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逃げたいの番外編〜

番外編 VS 高級食材

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番外編 VS 高級食材



先生が、「今日は親戚からいいもの貰ったよ」と持って帰ってきたのは四角形の発砲シチロール。ほんのりと磯のにおいがする箱の中の食材をみた瞬間、俺は驚いた。

「わっ、牡蠣だ!」

――――それも殻付きときた。
こんな上等なもの俺はTVでしか見たことがない。

「生でも美味しいけど唯君も食べてみる?」
「え、いいの?」
「勿論。下処理するから待ってて」

スーパーで値引き品を見ても手に取れない牡蠣!よく海のミルクって聞くけど本当にそんな味がするのかな?


「す、すごい…」

キラキラした牡蠣が食卓に並ぶだけで、まるで俺の作った料理が料亭でつくられたみたいに豪華に見える。
さぁて!いざ、実食だ。

「………!」
「どう?」
「お、おいしい…」
「ほんと?気に入ってもらえたなら嬉しいよ。久しぶりに食べたけどここまで大粒だと食べ応えがあっていいね」
「うん。先生の親戚にも感謝しないとだな」

先生は笑うけど

(―――どうしよう、苦手だ…)

内心はだらだらと汗をかいていた。
なんてゆうか独特な磯臭さがある。食感も独特で、飲み込むタイミングが分からない…。
だって先生と違って俺はこんな高級食材を食べたことがないんだ、不味いよりも食べ慣れない味に困惑していた。

(せめて熱々の米でごまかして・… いや、でも…そんな食べ方が許されていいのか?)

できるなら茹でたい、火を通してポン酢とか…?あぁけど生で食べれる新鮮な食材にそんなことしちゃダメだ。
欲張って何個でも食べる!と言った自分に激しく後悔していた。


「あのさ、先生…」
「ごめん。やっぱり唯君は苦手な味だった?」
「やっぱりって、バレてた?」
「最初の表情でなんとなくね」
「うっ…、せっかく貰ってきたものなのに…。俺、牡蠣って料理したことないから何にしたらいいのかもわかんねぇし…」

どうしよう… 今後一生食べられるかわかんない高級品なのに…。
それも人の好意だ。美味しく食べてあげられないことへの罪悪感と申し訳なさで凹んでしまう。

「なら、明日は唯君に代わって俺がカキフライでも作ろうかな」
「えっ?先生が…料理すんの?」
「あれ?そんなに心配かい?大丈夫だよ、ちゃんとレシピ通りに作るってば」

君にも好き嫌いがあってもいいじゃないか、ちなみに俺はトマトが嫌いだよ。と先生は俺を慰めてくれた。

「それは流石にウソだろ?一昨日のトマトスパゲッティ、バクバク食っておかわりまでした癖に」
「それは君が作ったものを食べないって選択肢がないからだ。実際、美味しかったよ」
「い、意味わかんねぇよ…」
「俺はそうゆう人間だよ」

笑われると照れ臭くなってなんも言えなくなった。



そして翌日。
先生が有言実行したカキフライの美味しさに感動して、おいしいおいしい!と喜び過ぎた結果
とても気をよくした先生が、ネット通販で色んな店のカキフライを大量に取り寄せてきた。


「も、もういらない…」


一生分のカキフライを食べた俺は本当に牡蠣が嫌いになりそうになった。








end



新野さんは唯君に色んなものを食べさせたいし、唯君が美味しいと喜ぶなら毎日食べてもらいたい。
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