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819. ジェルミラ領進撃11

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ドレルアンが率いる王国軍は、
ジェミロの籠る城を視界に捉える距離まで
進軍すると一旦、停止した。

「これより南方地方最大の拠点であり
難所となるジェルミラ家の居城の攻略に移る。
知を凝らし、勇をもって、攻めよ」

それは、決して大きな声ではなく、側近の者たちだけにしか
ドレルアンの発言は聞えなかっただろう。
しかし、ドレルアンの言葉の終わりと同時に
空を震わせ、大地を揺らすような歓声が沸き起こった。
無論、後方に控える誠一たちも適当に合わせて唱和した。

「ってか俺らとスケードで攻めれば、速攻で落城しそうじゃね。
なあ、アル、そう思うだろう!」
歓声が止むと、恒例のヴェルがぼやきが始まった

「確かにね。まあ、ここなら怪我もせずに
やり過ごせそうだし。いいんじゃないかな。
攻城戦は不測の事態で命を落とすことも多々あるしね」
ヴェルと対照的に戦わなくて良いことを内心喜ぶ誠一だった。

「戦わずして勝つ。これが合戦の極意だよ」
得意げに話す誠一だった。

「アル、それは流石にちょっと違うような気がするわ。
ヴェルが真に受けるから、あんまりにも適当なことは
言わない方がいいわよ」

「まじかシエンナ。ちょっと信じただろう!
アル、適当なことを真面目な顔で言うなよな」

「うーん、敢えて私たちのこの状況を言うなら、
適当に楽して勝利にあやかるってところかな」
シエンナの表現に不満げなヴェルであった。

「あーくそくそ。
この期に及んであいつらに物資を襲うような兵も
友軍もないだろうよ」

誠一はキャロリーヌのほうへ目を向けると
形の良い顎に右手をあてがいながら、
何かを思案しているようだった。

「キャロ、どうしたの?」

「えっ、いや。流石にいくらジェミロが阿呆でも
ここまで無策なものかちょっと気になって。
糧秣を燃やすなり強奪するなら、ここのタイミングが
リスクは高いけど、ベストに思えるなかなって」

誠一もキャロリーヌの言葉につられて、思案した。
確かに全員が全員、ジェミロのように阿呆ではないだろう。
おそらくダンブルからの協力者も籠っていると見るべきであった。
モレロン領の件からすれば、軍を派遣しているよりも
知恵者を派遣している公算が高かいように思えた。

「確かにキャロの言う通りだ。
最後に気を抜いて、兵糧を失うなんて
間抜けなことは避けたいね。
全軍に改めて、気を抜くには早すぎると
みんな伝えて」

誠一はそう言って、シエンナには
周囲への探索魔術の展開とサリナへは
警戒の強化を指示した。
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