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(一章)小ネタ
小ネタ集③④
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③死の森を抜けた夜
残しても保存ができない。シオウの作ったスープはリーイエだけではなく全員が夜食として食べた。
そして、
ぐぉー・ずぉー…………
(本当に緊張感がないなぁ)
満たされた腹と疲れも合間ってか交代まで起きる気配がない。
そんな仲間たちを𠮟咤すべき立場なのだが、あと一時間は耐えよう。
まだまだ平穏とは程遠くとも今夜くらいはいいのだと、ゼアロルドも心底安心していた。
そんなとき、静かで柔らかい視線を感じ取った。
(?……… シオウ?)
起きた少年は寝ぼけているのか、なぜ隊長は寝ないのかと不思議がってるのだ。けどすぐゼアロルドが自分達を見守ってくれているのだと理解した。
「……」
驚いたのはそれでも、シオウは起きようとしたせいだ
頑張って起きなければと体に命令するように、シオウの指先が微かに動いたのを見逃さなかった。
疲れて、眠いだろうに…
「シオウ。おやすみ」
「………、……」
はっきりとシオウの耳には届いたらしい。
再び両目を瞑ったシオウだったが、おやすみ以外の挨拶に呟いた言葉があった。
――――マリア。それは人の名前のように聞こえた。
君にも家族か大切な人がいるのだろう、当たり前だ。
(まだ間に合う、彼をマクミランに返す事は出来る…)
しかし、絵空事だ。ここが国境付近でも、半壊寸前の状態で危険な路を選ぶことはできない。
いくら回復薬があるとはいえ選択と行動一つ間違えれば、仲間が死んでしまう。
馬も土竜もない。死の森を抜けても疲弊と体力の消耗は続く。
選ぶべき道は決まっていた。
「天の座につき、私に剣闘の加護を与えてくれた尊い御方よ。どうか彼を守って欲しい」
俺には、いずれ相応の罰が下る。それも受け入れよう。
今は、この少年に心地よく眠り夢を降らせて欲しい。
「――――…、無粋だな」
ゼアロルドはシオウに背を向け、ただ何もない草原の果てを見据える。
騎士の祈りを邪魔する、いやらしい遠視魔法の類のせい。息をひそめてこちらを窺う者がいた。そっと鞘に手を当て、季節とは正反対の風で仲間の頬を撫でる………、それが敵襲の合図だった。
「西に20、東15…」
「………、……だ、」
「イーリエ。君の加護、水辺じゃ最強だな。東に気配が大きいのがいる、俺はそっちを叩きに行く」
「いいけど隊長よぉ、肋骨イッてんだろ?平気なのか?」
「悪いがゴルディ。加減が出来なかった時の口添えは頼む」
冗談だ。
それに、彼らがシオウを知っているのならば、少しだけ聞くことがある。
※この後、捕らえた三下はシオウのことを言わなかったが、気を失う前に「どこまでも役立たずが…」と言ったせいでゼアロルドはシオウのことだと悟った。
④覚悟(妹サイド)
「シオウ様は隣国の騎士共に連れていかれました」
「ーーーっ、」
――――それは、噓だ。
噓だと分かっていた。お兄ちゃんがいなくなったタイミング、彼らの噓のへばりついた笑顔。
その笑顔は知っている、無力で無知な子供を利用するのに馴れた大人の顔だ。
「…………」
「聖女様?」
城に戻りたいと言うのは簡単だ。
(だけどこの遠征は―――、どうなるの?)
お金もかかっている、信じてついて来てくれた人達もいる。
(お兄ちゃん、ごめんなさい)
”焦るな、大丈夫だ”。
お兄ちゃんは、何度も何度も私を諭して気付かせようとしてくれていた。
だけど………私の、目の前には瘴気があるの…………、このままにしたら町に被害が出るって…。
お兄ちゃんは自分だって精一杯で必死なのに、誰よりも優しくて、自分の弱さを隠そうとする……。そこに私は甘えていた。
私にどうあるべきか願う姿勢を、見せてくれていた。
「………瘴気はそこなのですよね。詳しくは、後でお願いします」
この国は、どこまでも・誰もが、噓吐きで薄っぺらい。
隣国があるのなら、それがここよりいい国という保証はない。ないけど……。
『兄ちゃんが守るから』。
唐揚げだって忘れてない
――――――お兄ちゃんは、噓を吐かない。絶対戻ってくる。
なら、私は… 私が成すべきことをしてお兄ちゃんを理不尽な世界から救ってみせる。
残しても保存ができない。シオウの作ったスープはリーイエだけではなく全員が夜食として食べた。
そして、
ぐぉー・ずぉー…………
(本当に緊張感がないなぁ)
満たされた腹と疲れも合間ってか交代まで起きる気配がない。
そんな仲間たちを𠮟咤すべき立場なのだが、あと一時間は耐えよう。
まだまだ平穏とは程遠くとも今夜くらいはいいのだと、ゼアロルドも心底安心していた。
そんなとき、静かで柔らかい視線を感じ取った。
(?……… シオウ?)
起きた少年は寝ぼけているのか、なぜ隊長は寝ないのかと不思議がってるのだ。けどすぐゼアロルドが自分達を見守ってくれているのだと理解した。
「……」
驚いたのはそれでも、シオウは起きようとしたせいだ
頑張って起きなければと体に命令するように、シオウの指先が微かに動いたのを見逃さなかった。
疲れて、眠いだろうに…
「シオウ。おやすみ」
「………、……」
はっきりとシオウの耳には届いたらしい。
再び両目を瞑ったシオウだったが、おやすみ以外の挨拶に呟いた言葉があった。
――――マリア。それは人の名前のように聞こえた。
君にも家族か大切な人がいるのだろう、当たり前だ。
(まだ間に合う、彼をマクミランに返す事は出来る…)
しかし、絵空事だ。ここが国境付近でも、半壊寸前の状態で危険な路を選ぶことはできない。
いくら回復薬があるとはいえ選択と行動一つ間違えれば、仲間が死んでしまう。
馬も土竜もない。死の森を抜けても疲弊と体力の消耗は続く。
選ぶべき道は決まっていた。
「天の座につき、私に剣闘の加護を与えてくれた尊い御方よ。どうか彼を守って欲しい」
俺には、いずれ相応の罰が下る。それも受け入れよう。
今は、この少年に心地よく眠り夢を降らせて欲しい。
「――――…、無粋だな」
ゼアロルドはシオウに背を向け、ただ何もない草原の果てを見据える。
騎士の祈りを邪魔する、いやらしい遠視魔法の類のせい。息をひそめてこちらを窺う者がいた。そっと鞘に手を当て、季節とは正反対の風で仲間の頬を撫でる………、それが敵襲の合図だった。
「西に20、東15…」
「………、……だ、」
「イーリエ。君の加護、水辺じゃ最強だな。東に気配が大きいのがいる、俺はそっちを叩きに行く」
「いいけど隊長よぉ、肋骨イッてんだろ?平気なのか?」
「悪いがゴルディ。加減が出来なかった時の口添えは頼む」
冗談だ。
それに、彼らがシオウを知っているのならば、少しだけ聞くことがある。
※この後、捕らえた三下はシオウのことを言わなかったが、気を失う前に「どこまでも役立たずが…」と言ったせいでゼアロルドはシオウのことだと悟った。
④覚悟(妹サイド)
「シオウ様は隣国の騎士共に連れていかれました」
「ーーーっ、」
――――それは、噓だ。
噓だと分かっていた。お兄ちゃんがいなくなったタイミング、彼らの噓のへばりついた笑顔。
その笑顔は知っている、無力で無知な子供を利用するのに馴れた大人の顔だ。
「…………」
「聖女様?」
城に戻りたいと言うのは簡単だ。
(だけどこの遠征は―――、どうなるの?)
お金もかかっている、信じてついて来てくれた人達もいる。
(お兄ちゃん、ごめんなさい)
”焦るな、大丈夫だ”。
お兄ちゃんは、何度も何度も私を諭して気付かせようとしてくれていた。
だけど………私の、目の前には瘴気があるの…………、このままにしたら町に被害が出るって…。
お兄ちゃんは自分だって精一杯で必死なのに、誰よりも優しくて、自分の弱さを隠そうとする……。そこに私は甘えていた。
私にどうあるべきか願う姿勢を、見せてくれていた。
「………瘴気はそこなのですよね。詳しくは、後でお願いします」
この国は、どこまでも・誰もが、噓吐きで薄っぺらい。
隣国があるのなら、それがここよりいい国という保証はない。ないけど……。
『兄ちゃんが守るから』。
唐揚げだって忘れてない
――――――お兄ちゃんは、噓を吐かない。絶対戻ってくる。
なら、私は… 私が成すべきことをしてお兄ちゃんを理不尽な世界から救ってみせる。
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