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そこそこ古い賃貸だけどいつかパートナーと…、って夢見て防音から浴室機能までしっかりしたDom・Sub向け物件を選んどいて正解だった。
風呂場の片隅にいる、まるで魂が抜けたようにボーッとしているリンは始終無言だけど眼球だけは俺の存在を追う。こんな様子でもまだDomの存在に反応するなら、サブドロップとしては軽傷ってのが哀しい。
(倒れてるの見た時は心臓が止まるかと思ったぞ)
抱きしめたリンの体は血の気を失ったように冷たくて、とにかく冷やすのは不味いと一緒に風呂に入ることにした。
「さて、首輪だな。鈴が濡れるの良くないよな」
「あ、鈴の部分、すぐ外せる…」
ならよかった。とは言わないけど、安心して鈴を取り外した。
クソッタレなDomに悪いなんて微塵も思っちゃいない。これは予想だけど、恐らくリンのパートナーは男だ。
明るい場所で裸体を見て驚いた。顔は無傷だけど胴体には殴られて出来た痣と、手首には縛られたような赤い痕がしっかり残っている。
もちろん、暴力的なDomもいれば殴られたいSubがいるのは分かってるけど、プレイ後のアフターケアがなきゃSubはメンタルや体調を崩す。
(リンはきっと十分にケアされていなかった)
命令するだけして放置するDomなんてただのDV野郎だ、Domの風上にも置けない。
「次はリンの番だな。体を洗うけど触られたくない場所とかある?」
すべりの良さそうな肌。まつ毛は長くて唇はぷるぷるしている。
悲しげな瞳の色は頂けないが、リンのパーツの整った顔と華奢な体だ。俺の庇護欲に触れたように人によっちゃ加虐心を刺激してしまうんだろうな。
「とくに、ない…です」
「分かった、傷には触れないようにするけど痛かった言えよ」
俺の声に反応してゆっくり視線を上げるリンの顔立ちが幼く見えたせいか、本当に二十歳を超えて大人なのだろうか疑ってしまった。
え。実は未成年だったらどうしよう…。俺捕まるの??
「……熊狩さん?」
「え、あっ…あぁ、悪い。熊狩でも勝利でもいいし、敬語もいらないよ」
小動物みたいでカワイイ。
ごくりと、……いやいや!!だから唾を飲むな、馬鹿!!
すまない。でも俺だってDomなんだ。いくら庇護欲が強くたってその… ある程度の加虐心も持っている。
己の煩悩を振り払うように、しっかりとボディーソープを泡立てた。
「防音はしっかりしてんだ、いっぱい声だしていいからな?」
「ひゃっ、ちょ…!?なんで手、っ…!?」
「ん、嫌か?人の手で洗ってもらうのって気持ちよくない?」
「だめ、くすぐった、い…、っ、ふふっ」
「いやなら、セーフワードだろ?」
あらら、口を噤んじゃったよ。
ほんとは嫌じゃないのかぁ、素直じゃない奴だ。
「っ、…ふ、んぅ……」
随分と敏感な体だ。エロいなぁと思う反面、俺が来なかったら今頃は他のDomに一夜を捧げてたんだよな~~??とか、考えるだけでチリッと嫉妬に火がつく。
(………これはケアだ。ケアで許される範囲なら)
リンが、知らないもの
与えられなかったものを、俺が与えやりたい。
「ひゃあ!?」
響き渡った可愛い声。
風呂場の椅子にリンを座らせると俺は跪きベロっと、リンの足裏に舌を這わせたのだ。
「やだ、まっ…、汚い……、んひゃぁ!?」
「大丈夫だってしっかり洗ったし、もう泥なんてついてないぞ?」
「や、あっ!?…んっ、くすぐったい!!」
リンは嫌がるけど、明らかに恥ずかしがってるだけでセーフワードを使おうとしない。
「これが俺流のケアだ」
「あ、うっ…、でも…」
「リン?恥ずかしがらずに、ちゃんと我慢だ」
優しく躾けるような声で出す強制力の低い命令。
この程度なら首を振るだけで拒否できるだろうにリンはしない。むしろ、あんなに引っ込めようとしていた足を差し出すように伸ばしてきた。
「いい子だ。そのまま力を抜いてろ」
「ひん、っ…ふ、ン……っ」
足の指付け根はなんの味もしないが、チラッとリンを見れば顔を真っ赤にして耐えている。
もっと、可愛がってやりたい…
「ひ、っ、‥‥あ、あぅっ…」
すーっと撫でるくらいの力加減で太腿をなぞると、ヒクヒクと震えながら甘い吐息を漏らす。
(敏感で従順だな…。これもパートナーの躾か?)
「・…ん、ぁ、あっ」
カリッと足の指を甘噛みすれば可愛く鳴いてくれる。
笑える。サブドロップしかけてるSubをケアしてるつもりが、いつの間にか俺のほうが癒されているなんて。
「くまがりっ、…も、だめ…っ」
「かわいい、いい子だなぁ」
「っ、耳元でいうなっ!‥‥くすぐった、い…」
「んー、そんなに怒るなよ?ちゃんと素直に言えたら、ご褒美のキスしてやるぞ?」
こんなになるまで放置した男の何がいいのか分からんけど、少しでも俺との戯れで上書きできたらいいのにと願って使うのは優しい命令だけ。
そしてリンは
「‥っ、もち、いい…、きもちよくて、ぞわぞわする、それにっ…も、勃ってる…、っ」
勃起しているのは分かってたけど自分から足を開いてpresentしてくれるなんて、そんなにキス好きなのか?
それともDomに甘やかされるのが大好きなのかもしれない。
(それならいいのになぁ)
俺は尽くしたい、甘やかしたいDomだ。
つま先から頭のてっぺんまで可愛がって、焦らして、人前で露出する気なんて二度と起きなくなるまで調教してやりたい。
俺がこのSubを、リンを支配して――――
くわっと口を大きく開いたその時、
「た、たすけてっ!!」
セーフワードを聞いた瞬間、ぴたっと動きが止まった。
あ…、まずい…
調子に乗りすぎたのか、それとも無意識に傷に触ってしまったのかもしれない…
「え、あ‥‥…、ごめん!」
パッと手を離したのにリンは、ぷくっと頬を膨らませて怒っていた。
(~~~~んん゛、かわいいから反則!それはダメだろ!)
セーフワードを使わせてしまうなんて本当に申し訳ないが、すんごいお預けを食らってる気分。
「ほんと悪かった。どっか痛かったか?」
「っ、キス…、は?」
「は?」
「ちゃんと、言ったのに…っ」
―――― どこにいらっしゃいますか、この天使を世に生み出した聖母様は????
土下座して感謝の言葉を伝えたい。
リン、と優しく自分でもどっから出したのか分からない甘い声で、
柔らかな頬にそっと唇で触れた。
「よくできました」
「………それ、だけ?」
「唇はパートナーのモンだろ?」
安心しろ、君にパートナーを裏切りをさせる真似なんかしない
だから、そんな風に物足りないって顔をしないでほしい。俺が自分の欲求に従えるんなら、今すぐその首輪を引きちぎって窓の外にぶん投げてやりたいよ。
「そこ以外ならいくらでもしてやる」
「ちょ、んっ、しつこいっ…」
ちゅっちゅっと繰り返すようにキスしまくる。痕なんて残したりしない
――――ざまぁみろ。クソDom野郎
お前は、こんなかわいいSubの顔を見たことあるか?
蕩けて、興奮して、はやく次のコマンドをくれってこんなに喜んでいるぞ?
「リン、俺にして欲しいことは?今度は無視しないから教えてくれ」
「あ…、触って、いっぱい、触ってほめて欲しいっ…、勃ってるのもつらい…」
「俺に優しくされるの、好きか?」
「うん、好き…、うっ、あ 、ひゃっ」
「いい子だ」
そっと先端に触れただけでびゅっと白い液を出した。
あぁ睨まなくたって分かってるよ、いきなり触るなんて…!って怒ってるんだろ?
「大丈夫だ、いくらでもイかせてやるからな」
「ん、っ、あ、あっ…」
くまがり…、きもちいい…
縋りつくように甘く囁く唇に、キスしたかった。
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