812 / 846
802. 動乱 諸国の事情3
しおりを挟む
「ふふふ、やはり持つべきは信頼できる親族だな。
叔父上、今宵は楽しんでくれ」
島崎は満足そうに自室へ戻った。
残された呆然自失のジェルラは
ジェルラ好みの女2人に個室へ連れていかれた。
数日後、ジェルラは北関へ戻った。
そして、レドリアンと面会していた。
レドリアンの表情はジェルラの説明を聞いていくうちに
次第に曇っていった。
ジェルラは俯き、最後までレドリアンと
視線を合わせずに説明を終えた。
「つまるところ、ジェイコブは皇帝陛下の
今の援助では不満だということだな」
「いっいえ」
「黙れ。
これは、貴様とジェイコブで打ち合わせての発案だろう。
皇家に連なる者ならば、更に援助が大きくなるとでも
皮算用したんだろう」
ジェルラの額は一瞬で滝の様な汗が流れた。
レドリアンはジェルラに侮蔑の視線を送った。
レドリアンは一つため息をついて、言葉を続けた。
「一つ聞きたい。
ジェルラ・ジェルミラ殿、あなたは一体、誰に仕えている。
ダンブル皇帝陛下かそれともジェイコブ・ジェルミラか?」
ジェルラは床に視線を固定して、プルプルと震えていた。
「顔を上げて、目を見て話しなさい。
いい歳をした大人が情けない」
レドリアンはジェルラの態度を叱責した。
「恐れ多くも北の要所、
北関の最高責任者導師レドリアン様に対して、
顔を上げてお話するなど、
そのような無礼を働けるわけございません」
それは、レドリアンの怒りと不快感が
最高潮になった瞬間だった。
「顔を上げろ。ここは公式の会見の場ではない。
貴殿が顔を上げて、話さぬならば、皇帝陛下に
この話を繋げることは一切ない」
「ひいいいっ、申し訳ございません」
ジェルラはレドリアンに圧倒されていた。
元宮廷魔術師第三席、その胆力、実力は
ジェルラと比べるまでもなく冠絶していた。
「まず答えよ」
「ダンブル皇帝陛下の忠実たる僕にございます」
しどろもどろにジェルラは答えた。
そして、テーブルに何度も頭を打ち付けながら、
皇帝万歳と叫んだ。レドリアンはそれを満足気に眺めた。
「よかろう、ジェルラ殿。
貴殿の忠誠、しかと伝わった。
ジェイコブの婚姻の件、陛下に具申いたそう。
ただし、婚姻相手となるのは皇位継承権を
持たぬ方となるが、ジェイコブはそれで納得するな。
いや、納得させろ」
ジェルラは一も二もなく大きく頷いた。
勿論、それは、ジェイコブ、そしてジェイコブの参謀らしき人物と
十分に打ち合わせた妥協できる範囲に収まっていた。
ジェルラを下らせると、レドリアンは上物の酒を
グラスに注がずに酒瓶から直接、飲んだ。
一体、今のジェイコブ・ジェルミラとは何者なのだ。
あまりの変わりようにレドリアンはジェイコブの存在に
疑念を抱かざるを得なかった。
神の恩寵をあの男が受けたとしか思えなかった。
啓示に沿って動いているならば、あの男の変わりようも
レドリアンには理解できた。
もしあの程度の愚図に神が恩寵を与えたならばと思うと、
それはそれでレドリアンを笑わせた。
「神か、六神の敬虔な信徒に与えられる奇跡。
それがアレに与えらえるか、笑える話だ」
レドリアンは酒瓶に栓をすると、棚に戻した。
就寝にはまだまだ早かったが、そのままベッドに倒れた。
叔父上、今宵は楽しんでくれ」
島崎は満足そうに自室へ戻った。
残された呆然自失のジェルラは
ジェルラ好みの女2人に個室へ連れていかれた。
数日後、ジェルラは北関へ戻った。
そして、レドリアンと面会していた。
レドリアンの表情はジェルラの説明を聞いていくうちに
次第に曇っていった。
ジェルラは俯き、最後までレドリアンと
視線を合わせずに説明を終えた。
「つまるところ、ジェイコブは皇帝陛下の
今の援助では不満だということだな」
「いっいえ」
「黙れ。
これは、貴様とジェイコブで打ち合わせての発案だろう。
皇家に連なる者ならば、更に援助が大きくなるとでも
皮算用したんだろう」
ジェルラの額は一瞬で滝の様な汗が流れた。
レドリアンはジェルラに侮蔑の視線を送った。
レドリアンは一つため息をついて、言葉を続けた。
「一つ聞きたい。
ジェルラ・ジェルミラ殿、あなたは一体、誰に仕えている。
ダンブル皇帝陛下かそれともジェイコブ・ジェルミラか?」
ジェルラは床に視線を固定して、プルプルと震えていた。
「顔を上げて、目を見て話しなさい。
いい歳をした大人が情けない」
レドリアンはジェルラの態度を叱責した。
「恐れ多くも北の要所、
北関の最高責任者導師レドリアン様に対して、
顔を上げてお話するなど、
そのような無礼を働けるわけございません」
それは、レドリアンの怒りと不快感が
最高潮になった瞬間だった。
「顔を上げろ。ここは公式の会見の場ではない。
貴殿が顔を上げて、話さぬならば、皇帝陛下に
この話を繋げることは一切ない」
「ひいいいっ、申し訳ございません」
ジェルラはレドリアンに圧倒されていた。
元宮廷魔術師第三席、その胆力、実力は
ジェルラと比べるまでもなく冠絶していた。
「まず答えよ」
「ダンブル皇帝陛下の忠実たる僕にございます」
しどろもどろにジェルラは答えた。
そして、テーブルに何度も頭を打ち付けながら、
皇帝万歳と叫んだ。レドリアンはそれを満足気に眺めた。
「よかろう、ジェルラ殿。
貴殿の忠誠、しかと伝わった。
ジェイコブの婚姻の件、陛下に具申いたそう。
ただし、婚姻相手となるのは皇位継承権を
持たぬ方となるが、ジェイコブはそれで納得するな。
いや、納得させろ」
ジェルラは一も二もなく大きく頷いた。
勿論、それは、ジェイコブ、そしてジェイコブの参謀らしき人物と
十分に打ち合わせた妥協できる範囲に収まっていた。
ジェルラを下らせると、レドリアンは上物の酒を
グラスに注がずに酒瓶から直接、飲んだ。
一体、今のジェイコブ・ジェルミラとは何者なのだ。
あまりの変わりようにレドリアンはジェイコブの存在に
疑念を抱かざるを得なかった。
神の恩寵をあの男が受けたとしか思えなかった。
啓示に沿って動いているならば、あの男の変わりようも
レドリアンには理解できた。
もしあの程度の愚図に神が恩寵を与えたならばと思うと、
それはそれでレドリアンを笑わせた。
「神か、六神の敬虔な信徒に与えられる奇跡。
それがアレに与えらえるか、笑える話だ」
レドリアンは酒瓶に栓をすると、棚に戻した。
就寝にはまだまだ早かったが、そのままベッドに倒れた。
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~
山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。
与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。
そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。
「──誰か、養ってくれない?」
この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
みんなで転生〜チートな従魔と普通の私でほのぼの異世界生活〜
ノデミチ
ファンタジー
西門 愛衣楽、19歳。花の短大生。
年明けの誕生日も近いのに、未だ就活中。
そんな彼女の癒しは3匹のペット達。
シベリアンハスキーのコロ。
カナリアのカナ。
キバラガメのキィ。
犬と小鳥は、元は父のペットだったけど、母が出て行ってから父は変わってしまった…。
ペットの世話もせず、それどころか働く意欲も失い酒に溺れて…。
挙句に無理心中しようとして家に火を付けて焼け死んで。
アイラもペット達も焼け死んでしまう。
それを不憫に思った異世界の神が、自らの世界へ招き入れる。せっかくだからとペット達も一緒に。
何故かペット達がチートな力を持って…。
アイラは只の幼女になって…。
そんな彼女達のほのぼの異世界生活。
テイマー物 第3弾。
カクヨムでも公開中。
異世界で農業をやろうとしたら雪山に放り出されました。
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたサラリーマンが異世界でスローライフ。
女神からアイテム貰って意気揚々と行った先はまさかの雪山でした。
※当分主人公以外人は出てきません。3か月は確実に出てきません。
修行パートや縛りゲーが好きな方向けです。湿度や温度管理、土のphや連作、肥料までは加味しません。
雪山設定なので害虫も病気もありません。遺伝子組み換えなんかも出てきません。完璧にご都合主義です。魔法チート有りで本格的な農業ではありません。
更新も不定期になります。
※小説家になろうと同じ内容を公開してます。
週末にまとめて更新致します。
エデンワールド〜退屈を紛らわせるために戦っていたら、勝手に英雄視されていた件〜
ラリックマ
ファンタジー
「簡単なあらすじ」
死んだら本当に死ぬ仮想世界で戦闘狂の主人公がもてはやされる話です。
「ちゃんとしたあらすじ」
西暦2022年。科学力の進歩により、人々は新たなるステージである仮想現実の世界に身を移していた。食事も必要ない。怪我や病気にもかからない。めんどくさいことは全てAIがやってくれる。
そんな楽園のような世界に生きる人々は、いつしか働くことを放棄し、怠け者ばかりになってしまっていた。
本作の主人公である三木彼方は、そんな仮想世界に嫌気がさしていた。AIが管理してくれる世界で、ただ何もせず娯楽のみに興じる人類はなぜ生きているのだろうと、自らの生きる意味を考えるようになる。
退屈な世界、何か生きがいは見つからないものかと考えていたそんなある日のこと。楽園であったはずの仮想世界は、始めて感情と自我を手に入れたAIによって支配されてしまう。
まるでゲームのような世界に形を変えられ、クリアしなくては元に戻さないとまで言われた人類は、恐怖し、絶望した。
しかし彼方だけは違った。崩れる退屈に高揚感を抱き、AIに世界を壊してくれたことを感謝をすると、彼は自らの退屈を紛らわせるため攻略を開始する。
ーーー
評価や感想をもらえると大変嬉しいです!
異世界無知な私が転生~目指すはスローライフ~
丹葉 菟ニ
ファンタジー
倉山美穂 39歳10ヶ月
働けるうちにあったか猫をタップリ着込んで、働いて稼いで老後は ゆっくりスローライフだと夢見るおばさん。
いつもと変わらない日常、隣のブリっ子後輩を適当にあしらいながらも仕事しろと注意してたら突然地震!
悲鳴と逃げ惑う人達の中で咄嗟に 机の下で丸くなる。
対処としては間違って無かった筈なのにぜか飛ばされる感覚に襲われたら静かになってた。
・・・顔は綺麗だけど。なんかやだ、面倒臭い奴 出てきた。
もう少しマシな奴いませんかね?
あっ、出てきた。
男前ですね・・・落ち着いてください。
あっ、やっぱり神様なのね。
転生に当たって便利能力くれるならそれでお願いします。
ノベラを知らないおばさんが 異世界に行くお話です。
不定期更新
誤字脱字
理解不能
読みにくい 等あるかと思いますが、お付き合いして下さる方大歓迎です。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる