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811. ジェルミラ領進撃3

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「また、輜重の護衛かよ」
ヴェルのぼやきが行軍を開始してから
僅か3時間程度で始まった。

「まー最初の軍務も輜重の護衛だったよね」
めずらしくシエンナが欠伸をしながら、答えた。

「まったくだよな。また、最初に戻ったのかよ。
俺らは、南方の戦で結果出しているのになんだよ、この扱い!」

「まあまあ、ヴェル、落ち着いて。
輜重の護衛も重要な仕事だよ。
腹が減っては、戦はできぬって言うでしょ」
誠一もどことなく緊張感がなかった。
輜重が襲われることはある。
しかも誠一たちはそれを身をもって経験していた。
しかし、ドレルアン侯爵率いる軍の圧倒的な兵力と兵質、
そして高い士気が誠一たちを安心させていた。
そのためか誠一の率いる軍全体が緊張感に欠け、
弛緩しているようであった。それは行軍が開始されて、
数日経っても変わる事はなかった。

ヴェルトゥール王国より派遣された役人と
入れ替えで戻って来たロジェはこの状態を危惧していた。

「だらけ切っているな。
アルフレート君、少しは緊張感を持つべきだろう。
いつ何時、敵だけでなく魔物や野盗が
襲ってくる可能性があるだろう」
わざわざロジェは誠一と二人になるタイミングで話し掛けてきた。
誠一は軍と自身の気の緩みを感じており、返す言葉もなかった。
「分かってはいたようだな。
アルフレート君、君も戦場を既に幾つも経験済みだろう。
ならタイミングを見計らって注意を喚起すべきだな。
俺から言えることは以上だ」

誠一は軽く頭を下げた。
「ありがとうございます」
誠一は相手の言う事に理があれば、
真摯に受け入れられる位には成長していた。

ロジェの助言を有難く受け入れることは出来たが、
実際にはどのようにすべきか良案が浮かばなかった。
ロジェは誠一の雰囲気からそのことに気付いたようだった。

「ふっ、俺やヴェルを使うといい。
ヴェルはあの通りだらけ切っているから
いつ何時、喝を入れても問題ない。
まあ、だがここは俺にしておこう。
昼の適当なタイミングで酒でも喰らっておこうか」

「しかし、それではロジェさんの評判が悪くなってしまいます」

ロジェは高らかに笑った。
「そんなことは気にするなよ。
それよりこうなる前にしっかりとしないとな」

誠一には言うべき言葉なく、改めて頭を下げた。
元の世界に比べて、この世界では、多くの人に助けられている。
そのことを誠一は当然の事と捉えることなく感謝した。

 翌日、誠一はタイミングを計っていた。
ロジェがいつ行動を起こすかとチラチラと見ていた。
そうやって誠一が視線を動かしていると、丁度、サリナが目に入った。

 サリナは複数の兵たちに囲まれていた。
普段から他のメンバーよりサリナは兵士たち話をしているが、
今日は何やら少しサリナの表情が曇っていた。

誠一はサリナの方へ近づいた。

次に起こす行動のことを考えると少し誠一の心臓の鼓動は早くなった。

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