巻き込まれた脇役は砂糖と塩と共に

田舎

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1章 脇役は砂糖と塩と共に

ーーとある日の小ネターー

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これは騎士一行が死の森を抜け、国を目指して森と山を歩き回っていた時の話。




「ひぐぅ!?」

突然あげたシオウの叫び声に全員が足を止めた。
なんだ?どうした??と近くにいた仲間達が声をかければ、どうやら足元にいた手のひらサイズより大きな蜘蛛に驚いて叫んでしまったらしい。森の中にはよくいるモリグモだ、デカいだけで毒のない生き物だとアルタイルが教えている。

ーーーー良かった、問題はなさそうだ。
再び一行は足を進めたが、しばらくして先頭を歩く彼らの隊長であるゼアロルドはピタリと足を止めた。


「休憩にしよう」
「あ?早くないか?」
「ダメだ、彼の足音が乱れている。無理な歩みは良くない」
「あー…そうゆうことか」

名前を出せばきっと自分の為であると気にしてしまう、不思議とそういうのには敏感な子だ。
休憩だと即腰を下ろすメンバーとは違い、ぶるぶると青い顔をして立って震えているシオウに近づく影。その黒い瞳がゼアロルドを見上げるよりも先に、ふわりとシオウの体を抱き上げた。


「へ!?あ、え、ちょっと…!?」
「アデルちょっと手伝って欲しい」
「え、あ…、はい!」

鎧を脱ぎ一息つこうとしていたアデルを連れ、メンバーから少し離れた場所にシオウを連れて行った。



「う、うわぁ~…」
「これは、酷い……」

岩の上にシオウを座らすとゆっくりと靴を脱がせた。しかしそれだけでも刺すような痛みが走るのか、ぴくんと震え、シオウは呻き声をあげた。

「っ、ゔ、…っ」

シオウの白い足は痛々しくできたマメが破け出血していただけでなく、いくつもの靴擦れのせいで足の裏も側面も爛れたように真っ赤に腫れ上がっていた。
おそらくもう片方の足も同じ状態なのだろう。我慢すればいい問題ではない、大の大人でも悲鳴をあげる痛みだろうに……。


「どうしてこんなに悪化するまで隠した?」
「ご、ごめんなさい…」
「隊長。シオウは痛みの訴え方を知らないだけです、責めては可哀想です」
「分かっているが、ここまで酷いと水だけでなく回復薬も滲みるぞ。本人のためにも良くない」
「……ごめんなさい」

本当に何処まで通じて何処まで反省しているのやら…
今にも泣き出しそうな表情は痛みによるものなのか、それとも隠そうとしていたのがバレて叱られ凹んでいるのか。

「アデル、頼む」
「はい」




「ひ!?くぅ、あ゛、……ッ」

消毒のため靴を脱がせた後はアデルの水魔法で丁寧に傷口を洗い流すが、走る激痛に我慢できないらしい。
ビクンッと無意識に足を跳ね除けようとしてしまう。

「……すみません隊長。シオウの隣に座ってもらっていいですか?」
「あぁシオウ、大丈夫。ほら、私に掴まって」
「っ、…っ、」

参ったな…。
普段から弱音を吐く事なく大人よりも気丈に振る舞う少年が、申し訳なさそうに弱々しく鎧にしがみつき痛みに耐えているのだ。
「まだ?まだ終わらないの…?」と、目尻に薄らと涙を浮かべて顔を紅潮させ怖がっている。
男色や少年趣味のない仲間達でも、これは… 見えないよう隠して正解だった。

「……はは。そうしていると隊長が聖女様に見えますね」
「冗談はよしてくれ。終わったなら薬は変わろう、硬い鎧より君の方がいいだろ」
(え、まだこれ続くの…?)

痛い痛い…、チラッと隊長さんを見ればニッコリと回復薬を手にとっている。

この人、薬を塗り込む気だ……、マジか…ッ


「これに懲りたら隠し事はしないように」
「や、…いやだ!無理無理、水だけで痛いのにッ、痛゛、ひぃ~~~~~~ッッ!!!」


さすがに泣いた…
そして隊長さんは案外ドSなのかもしれないとシオウは思った。


(この後回復薬がよく効いて歩けるようになるし、靴は加工が得意なミンデさんが修繕してくれたのでだいぶマシになったそうな)
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