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805. 不快3

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『千晴さん、あまりこのゲームに
常駐することはお薦めしません。
流石にグロいシーンもありますし、
僕も情事を覗かれて、性癖を知られるのは
好ましくないです』

『・・・』

一度、お互いに沈黙した。

千晴が一度、コホンと咳を画面の前でしたように
誠一は感じられた。

『まあいいわ、それよりも誠一さん、あなたに聞きたい。
本当にその島崎という男を『ヴェルトール王国戦記』の
世界に引き込んだの?』

島崎というのは多分、
千晴を凌辱しようとした男性のことだろうと
誠一は思った。
千晴の質問の意図が掴めなかった。
誠一は小細工をせずに千晴の話に沿って
答えるようにした。

『あの男の名が島崎というかどうかは知りませんが、
確かに千晴さんに危険が迫っていたときに
一人の男をこちらの世界に召喚しました』

『ふーん、そうなんだ。
それでその男は今、どこにいるか分かりますか?』

千晴が『神堕ちの儀』ついて、
疑っていることを誠一は確信した。
しかし何故、疑っているかが誠一には分からなかった。
身をもってその儀式を千晴は目の前で見ているはずであった。

『いや、分かりません。
この世界で彼の器になった者に関しては誰も分かりません。
ゲームの管理者だけは分かるかと思います』

『それじゃあ、実際には誰が島崎を
その世界に召喚したかあやふやな訳ね。
あなたが助けたつもりになって、
へんてこな儀式をしていただけかもしれない訳ね』
 やけに突っ掛かってくる千晴に誠一は辟易した。
どうも千晴の様子がおかしい様な気がした。

『確実に島崎という男はこの世界の理によって
この世界に堕ちました。それは確かです。
多分、僕と一緒で千晴さんのいる世界では、
その男のことを知っている者はいないでしょう』

『そうねぇ、誰も知らないわ。
元々、島崎という男はいなかったのかもしれない。
私の妄想の産物なのかもね。
まあいいわ、あんた、確か鑑定眼使えるでしょ。
島崎という男を探してきなさいよ。
そうしたら、信じてあげる』

 昔のヒステリックな千晴も誠一は不愉快であったが、
陰陰滅滅となるような纏わりつく不快さを伴う言い方の
千晴も誠一は不愉快であった。
しかし、それを千晴に気取れる訳にはいかなかった。
こんなのでも誠一に元の世界の情報と貴重なアイテムを
渡すプレーヤーであった。

『わかりました。できる限り善処します』

『はあ、あんた解ってないわね』

いらっそろそろ誠一の堪忍袋の緒が切れそうだった。

『最優先事項よ。
見つけたら、エリクサーをあげるわ。
ガチャでゲットできたから、1個あるわ。
限界突破の天然石、金色の魔石も持っているから、
君の頑張り次第ではあげてもいいわよ』

おまえ、あんたときて、君ときたか。
誠一は完全に上から目線の千晴に怒りを通り越して、
呆れてしまった。
本来なら、お礼に貰えるはずのエリクサーだったが、
誠一を諦めの感情が支配した。
そして、1㎜も熱意の欠片もない言葉を伝えた。

『わかりました。努力します』

『そうそう、素直に従うのが一番。それと次だけど』

まだ続くのかよ、その思いで誠一は、
虚ろな表情となってしまった。
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