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逃げたいの番外編〜

キスの話

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番外編、キスの話





先生は、キスが好きだ。

朝起きた時には必ず俺の頬か額に触れるだけのキスしてそれ以降は「行ってきます」に「ただいま」のタイミング、あとは一緒にテレビを観てる時とか、ふとした瞬間にも…。

「もしかして、したいのか?」
「はは、違うよ。君が可愛くってつい」
「っ、可愛くなんかない」

ボンッと赤くなる顔をそらしても感じる視線にじわじわと汗をかく。
性的行為を求める為のキスなら黙って受け入れられたけど、こんなのは恥ずかしいし、慣れないし、なにより俺の心臓に良くない。
たまらず"先生のスキンシップは過剰だ!"と不満を出してみても、
「αだって番いと長時間離れるのはストレスだ」
「唯君を愛おしいって思うほど溢れて止まらない、どうしたらいい?」
と大真面目に返されてしまう。


まるで恋人相手みたいに…。




「セックスしないのにキスする理由て、なに?」
「………は?」
「!っ、き、昨日が…キスの日だってオンライン友達が盛り上がってたんだ。キスだけで満たされるって…、俺はまだ分かんなくて…」

ーーーあ、危な!!
下手をすれば先生以外の相手とヤッてきたのがバレるところだった。

「唯くんはキスが苦手?」
「嫌いじゃないけど…、その…俺の顔、近くで見られるのは嫌だ…」

ジロジロと向けられる視線も、はぁはぁと素肌にあたる吐息も。過去を思い出すだけで吐き気がする。

(でも、こんなのは……よくない…先生は…っ)

先生には… もっと、て思ってしまう
軽い触れ合いのつもりでも、ちょっと舌が触れただけで期待してしまう淫乱な体になってしまう。


「ヘンに焦らすより、抱いてくれ」
「いいよ。その代わり……泣いても知らないよ」





 * * *



泣いたりしないと豪語したのは四十分くらい前の俺だ。




「ひ、っ…ん、としや、さっ…」
「喉が"欲求"。次は手だね、まずは手の甲に」

"知ってるかい?キスする場所によって意味が変わるんだって"
丁寧に服を脱がされたあと、それを一緒に勉強しようと髪の毛、額、瞼…次は手と… あらゆるところにキスをされている最中だった。

「……っ、」
「あと上半身で触ってない所はどこ?」
「なの、知らないっ」

どれも刺激の強いものじゃないのに…、前戯にしてはタチが悪過ぎだ!
それに前が、苦しい…っ、あとちょっとの刺激が欲しいと疼いてる。

「分かった。そしたら次は」

ぞわっと視線でわかってしまう、下半身はダメだ…!

「……っ、もういい!分かった、こんなの知らなくていいッ、キスも嫌いじゃ……あぁ、っ!?」

べろっと差し出された舌が触れたのは、臍。そしていくら甘い愛撫でも昂ってた体には刺激が強過ぎた。
軽くとはいえ発情もしてない体でイッてしまうなんて…。

「大丈夫、もっと気持ちよくなっていいよ。キスでも気持ちよくなれるって分かったら、君は……」
「や、だめ!そこは…っ、嫌だ!」

ごめんなさい、そこは嫌だっ
そんな所に貴方の唇が触れたら羞恥心で死ぬ。やめて、許して…っ…!
けど暴れたらこの人を蹴ってしまう、怪我をさせてしまうかとしれない。

それに……、


「やだぁ、いやっ、いや…だ!! なんでだよッ、口にしてないじゃん!!」
「前もって君を泣かすかもって言ったし、唇は最後だよ」
「じッッ悪!!俊哉さんの意地悪!!嫌いだっ」
「唯く、っ!」

お願いだと俊哉さんの腕を掴んで、ぐっと自ら唇を重ねた。
ちゅ、ちゅう…、ぬちゅッと水っぽく激しく絡め合う音。もっと奥の熱いところが欲しい…と、がっついてしまう行為。
無理やりミルクをねだる子猫のように乱暴かもしれない、それでも

「ふっ、ン…んんっ、…っ」

すっと俊哉さんの手が俺の頭を支えるように固定してくれて、満たされる幸福と安定感。
それは口が離れると寂しくて、「もっと…」と無意識に強請り求めてしまう。

もっと、して欲しい…



「……ッそ、完敗だっ。煽り方をどこで覚えてくるんだ」
「…?」

ぐしゃぐしゃと髪を掻きむしってから豪快に上を脱ぐ俊哉さん。

よくわからないけど、俺は先生に勝ってしまったらしい。












翌朝。




「……なんだか、機嫌がいいね」
「うん?そんなことないよ?」

お互い発情なんてしてないのに先生があんなに俺に無我夢中になってくれたのが嬉しかった、とても。
ーーーそれに完敗させたという謎の優越感がある。
まだベッドの上だけど、ふんふんと俺はとても機嫌が良かった。

「朝ご飯はパンがいい?それとも米?」
「………それより、まだゆっくり」
「先生はまだ寝てろよ。俺はランニング行くし」
「唯」
「あ、そうだ!スーパーで珍しいフルーツトマトを買ったんだ。先生は苦手だろうけど、トマトいっぱいの野菜パスタも」

浮かれに浮かれていた。
纏わりつく先生の腕を引き剥がしてベッドから降りた俺は洗面台に行って… わぁぁあああああああ!?!?と真っ赤になっていた首筋に叫び声を上げた。






あとがき


あの後唯君は布団にくるまって一日中ぶすくれてます笑
どうしても書きたかったキスの日のネタです

キスが好きなのは唯くん(無自覚)な方も、という話
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みんなの感想(9件)

one
2024.09.04 one

完結おめでとう御座います、お疲れ様でした^_^
ゆいくん、先生にちゃんと会えて良かったです。
エピローグも楽しみにお待ちしております。

田舎
2024.09.06 田舎

one様
完結まで読んでくださりありがとうございます!
お返事が遅くなってしまい大変申し訳ございません。
ありがとうございます、なんとかハッピーエンドです。
エピローグも頑張りますので宜しくお願いします(^^)感想ありがとうございました!

解除
one
2024.08.20 one

わー、次はやっと現実で会えるのかな??
2話も更新ありがとうございます!

次回も楽しみにお待ちしてます(*´ω`*)

田舎
2024.08.20 田舎

one様
感想ありがとうございます!
はい、次はやっとの再会回です!芦屋は「なんでΩってのは見る目がねぇのか…」と思って心底呆れてます(失笑)
惹かれあったのが運の尽きなのか…

更新頑張ります!
ここまで読んでくださりありがとうございます🙌

解除
one
2024.07.31 one

全然先が読めなくて、唯くん先生といつ会えるのかしらって毎回どきどきしながら見てます。
唯くんの自信のなさというか、自己肯定感の低さが本当に好きです。
更新ありがとうございます!

田舎
2024.08.01 田舎

one様
ここまで読んでいただきありがとうございます!
唯くんは自分が愛されることにも愛することにも兎に角否定的です。(先生といた頃はまだマシだったんですが)
変に拗れてて今は会えない二人ですが、こここらどんどん動かしていけたらなぁと思っております。
感想ありがとうございました🙌

解除

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