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808. 閑話 とある後悔の情景2

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「無理やん、これ無理でしょ」

千晴は頭を抱えた。
無料ガチャでしか得られない激レアアイテム扱いであった。
それを北関でのあのしょうもない、いざこざで
消費してしまった。
多少なりともゲームを理解できるようになった千晴は、
己の不明を後悔した。
 清涼に相談する気にもなれず、
莉々子は以ての外であった。
さてどうしたものかと思いながら、
ネットや掲示板を検索したが、特に有用な情報を
見つける事はできなかった。
ふと千晴は、パッドに目を向けると、
多田 慶行なる人物から連絡が入っていた。
一瞬、誰だコイツと思ったが、千晴は誠一の
隣人であることを思い出した。
正直、清涼以外で男性にメール等でも
接すことが怖かった。恐る恐る開封した。
そこにはやはり鈴木誠一なる人物に心当たりはないと
記されていたが、隣人がいたような気がするとも
記されていた。
加えて、最近、誰かに監視されている様な気がすることや
部屋を漁られたような気がすると千晴があまりいい気分に
ならないようなことが書かれていた。
正直、今の千晴には他人を気遣う余裕はなかった。
千晴は開封したことを後悔した。
適当に慶行を案ずること書いて送り、
ドアの上の方へテープでも貼っておけば、
留守の時に誰かが部屋に侵入したか分かるだろうと
アドバイスを送った。

 今度は、『ヴェルトール王国戦記』の千晴の
チャットルームに来客があった。

「ふうううー今日は千客万来ね」
気が紛れて悪くないと思いながらも
来訪者が莉々子だったことで、千晴は最大限に警戒した。

『いるんでしょ!出なさいよ。
それとも千晴教の女神様は、下々とは話せないのかしら。
出ないなら、あんたのことを晒すわよ』

ちょっと、この基地外、何を言っているのか分からないと
千晴は頭をかしげてしまった。

『いますけど、ご用件は何?』
努めて冷静にして手短に千晴は書き込んだ。

『はっ舐めんなよ。さっさと私が育成したキャラを返せよ。
一体、幾ら投資したと思ってんだよ』

莉々子の言っていることに千晴は
全く思い当たる節がなかった。
莉々子の頭の具合を心配してしまった。

『一体、何のことか分かりません』

『しらばっくれんなよ。
おまえのクランがマリアンヌってS級の冒険者を
引き抜いただろうが』

千晴はそう言えば大人の魅力の溢れ出る超絶美人が
一名増えていたことを思い出した。
しかし、そんなことを気にする程、千晴はゲームに興味を
持っていなかった。
そのために莉々子の言っていることに気付くのが遅れた。

『そんなことはアルフレート・フォン・エスターライヒに
命じていません。それよりそのマリアンヌとかいうキャラクターに
命令を下せばいいんじゃないですか?』

莉々子の返信が止まった。
返信のないことが千晴は恐ろしかった。
感情に任せて、何をしでかすか莉々子が
何をしでかすか分からなかった。

『あのー莉々子さん』

既読すらつかなかった。
何が莉々子の怒りに油を注いだのか
皆目見当が千晴にはつかなかった。
清涼に相談することもできず、両親や兄弟に話しても
その歳でゲームとか説教を受けそうであった。
つまり千晴には相談する相手が皆無だった。
毎度のことながら、千晴は考えるのがめんどくさくなり、
『ヴェルトール王国戦記』をログアウトして、
ベッドへ転がり込んだ。
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