまで息を吞む。
そもそもゼアロルドは相手を斬りなどしてはいない。シオウの姿を確認した瞬間、抜きかけた剣を鞘に戻したのだ。
そして喰らわせた拳の一撃。
魔法もなにも使ってはいない。男達はゼアロルドに一発殴られ吹っ飛んだだけだった。
軟弱だ、鍛錬が足りていないと第二騎士所属の者ならば口を揃えて呆れただろうが、今は弱すぎることも彼らが犯した罪に含めよう。
「もう返り血一滴すら、シオウ様の御身に触れることはない」
――――バキッ!ドガッ!
(ぜ、ゼアロンさん…お、怒ってる…?)
勿論俺にじゃない。ずっと言ってた言葉の意味すら分かんなかったけど… すごく怖いんだ。
けど、同時にゼアロンさんの登場ですっかり落ち着く俺がいたのも事実だ。
この人の強さは十分知っていた。みんなから隊長と慕われるだけあって、道中現れたモンスター?魔物?化け物、それらを一人で相手に出来る実力者なのだ。
だから、ただの人間相手ならば魔法も剣も必要ない。
心配せずともゼアロンさんは、ちゃんと手加減している。
素早い身のこなしと容赦のない拳と足技の所作一つで、ゴロツキとの力の差は歴然としていて、
(……騎士って、なんだっけ…?)
ゼアロンさんVSゴロツキ共による肉弾戦はあっという間に幕を下ろした。
そして、アジトから逃げ出した何人かは外で待機していた騎士達により捕縛されていた。
さらに俺には思わぬ再会があった。
「…!ロインさん、アデルさん!!」
「シオウ!!」
「みんなっ、よかった!会えてよかった!!」
――――嬉しすぎて涙でちゃう!
ゼアロンさんに抱き抱えられたままなのは、恥ずかしいけど。さっきまでの恐怖なんてもうどこにもない。
駆け寄ってくれたロインさんとアデルさんとの再会を喜んでいた。
「あれ?でも、なんでここに…??」
そんな疑問もすぐ解消した。
アデルさんの隣に、あの少年がいたんだ。
「君は―――!」
「お兄ちゃん…、あの、」
「よかった!ちゃんと逃げれたんだね」
良かった無事に逃げ切れたんだ!それに、助けを求めて通報までしてくれたのか!?やっぱりいい子だった!!
わーい、わーい、と喜ぶのだけど… 誰一人笑顔じゃない。
とたん子供は大声で泣き出すし、せっかく再会した皆んなは笑ってすらない。
俺には何がなんなのかさっぱり分からなかった。
そして…… お城に戻ってきたのはいいが、連れていかれそうになったのはあの客間だった。
「いーーーやーーーだーーー!!!!」
すべてを思い出した俺は、予定通りイヤイヤ期に突入する。
だってそれがなにより一番嫌でしょうがないんだ!!
またあんな所で過ごしてたら病気になる!頭がおかしくなる!!
それに今ここで我慢すると、もう泣き落としどころがなくなってしまう。
全員の困惑した顔とか、自分の年齢とか気にしてる場合ではない。
「ゼアロンさん達と一緒じゃないと無理!!」
完全拒否状態のシオウに全員が困惑した。
ゼアロンと呼んでしがみつき離さない、さらに通じない言葉でも怒りと不満を顕にして他の騎士達の名前を呼んでいる。
”シオウは私たちの顔を見たくないのでは?”
そんなのはとんだ杞憂だった。
今のシオウの姿を見てもなお、それを考える者は誰もいなかった。
「やはりシオウ様は、我々が預からなければならない様子ですね」
でなければまた城を抜け出してしまうに違いない。
こうして無事、第二騎士団にシオウの身柄は無事預けられることとなった。
あっという間すぎて何が起こったのか…。
出入り口のドアが木っ端微塵になった瞬間、俺を床に押さえつけていた二人組が"なにか"の強い衝撃を受けたかのように吹っ飛んだ。
えぇーと… そのまま強く壁に打ち付けられてピクリとも動かないけど、たぶん気絶!!
そして、俺の目の前には……
「遅くなって申し訳ございません、シオウ様」
「―――――っ」
俺の体は一人の騎士の背中に護られていた。
頭から鎧を被っているから顔も表情も分からないけど、カッコよすぎて惚れちゃいそうだ。
「……その声…ゼ…、あっ」
「はい。ゼアロンです」
名前を言う前に返事をして、怪我をした俺の頬をそっと撫でてくれた。
ゼアロンさんだ、ホンモノの!……でも、なんでここに??
俺が質問するより先に、ゼアロンさんは颯爽とマントを脱ぐと俺の上半身を隠すように煽ってくれた。
「シオウ、”待機”」
「はい…!」
もちろん従うけどさ、ゼアロンさんの雰囲気がいつもと全然違う。
紳士的だけど即座に向けた背中からはゼアロンさんが放つ、ビリビリとした重い空気が伝わってきて… 。
「っ、なんで騎士が此処に!?」
「おいおい!いきなし相手を斬りつけるとか、騎士道に反するんじゃねぇのか??」
「!?」
音と騒ぎを聞きつけたのか、他の部屋にいたゴロツキ達まで集まってきたと慌てるシオウ。
しかし、いくら取り囲まれようともアジトに乗り込んできた騎士に焦りなどあるものか。
「お前達は既に大罪人だ。騎士道に従う理由がない」
ーーーごくり。と、氷のように冷たい声にシオウまで息を吞む。
そもそもゼアロルドは相手を斬りなどしてはいない。シオウの姿を確認した瞬間、抜きかけた剣を鞘に戻したのだ。
そして喰らわせた拳の一撃。
魔法もなにも使ってはいない。男達はゼアロルドに一発殴られ吹っ飛んだだけだった。
軟弱だ、鍛錬が足りていないと第二騎士所属の者ならば口を揃えて呆れただろうが、今は弱すぎることも彼らが犯した罪に含めよう。
「もう返り血一滴すら、シオウ様の御身に触れることはない」
――――バキッ!ドガッ!
(ぜ、ゼアロンさん…お、怒ってる…?)
勿論俺にじゃない。ずっと言ってた言葉の意味すら分かんなかったけど… すごく怖いんだ。
けど、同時にゼアロンさんの登場ですっかり落ち着く俺がいたのも事実だ。
この人の強さは十分知っていた。みんなから隊長と慕われるだけあって、道中現れたモンスター?魔物?化け物、それらを一人で相手に出来る実力者なのだ。
だから、ただの人間相手ならば魔法も剣も必要ない。
心配せずともゼアロンさんは、ちゃんと手加減している。
素早い身のこなしと容赦のない拳と足技の所作一つで、ゴロツキとの力の差は歴然としていて、
(……騎士って、なんだっけ…?)
ゼアロンさんVSゴロツキ共による肉弾戦はあっという間に幕を下ろした。
そして、アジトから逃げ出した何人かは外で待機していた騎士達により捕縛されていた。
さらに俺には思わぬ再会があった。
「…!ロインさん、アデルさん!!」
「シオウ!!」
「みんなっ、よかった!会えてよかった!!」
――――嬉しすぎて涙でちゃう!
ゼアロンさんに抱き抱えられたままなのは、恥ずかしいけど。さっきまでの恐怖なんてもうどこにもない。
駆け寄ってくれたロインさんとアデルさんとの再会を喜んでいた。
「あれ?でも、なんでここに…??」
そんな疑問もすぐ解消した。
アデルさんの隣に、あの少年がいたんだ。
「君は―――!」
「お兄ちゃん…、あの、」
「よかった!ちゃんと逃げれたんだね」
良かった無事に逃げ切れたんだ!それに、助けを求めて通報までしてくれたのか!?やっぱりいい子だった!!
わーい、わーい、と喜ぶのだけど… 誰一人笑顔じゃない。
とたん子供は大声で泣き出すし、せっかく再会した皆んなは笑ってすらない。
俺には何がなんなのかさっぱり分からなかった。
そして…… お城に戻ってきたのはいいが、連れていかれそうになったのはあの客間だった。
「いーーーやーーーだーーー!!!!」
すべてを思い出した俺は、予定通りイヤイヤ期に突入する。
だってそれがなにより一番嫌でしょうがないんだ!!
またあんな所で過ごしてたら病気になる!頭がおかしくなる!!
それに今ここで我慢すると、もう泣き落としどころがなくなってしまう。
全員の困惑した顔とか、自分の年齢とか気にしてる場合ではない。
「ゼアロンさん達と一緒じゃないと無理!!」
完全拒否状態のシオウに全員が困惑した。
ゼアロンと呼んでしがみつき離さない、さらに通じない言葉でも怒りと不満を顕にして他の騎士達の名前を呼んでいる。
”シオウは私たちの顔を見たくないのでは?”
そんなのはとんだ杞憂だった。
今のシオウの姿を見てもなお、それを考える者は誰もいなかった。
「やはりシオウ様は、我々が預からなければならない様子ですね」
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