31 / 31
逃げたいの番外編〜
キスの話
しおりを挟む
番外編、キスの話
先生は、キスが好きだ。
朝起きた時には必ず俺の頬か額に触れるだけのキスしてそれ以降は「行ってきます」に「ただいま」のタイミング、あとは一緒にテレビを観てる時とか、ふとした瞬間にも…。
「もしかして、したいのか?」
「はは、違うよ。君が可愛くってつい」
「っ、可愛くなんかない」
ボンッと赤くなる顔をそらしても感じる視線にじわじわと汗をかく。
性的行為を求める為のキスなら黙って受け入れられたけど、こんなのは恥ずかしいし、慣れないし、なにより俺の心臓に良くない。
たまらず"先生のスキンシップは過剰だ!"と不満を出してみても、
「αだって番いと長時間離れるのはストレスだ」
「唯君を愛おしいって思うほど溢れて止まらない、どうしたらいい?」
と大真面目に返されてしまう。
まるで恋人相手みたいに…。
「セックスしないのにキスする理由て、なに?」
「………は?」
「!っ、き、昨日が…キスの日だってオンライン友達が盛り上がってたんだ。キスだけで満たされるって…、俺はまだ分かんなくて…」
ーーーあ、危な!!
下手をすれば先生以外の相手とヤッてきたのがバレるところだった。
「唯くんはキスが苦手?」
「嫌いじゃないけど…、その…俺の顔、近くで見られるのは嫌だ…」
ジロジロと向けられる視線も、はぁはぁと素肌にあたる吐息も。過去を思い出すだけで吐き気がする。
(でも、こんなのは……よくない…先生は…っ)
先生には… もっと、て思ってしまう
軽い触れ合いのつもりでも、ちょっと舌が触れただけで期待してしまう淫乱な体になってしまう。
「ヘンに焦らすより、抱いてくれ」
「いいよ。その代わり……泣いても知らないよ」
* * *
泣いたりしないと豪語したのは四十分くらい前の俺だ。
「ひ、っ…ん、としや、さっ…」
「喉が"欲求"。次は手だね、まずは手の甲に」
"知ってるかい?キスする場所によって意味が変わるんだって"
丁寧に服を脱がされたあと、それを一緒に勉強しようと髪の毛、額、瞼…次は手と… あらゆるところにキスをされている最中だった。
「……っ、」
「あと上半身で触ってない所はどこ?」
「なの、知らないっ」
どれも刺激の強いものじゃないのに…、前戯にしてはタチが悪過ぎだ!
それに前が、苦しい…っ、あとちょっとの刺激が欲しいと疼いてる。
「分かった。そしたら次は」
ぞわっと視線でわかってしまう、下半身はダメだ…!
「……っ、もういい!分かった、こんなの知らなくていいッ、キスも嫌いじゃ……あぁ、っ!?」
べろっと差し出された舌が触れたのは、臍。そしていくら甘い愛撫でも昂ってた体には刺激が強過ぎた。
軽くとはいえ発情もしてない体でイッてしまうなんて…。
「大丈夫、もっと気持ちよくなっていいよ。キスでも気持ちよくなれるって分かったら、君は……」
「や、だめ!そこは…っ、嫌だ!」
ごめんなさい、そこは嫌だっ
そんな所に貴方の唇が触れたら羞恥心で死ぬ。やめて、許して…っ…!
けど暴れたらこの人を蹴ってしまう、怪我をさせてしまうかとしれない。
それに……、
「やだぁ、いやっ、いや…だ!! なんでだよッ、口にしてないじゃん!!」
「前もって君を泣かすかもって言ったし、唇は最後だよ」
「じッッ悪!!俊哉さんの意地悪!!嫌いだっ」
「唯く、っ!」
お願いだと俊哉さんの腕を掴んで、ぐっと自ら唇を重ねた。
ちゅ、ちゅう…、ぬちゅッと水っぽく激しく絡め合う音。もっと奥の熱いところが欲しい…と、がっついてしまう行為。
無理やりミルクをねだる子猫のように乱暴かもしれない、それでも
「ふっ、ン…んんっ、…っ」
すっと俊哉さんの手が俺の頭を支えるように固定してくれて、満たされる幸福と安定感。
それは口が離れると寂しくて、「もっと…」と無意識に強請り求めてしまう。
もっと、して欲しい…
「……ッそ、完敗だっ。煽り方をどこで覚えてくるんだ」
「…?」
ぐしゃぐしゃと髪を掻きむしってから豪快に上を脱ぐ俊哉さん。
よくわからないけど、俺は先生に勝ってしまったらしい。
翌朝。
「……なんだか、機嫌がいいね」
「うん?そんなことないよ?」
お互い発情なんてしてないのに先生があんなに俺に無我夢中になってくれたのが嬉しかった、とても。
ーーーそれに完敗させたという謎の優越感がある。
まだベッドの上だけど、ふんふんと俺はとても機嫌が良かった。
「朝ご飯はパンがいい?それとも米?」
「………それより、まだゆっくり」
「先生はまだ寝てろよ。俺はランニング行くし」
「唯」
「あ、そうだ!スーパーで珍しいフルーツトマトを買ったんだ。先生は苦手だろうけど、トマトいっぱいの野菜パスタも」
浮かれに浮かれていた。
纏わりつく先生の腕を引き剥がしてベッドから降りた俺は洗面台に行って… わぁぁあああああああ!?!?と真っ赤になっていた首筋に叫び声を上げた。
あとがき
あの後唯君は布団にくるまって一日中ぶすくれてます笑
どうしても書きたかったキスの日のネタです
キスが好きなのは唯くん(無自覚)な方も、という話
先生は、キスが好きだ。
朝起きた時には必ず俺の頬か額に触れるだけのキスしてそれ以降は「行ってきます」に「ただいま」のタイミング、あとは一緒にテレビを観てる時とか、ふとした瞬間にも…。
「もしかして、したいのか?」
「はは、違うよ。君が可愛くってつい」
「っ、可愛くなんかない」
ボンッと赤くなる顔をそらしても感じる視線にじわじわと汗をかく。
性的行為を求める為のキスなら黙って受け入れられたけど、こんなのは恥ずかしいし、慣れないし、なにより俺の心臓に良くない。
たまらず"先生のスキンシップは過剰だ!"と不満を出してみても、
「αだって番いと長時間離れるのはストレスだ」
「唯君を愛おしいって思うほど溢れて止まらない、どうしたらいい?」
と大真面目に返されてしまう。
まるで恋人相手みたいに…。
「セックスしないのにキスする理由て、なに?」
「………は?」
「!っ、き、昨日が…キスの日だってオンライン友達が盛り上がってたんだ。キスだけで満たされるって…、俺はまだ分かんなくて…」
ーーーあ、危な!!
下手をすれば先生以外の相手とヤッてきたのがバレるところだった。
「唯くんはキスが苦手?」
「嫌いじゃないけど…、その…俺の顔、近くで見られるのは嫌だ…」
ジロジロと向けられる視線も、はぁはぁと素肌にあたる吐息も。過去を思い出すだけで吐き気がする。
(でも、こんなのは……よくない…先生は…っ)
先生には… もっと、て思ってしまう
軽い触れ合いのつもりでも、ちょっと舌が触れただけで期待してしまう淫乱な体になってしまう。
「ヘンに焦らすより、抱いてくれ」
「いいよ。その代わり……泣いても知らないよ」
* * *
泣いたりしないと豪語したのは四十分くらい前の俺だ。
「ひ、っ…ん、としや、さっ…」
「喉が"欲求"。次は手だね、まずは手の甲に」
"知ってるかい?キスする場所によって意味が変わるんだって"
丁寧に服を脱がされたあと、それを一緒に勉強しようと髪の毛、額、瞼…次は手と… あらゆるところにキスをされている最中だった。
「……っ、」
「あと上半身で触ってない所はどこ?」
「なの、知らないっ」
どれも刺激の強いものじゃないのに…、前戯にしてはタチが悪過ぎだ!
それに前が、苦しい…っ、あとちょっとの刺激が欲しいと疼いてる。
「分かった。そしたら次は」
ぞわっと視線でわかってしまう、下半身はダメだ…!
「……っ、もういい!分かった、こんなの知らなくていいッ、キスも嫌いじゃ……あぁ、っ!?」
べろっと差し出された舌が触れたのは、臍。そしていくら甘い愛撫でも昂ってた体には刺激が強過ぎた。
軽くとはいえ発情もしてない体でイッてしまうなんて…。
「大丈夫、もっと気持ちよくなっていいよ。キスでも気持ちよくなれるって分かったら、君は……」
「や、だめ!そこは…っ、嫌だ!」
ごめんなさい、そこは嫌だっ
そんな所に貴方の唇が触れたら羞恥心で死ぬ。やめて、許して…っ…!
けど暴れたらこの人を蹴ってしまう、怪我をさせてしまうかとしれない。
それに……、
「やだぁ、いやっ、いや…だ!! なんでだよッ、口にしてないじゃん!!」
「前もって君を泣かすかもって言ったし、唇は最後だよ」
「じッッ悪!!俊哉さんの意地悪!!嫌いだっ」
「唯く、っ!」
お願いだと俊哉さんの腕を掴んで、ぐっと自ら唇を重ねた。
ちゅ、ちゅう…、ぬちゅッと水っぽく激しく絡め合う音。もっと奥の熱いところが欲しい…と、がっついてしまう行為。
無理やりミルクをねだる子猫のように乱暴かもしれない、それでも
「ふっ、ン…んんっ、…っ」
すっと俊哉さんの手が俺の頭を支えるように固定してくれて、満たされる幸福と安定感。
それは口が離れると寂しくて、「もっと…」と無意識に強請り求めてしまう。
もっと、して欲しい…
「……ッそ、完敗だっ。煽り方をどこで覚えてくるんだ」
「…?」
ぐしゃぐしゃと髪を掻きむしってから豪快に上を脱ぐ俊哉さん。
よくわからないけど、俺は先生に勝ってしまったらしい。
翌朝。
「……なんだか、機嫌がいいね」
「うん?そんなことないよ?」
お互い発情なんてしてないのに先生があんなに俺に無我夢中になってくれたのが嬉しかった、とても。
ーーーそれに完敗させたという謎の優越感がある。
まだベッドの上だけど、ふんふんと俺はとても機嫌が良かった。
「朝ご飯はパンがいい?それとも米?」
「………それより、まだゆっくり」
「先生はまだ寝てろよ。俺はランニング行くし」
「唯」
「あ、そうだ!スーパーで珍しいフルーツトマトを買ったんだ。先生は苦手だろうけど、トマトいっぱいの野菜パスタも」
浮かれに浮かれていた。
纏わりつく先生の腕を引き剥がしてベッドから降りた俺は洗面台に行って… わぁぁあああああああ!?!?と真っ赤になっていた首筋に叫び声を上げた。
あとがき
あの後唯君は布団にくるまって一日中ぶすくれてます笑
どうしても書きたかったキスの日のネタです
キスが好きなのは唯くん(無自覚)な方も、という話
115
お気に入りに追加
1,133
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(9件)
あなたにおすすめの小説
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
からっぽを満たせ
ゆきうさぎ
BL
両親を失ってから、叔父に引き取られていた柳要は、邪魔者として虐げられていた。
そんな要は大学に入るタイミングを機に叔父の家から出て一人暮らしを始めることで虐げられる日々から逃れることに成功する。
しかし、長く叔父一族から非人間的扱いを受けていたことで感情や感覚が鈍り、ただただ、生きるだけの日々を送る要……。
そんな時、バイト先のオーナーの友人、風間幸久に出会いーー
エリートアルファの旦那様は孤独なオメガを手放さない
小鳥遊ゆう
BL
両親を亡くした楓を施設から救ってくれたのは大企業の御曹司・桔梗だった。
出会った時からいつまでも優しい桔梗の事を好きになってしまった楓だが報われない恋だと諦めている。
「せめて僕がαだったら……Ωだったら……。もう少しあなたに近づけたでしょうか」
「使用人としてでいいからここに居たい……」
楓の十八の誕生日の夜、前から体調の悪かった楓の部屋を桔梗が訪れるとそこには発情(ヒート)を起こした楓の姿が。
「やはり君は、私の運命だ」そう呟く桔梗。
スパダリ御曹司αの桔梗×βからΩに変わってしまった天涯孤独の楓が紡ぐ身分差恋愛です。
処女姫Ωと帝の初夜
切羽未依
BL
αの皇子を産むため、男なのに姫として後宮に入れられたΩのぼく。
七年も経っても、未だに帝に番われず、未通(おとめ=処女)のままだった。
幼なじみでもある帝と仲は良かったが、Ωとして求められないことに、ぼくは不安と悲しみを抱えていた・・・
『紫式部~実は、歴史上の人物がΩだった件』の紫式部の就職先・藤原彰子も実はΩで、男の子だった!?というオメガバースな歴史ファンタジー。
歴史や古文が苦手でも、だいじょうぶ。ふりがな満載・カッコ書きの説明大量。
フツーの日本語で書いています。
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
完結おめでとう御座います、お疲れ様でした^_^
ゆいくん、先生にちゃんと会えて良かったです。
エピローグも楽しみにお待ちしております。
one様
完結まで読んでくださりありがとうございます!
お返事が遅くなってしまい大変申し訳ございません。
ありがとうございます、なんとかハッピーエンドです。
エピローグも頑張りますので宜しくお願いします(^^)感想ありがとうございました!
わー、次はやっと現実で会えるのかな??
2話も更新ありがとうございます!
次回も楽しみにお待ちしてます(*´ω`*)
one様
感想ありがとうございます!
はい、次はやっとの再会回です!芦屋は「なんでΩってのは見る目がねぇのか…」と思って心底呆れてます(失笑)
惹かれあったのが運の尽きなのか…
更新頑張ります!
ここまで読んでくださりありがとうございます🙌
全然先が読めなくて、唯くん先生といつ会えるのかしらって毎回どきどきしながら見てます。
唯くんの自信のなさというか、自己肯定感の低さが本当に好きです。
更新ありがとうございます!
one様
ここまで読んでいただきありがとうございます!
唯くんは自分が愛されることにも愛することにも兎に角否定的です。(先生といた頃はまだマシだったんですが)
変に拗れてて今は会えない二人ですが、こここらどんどん動かしていけたらなぁと思っております。
感想ありがとうございました🙌