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1章 脇役は砂糖と塩と共に
隊長だって陰で活躍する
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??敵サイド
簡単な仕事内容だった。
手練れ揃いと名高いシュヴァルの王都騎士だが得た情報によれば、連中を率いているのは成り上がり者の青二才で、簡単に大転移魔法の発動を許したどころか、不死の王龍の逆鱗に触れての半壊状態だと聞いた。
死の森から抜け出した隣国の、それも手負の騎士共に止め刺す依頼。
さらに、”転移魔法”だ。アレは何人もの魔法使いを必要とする上に一度使用すれば魔力の消耗も激しく、術者の回復に時間がかかる。
しかも聖女様降臨の儀に続いての今回だ。いつもの任務に比べれば高位の魔法使いが少ない状況。
この依頼を引き受けた後は、うまく他の魔法使い共を出し抜き異教徒の首を持ち帰るだけで多額の報酬が手に入る、まさに絶好の好機。
益々うまい仕事だと、男は目を細め標的を探した。
そして、真夜中の森でのんびりと寛ぐ一行を見つけた時
”化け物”が、本性を現した。
「はっ、はっ…、っ」
ピタッと喉に張り付いている、剣の刃。
向けられた殺意に一切の言葉が出ず、男の口からは浅く短い息が漏れるだけだった。
(い、一体 何が起こった……?)
ぶるぶると地面に尻餅をつき悔しさに震える男を―――、男が十年以上も費やした攻撃魔法を一瞬でねじ伏せた敵国の騎士は、静かにも冷たい眼で見下ろしていた。
「そろそろ、勘弁してくれないか?」
騎士は冷たく言う。
心底うんざりなのだと
「刺客なんて死の森を抜けてから今日で三度目だ。いい加減、こっちが警戒しないとでも思っていたのか」
白銀の鎧と、青き不死鳥の尾羽―――。
目の前の異教徒はあろうことか、研鑽を積んだ魔法使いに対して、ふぅっとため息を漏らしながら言い放った。
「ふ、――――、ッ」
ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな…っ!!!
聞いていた話とまるで違うではないか!
この異教徒、まさか能力を隠していたのか!?
「……このっ、卑怯者めがっ!!」
男がギリっと歯を食いしばったのが魔法発動の合図だった。
杖も詠唱も必要としない新たな魔法技術、この術式で何人もの敵を屠ってきた。
"――――掻き消せ " 、
騎士の背後を狙った光の閃光が数発、打ち放たれた。
間違いなく、放たれたのだ…
「なぜ、だ…………、」
――――気づかれるはずがない、完璧な死角の攻撃のはずだった。
それを、あろうことかこの男は…………、錆びた剣一つで、襲い掛かる全ての魔法を振り払った。
さらに息一つ乱すことのない動きと、相手に逃げる隙も与えない。
再び剣先を、今度は這いつくばる魔法使いの鼻先へと向けていた。
「卑怯者とは心外だ。手負の騎士と舐めてかかっただけでなく、俺の安い挑発に腹を立ててしまった。それが、お前が敗北の原因だろ?」
「な、ぜだ…………、?」
………なぜだ… 状況は聞いていた、正しく把握していた。
どうして貴様は、そこまでの受け流しと身の動きが取れる?
「き、貴様の肋骨は既に三本折れていると……」
「それを聞いたのも、三人目だ」
我らは少数でも、実力を認められた精鋭部隊。
こんな男一人に負けるはずが――――……。
「ま、まさか……、 ”アレ”が… 生きて、貴様らといるのか!?」
「…………」
しかし、それはあり得ない!!
アレは、こ奴らよりも先に、死の森に君臨する不死の王龍の供物に贈られたはずだ。
世界にとって不要の異物。
神の啓示も祝福も受けなかったくせに、加護を得た双黒の異端児。
しかし、この場では勝者である騎士が質問に答えるはずなどない。
「はは、………!まさか私一人が相手とは思ってないだろう!?私以外の暗殺者は、今ごろ貴様の仲間たちの元だ!隊長の貴様がここで足止めを喰らった今、他の連中の首は―――……」
その冷たい眼に、魔法使いはゾッとした
目の前にいる男は、仲間が危険な目に遭っていると聞いても一切動揺していない…。
むしろ、”それはもう既に済んだことだ”、と言いたげに口端を上げていた。
「化け物が、……っ」
それを聞いたのも三度目だ、と意識が落ちる瞬間 聞こえた。
簡単な仕事内容だった。
手練れ揃いと名高いシュヴァルの王都騎士だが得た情報によれば、連中を率いているのは成り上がり者の青二才で、簡単に大転移魔法の発動を許したどころか、不死の王龍の逆鱗に触れての半壊状態だと聞いた。
死の森から抜け出した隣国の、それも手負の騎士共に止め刺す依頼。
さらに、”転移魔法”だ。アレは何人もの魔法使いを必要とする上に一度使用すれば魔力の消耗も激しく、術者の回復に時間がかかる。
しかも聖女様降臨の儀に続いての今回だ。いつもの任務に比べれば高位の魔法使いが少ない状況。
この依頼を引き受けた後は、うまく他の魔法使い共を出し抜き異教徒の首を持ち帰るだけで多額の報酬が手に入る、まさに絶好の好機。
益々うまい仕事だと、男は目を細め標的を探した。
そして、真夜中の森でのんびりと寛ぐ一行を見つけた時
”化け物”が、本性を現した。
「はっ、はっ…、っ」
ピタッと喉に張り付いている、剣の刃。
向けられた殺意に一切の言葉が出ず、男の口からは浅く短い息が漏れるだけだった。
(い、一体 何が起こった……?)
ぶるぶると地面に尻餅をつき悔しさに震える男を―――、男が十年以上も費やした攻撃魔法を一瞬でねじ伏せた敵国の騎士は、静かにも冷たい眼で見下ろしていた。
「そろそろ、勘弁してくれないか?」
騎士は冷たく言う。
心底うんざりなのだと
「刺客なんて死の森を抜けてから今日で三度目だ。いい加減、こっちが警戒しないとでも思っていたのか」
白銀の鎧と、青き不死鳥の尾羽―――。
目の前の異教徒はあろうことか、研鑽を積んだ魔法使いに対して、ふぅっとため息を漏らしながら言い放った。
「ふ、――――、ッ」
ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな…っ!!!
聞いていた話とまるで違うではないか!
この異教徒、まさか能力を隠していたのか!?
「……このっ、卑怯者めがっ!!」
男がギリっと歯を食いしばったのが魔法発動の合図だった。
杖も詠唱も必要としない新たな魔法技術、この術式で何人もの敵を屠ってきた。
"――――掻き消せ " 、
騎士の背後を狙った光の閃光が数発、打ち放たれた。
間違いなく、放たれたのだ…
「なぜ、だ…………、」
――――気づかれるはずがない、完璧な死角の攻撃のはずだった。
それを、あろうことかこの男は…………、錆びた剣一つで、襲い掛かる全ての魔法を振り払った。
さらに息一つ乱すことのない動きと、相手に逃げる隙も与えない。
再び剣先を、今度は這いつくばる魔法使いの鼻先へと向けていた。
「卑怯者とは心外だ。手負の騎士と舐めてかかっただけでなく、俺の安い挑発に腹を立ててしまった。それが、お前が敗北の原因だろ?」
「な、ぜだ…………、?」
………なぜだ… 状況は聞いていた、正しく把握していた。
どうして貴様は、そこまでの受け流しと身の動きが取れる?
「き、貴様の肋骨は既に三本折れていると……」
「それを聞いたのも、三人目だ」
我らは少数でも、実力を認められた精鋭部隊。
こんな男一人に負けるはずが――――……。
「ま、まさか……、 ”アレ”が… 生きて、貴様らといるのか!?」
「…………」
しかし、それはあり得ない!!
アレは、こ奴らよりも先に、死の森に君臨する不死の王龍の供物に贈られたはずだ。
世界にとって不要の異物。
神の啓示も祝福も受けなかったくせに、加護を得た双黒の異端児。
しかし、この場では勝者である騎士が質問に答えるはずなどない。
「はは、………!まさか私一人が相手とは思ってないだろう!?私以外の暗殺者は、今ごろ貴様の仲間たちの元だ!隊長の貴様がここで足止めを喰らった今、他の連中の首は―――……」
その冷たい眼に、魔法使いはゾッとした
目の前にいる男は、仲間が危険な目に遭っていると聞いても一切動揺していない…。
むしろ、”それはもう既に済んだことだ”、と言いたげに口端を上げていた。
「化け物が、……っ」
それを聞いたのも三度目だ、と意識が落ちる瞬間 聞こえた。
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