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809. ジェルミラ領進撃1

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千晴と久々に話をした翌日、誠一は、
一つの啓示をバッシュに下した。

『最近、突如として著しく性格や挙動に
変化のあった人物を探せ。
その人物は悪魔付き、狂戦士、悪の使徒、
狂信者か、天啓を受けし者、神の代弁者、
精霊の愛し者、内なる心に目覚めし者、 
神々の寵愛を受けし者となっている可能性がある』

千晴の言ったことの真偽は誠一には
判断のしようがなかった。
本当にエリクサーを入手できたのならば、
一応、手を打っておくのもありだと誠一は
思っていた。
ぐっすりと寝て、冷静に思い返すと、
誠一は千晴の態度や行動にほんの僅かだが
理解を示した。
そもそも凌辱しようとした男の行方が
分からないことで千晴が不安になるのも
分からないではなかった。
世界からその存在が完全に消えてしまい、
どこに潜んでいるのか分からない、
そんな眉唾な話を全面的に信じている方が
頭の螺子が緩んでいるではと疑ってしまう。
千晴の不安を解消するためにほんの僅かだが
誠一は行動をすることにした。

 ヴェルトゥール王国よりドルレアン・ストラッツェールが
率いる軍が南方領域攻略のために投入された。
ドレルアンを総大将、副将には、ストラッツェール家の
嫡子ティモフェイとした軍が誠一たちと合流した。

城門で彼らを誠一たちは迎えた。

「出迎えご苦労。
貴殿らは遊軍として我が軍に組み込まれることが
決定している。以後、我が指示に従って行動するように」

ドレルアンからの話を有難そうに拝聴する誠一だった。
眉目秀麗な誠一が真摯な態度で聞き入る姿に
ドレルアンは大いに満足した。
そしてティモフェイも誠一の態度に大に自尊心を満たした。
「ふん、おまえらが敵対したせいで、
王国よりクラン『戦神に集いし英雄』が離脱した。
その分、励めよ」

「ははっ、そのお言葉、ありがたき幸せ」
より一層、誠一は頭を下げた。
ティモフェイは高笑いをあげて、大いに頷いた。
しかし、ドレルアンは、誠一を胡散臭さ気に
見つめていた。

誠一たちは城をドレルアンの軍に譲り、
城下町の宿に移動した。
クランで雇っていた冒険者たちや
新たに加わった兵士たち全てを収容しきれる程、
宿はなく、城外にテントを構えることとなった。

「ぷぷぷっ、アル。本当に役者だよな。
まったくあのティモフェイの表情ときたら。
笑えるわ。
よくもまあ、心にもないことをいけしゃあしゃあと
話せたもんだよな」
ヴェルがげらげらと笑っていた。
ヴェルすら騙しきれない演技でティモフェイは
騙されたということかと思うと
自然、誠一も笑ってしまった。

「まあ流石にドレルアン侯爵は
騙されなかったようだけどね」
一応、誠一はヴェルに釘を刺すつもりで言っておいた。

「そりゃそうだな。
ドレルアン侯爵まで騙されていたら、
王国の未来はお先真っ暗だぞ」
ヴェルと誠一は顔を見合わせて、また、笑った。
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