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817.ジェルミラ領進撃9
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「クハハハッ。無駄だ、無駄だ。何も知り得ない。
貴様がどういう手管を用いて神を通じて
俺に啓示を下したのか興味あるところだが、
まあいい今回は貴様に情報を提供してやろう」
「貴様、バッシュか」
誠一の声は短く鋭かった。
男は心底可笑しそうだった。
「あんまり笑かすな。コケ脅しは通用せん。まあいい」
一旦、男は言葉を切って、誠一を
下からねめつるように覗き込んだ。
イラっとした誠一は啓示をバッシュに与えようとしたが、
思い留まった。男の会話から微かに誘導されている臭いを
感じ取ったからだった。
「ふん、簡単にはいかないようだな。
まあいい、情報はくれてやる。いずれ借りは返してもらおう。
フォーニエ・モレロンは、ジェミロ・ジェルミラの
籠る城の地下室に幽閉されている。
死んではいないようだが、それ以上は調べようがない。
だがしかし、クククッ戦時のこの最中だ。
美しい娘の末路など、貴様でも想像つくだろう。
これも貴様がモレロン領に攻め込んだ結末の一つだ」
誠一は努めて冷静になる様に試みていた。
しかし、自分の行動・決断によって生じた
数多の悲惨な結末の一つを突きつけられて、心が揺れた。
赤く濁った初老の男の目は誠一の心の内を
見透かしているようだった。
「これは俺様に啓示を強要した貴様への
ささやかな贈り物だ。受け取れ」
初老の男の胸部が膨らみ始めた。
「ぎゃああ。助けてくれ、助けてくれ。
息子夫婦と孫だけは、頼む。助けてくれ。
儂の命だけでどうか済ませてくれぇえええぇぇー」
断末魔の悲鳴を上げると、服が引き千切れ、
胸部が破裂した。
一枚の紙切れが誠一の前に舞い落ちた。
誠一はそれを拾い上げるのが恐ろしかった。
立ち尽くす誠一。だが、誠一は意を決して、紙切れを拾い上げた。
そこには、初老の男、夫婦、そして小さい子供が描かれていた。
どこまでが虚構でどこまでが真実か誠一には
判断する材料がなかった。
全てがバッシュの誠一に対する意趣返しであり
警告かもしれなかった。
紙切れをアイテムボックス(小)に仕舞うと
死体をそのままにふらふらとした足取りで
仲間の元へ戻っていった。
「随分と長かったな。
しかしまあ、あまりに長いと色々と心配になる。
後方とは言え、ここも戦場だ」
「心配をかけてすみません」
誠一は先程の件を伏せたまま、頭を下げた。
「まあ聞くまい。
腹を下して遅くなったという事にしておく。
アルフレート君、君はクランのリーダーだという事を
忘れるなよ。さてと俺は寝るかな、夜警のほうはよろしく」
最後は日常のような挨拶を交わした2人だった。
貴様がどういう手管を用いて神を通じて
俺に啓示を下したのか興味あるところだが、
まあいい今回は貴様に情報を提供してやろう」
「貴様、バッシュか」
誠一の声は短く鋭かった。
男は心底可笑しそうだった。
「あんまり笑かすな。コケ脅しは通用せん。まあいい」
一旦、男は言葉を切って、誠一を
下からねめつるように覗き込んだ。
イラっとした誠一は啓示をバッシュに与えようとしたが、
思い留まった。男の会話から微かに誘導されている臭いを
感じ取ったからだった。
「ふん、簡単にはいかないようだな。
まあいい、情報はくれてやる。いずれ借りは返してもらおう。
フォーニエ・モレロンは、ジェミロ・ジェルミラの
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死んではいないようだが、それ以上は調べようがない。
だがしかし、クククッ戦時のこの最中だ。
美しい娘の末路など、貴様でも想像つくだろう。
これも貴様がモレロン領に攻め込んだ結末の一つだ」
誠一は努めて冷静になる様に試みていた。
しかし、自分の行動・決断によって生じた
数多の悲惨な結末の一つを突きつけられて、心が揺れた。
赤く濁った初老の男の目は誠一の心の内を
見透かしているようだった。
「これは俺様に啓示を強要した貴様への
ささやかな贈り物だ。受け取れ」
初老の男の胸部が膨らみ始めた。
「ぎゃああ。助けてくれ、助けてくれ。
息子夫婦と孫だけは、頼む。助けてくれ。
儂の命だけでどうか済ませてくれぇえええぇぇー」
断末魔の悲鳴を上げると、服が引き千切れ、
胸部が破裂した。
一枚の紙切れが誠一の前に舞い落ちた。
誠一はそれを拾い上げるのが恐ろしかった。
立ち尽くす誠一。だが、誠一は意を決して、紙切れを拾い上げた。
そこには、初老の男、夫婦、そして小さい子供が描かれていた。
どこまでが虚構でどこまでが真実か誠一には
判断する材料がなかった。
全てがバッシュの誠一に対する意趣返しであり
警告かもしれなかった。
紙切れをアイテムボックス(小)に仕舞うと
死体をそのままにふらふらとした足取りで
仲間の元へ戻っていった。
「随分と長かったな。
しかしまあ、あまりに長いと色々と心配になる。
後方とは言え、ここも戦場だ」
「心配をかけてすみません」
誠一は先程の件を伏せたまま、頭を下げた。
「まあ聞くまい。
腹を下して遅くなったという事にしておく。
アルフレート君、君はクランのリーダーだという事を
忘れるなよ。さてと俺は寝るかな、夜警のほうはよろしく」
最後は日常のような挨拶を交わした2人だった。
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