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1章 脇役は砂糖と塩と共に
脇役には旅をさせろ
しおりを挟む久しぶりに沢山食べて熟睡して迎えた翌朝だが、困ったことになったぞ…。
多分だが俺の存在を、ここに置いて行くか連れて行くかどうかで騎士達が揉めているんだ。
(まぁ、そうなるよね…)
俺の目線で考えても納得がいく。
いくら回復薬が手持ちにあるとはいえ怪我人の仲間も多いんだ、森を抜けた騎士達は一刻も早く城に戻りたい。いつまでも一般人の面倒を見てる余裕も暇もない。
(それに俺は城にも教会にも行きたくない…。でも土地勘のない森に置き去りにされてみろ、肉食の野生動物に襲われて死ぬぞ)
例えばの話、俺がか弱い女の子だったなら騎士道精神で彼らも見捨てないかもしれないが… 俺は、誰も知らない日本語しか話せない成人男性なのだ。
会話が出来ない、意味も通じない、あんな危険な森にいた事の説明すらできない。
いくら皆んなが俺の加護(砂糖と塩)に恩を感じてくれてたってギリギリアウトのラインだ。
「あ、あの…俺は……」
「駄目だ、シオウは―――」
『見捨てない。』
隊長さんは”シオウは最後まで連れていく”と、あの森でしてくれたのと同じ判断してくれたらしい。
分からない言葉なのに、そう聞こえてしまうくらい俺を庇ってくれる真っ直ぐな声に、息が詰まりそうだった。
(隊長さんっ……)
嬉しいけど、………ダメだ。
昨日の水浴びでは羨ましいなぁ~くらいに眺めてたけど、皆んな普段から鍛えているのが分かる身体だった。
ただでさえ体格も骨格も違う。訓練で鍛えられた貴方達と、何もかもが平均でしかない俺の体力を比べるなんて…。
苦しむイーリエさんや他のメンバーの為にも、俺が邪魔になることだけは避けたい。
だから、
「あ、あの……待ってください、ちょっと見て欲しいんだ!」
俺は一生懸命、地面に木の枝で絵を描いた。
城と司教の被っていた帽子(王冠の特徴を知らなかった)、それは彼らに正しく伝わったが、全員が深く頷いたところで大きくバツ印を描いた。
その次に沢山の家を描いた。"城までは行きたくない。街に行きたい"、と必死に絵で訴えたんだ。
「シオウ」
「俺は、たぶん…」
うまく伝わらないだろうけど同行させてもらいたい理由として、俺は人の絵を描いて”コレは俺だ”と指を差したあと、その上に大きくバツ印を描いた。
"――――王都に戻れば確実に俺は殺される…!"
「お願いします、俺は町に行きたい!一番近い村でいいんだ、お願いします!」
深く頭を下げてお願いをすれば、隊長さんに名前を呼ばれた。
「シオウ、XXX」
落ち着きのある声だけど、俺の意図が伝わったのかは分からない。緊張した面持ちでゆっくり頭をあげて前を見る。
「え……」
素顔を晒した隊長さんは俺と目が合うなり、静かに片膝を立て、俺に向かってひざまずく格好をとった。
それは映画でしかみたことのない、まるで忠誠を誓う騎士のような姿で、俺は大いに戸惑った。
「XXX、XXX――――」
「お、大げさですよ!そんな、指切りげんまんくらいでいいのに!」
すっごく分かりやすいポーズだけど、大袈裟すぎだ!
ほら、早く皆さんも何か言ってくださいよ!と助けを求めて周りを見たのに、他の騎士達も何故だかシン…ッと時を止めてから、”シオウ!一緒に!”と歓迎してくれたのだ。
あ、あれれ…??
みんな、俺を置いてくかって話で揉めてたんじゃないの??
「シオウ。行こう」
「ありがと、ありがとうございます…!」
ま、まぁ勘違いはあるみたいだけど、無事に目的は達成できた!
今は同行が許されたことを喜ぶところだ…!
(真里亜、大丈夫だ…兄ちゃんは絶対、戻るからな!)
こうして調味料体質の俺は、この異世界をもう少し旅する事になった。
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