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782.南方戦役29
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「くそっヴェルの大人しさに騙された。全軍、前進だ」
誠一は号令を下した。
その頃、先陣をひた走るヴェルは
既に水堀に達しようとしていた。
城からはへろへろの矢や勢いのない魔術が飛来していた。
誠一たちに見える程の汚泥が青空に舞った。
誠一は呻いた。
「あの馬鹿ヴェル。城門じゃなくて、汚泥を吹き飛ばすかよ」
当たり前であるが、汚泥は永遠に舞い上がる訳でもなく、
次第に城壁や地に向かって落ち始めた。
「道は出来た。俺たちを遮る水はなし。アミラ、頼む」
今の炎の魔術でヴェルの魔力はほぼ枯渇していた。
早くも魔石を握りしめて、魔力の回復に努めるヴェルだった。
「もちろんです。一気に叩き壊すです」
降り注ぐ汚泥の中、ヴェルを中心とした一団は、
城の正門に到達した。
城壁の門と違い、門構えは豪華であったが、
造りは頑丈そうに見えなかった。
「竜撃破」
竜の力を拳に宿したアミラの一撃が正門を破壊した。
粉砕された正門の前に一瞬立ち止まったヴェルたちだった。
流石に一撃で破壊できるとは思っていなかった上に
ほとんど敵の妨害もなく呆気にとられてしまった。
「はっ、これは一体。
とっ取り敢えず城への一番乗りは、
アルフレート麾下のヴェルだっー」
叫び、城内に飛び込むヴェルだった。
しかし、城内で敵兵と相対することもなく、
ヴェルは再び拍子抜けした。
大半のモレロン軍の兵士たちは無気力そうに
床へ座り込んでいた。
「なんだよこれ、どうなってるんだよ」
ヴェルは討ち取ることもせずに最上階へ向かって進んだ。
二階へ駆け上がった直後、ヴェルたちは、立ち止まってしまった。
否、立ち尽くしていた。目の前の光景に眼を疑った。
アミラがヴェルの左腕をぎゅっと強く掴んでいた。
誠一や他のメンバーもヴェルに追いつき、
2階の階段付近で大渋滞を起こしてしまった。
ロジェは城外にサリナ,キャロリーヌと
残り周囲の警戒に回っていた。
「ヴェル、立ち止まってないで進んで!
一階は制圧したから」
「いやでもここを進むのか。進まないと戦が終わらないか。
アルっ、敵さんはどうやら吸血鬼の類だぞ」
誠一とシエンナは道を開けてもらい、二階へ進んだ。
二人は絶句した。
動物、ヒト、分け隔てなく天井からロープに
足を縛られて吊るされていた。
そして全てに共通するのは、首を飛ばされ、
その下に血を受ける為だろうか、バケツが置かれていた。
誠一は吐きそうになった。
「ヴェル、違うわよ。敵は魔人や魔物じゃないわよ。
誰が考案したのか知らないけど、バケツに溜まった血で
喉の渇きを潤そうとしたのよ」
誠一は恐ろしかった。
この光景もだが、淡々と説明するシエンナも恐ろしかった。
ぽちゃん、ぽちゃんとバケツに堕ちる血の雫の音が
誠一の恐怖に拍車をかけた。
そんな中で普通に会話が成立しているヴェル、
シエンナ、アミラ、そして兵士たち。
この城には自分以外にまともな感性の人間がいないのではと
疑ってしまった。
誠一は号令を下した。
その頃、先陣をひた走るヴェルは
既に水堀に達しようとしていた。
城からはへろへろの矢や勢いのない魔術が飛来していた。
誠一たちに見える程の汚泥が青空に舞った。
誠一は呻いた。
「あの馬鹿ヴェル。城門じゃなくて、汚泥を吹き飛ばすかよ」
当たり前であるが、汚泥は永遠に舞い上がる訳でもなく、
次第に城壁や地に向かって落ち始めた。
「道は出来た。俺たちを遮る水はなし。アミラ、頼む」
今の炎の魔術でヴェルの魔力はほぼ枯渇していた。
早くも魔石を握りしめて、魔力の回復に努めるヴェルだった。
「もちろんです。一気に叩き壊すです」
降り注ぐ汚泥の中、ヴェルを中心とした一団は、
城の正門に到達した。
城壁の門と違い、門構えは豪華であったが、
造りは頑丈そうに見えなかった。
「竜撃破」
竜の力を拳に宿したアミラの一撃が正門を破壊した。
粉砕された正門の前に一瞬立ち止まったヴェルたちだった。
流石に一撃で破壊できるとは思っていなかった上に
ほとんど敵の妨害もなく呆気にとられてしまった。
「はっ、これは一体。
とっ取り敢えず城への一番乗りは、
アルフレート麾下のヴェルだっー」
叫び、城内に飛び込むヴェルだった。
しかし、城内で敵兵と相対することもなく、
ヴェルは再び拍子抜けした。
大半のモレロン軍の兵士たちは無気力そうに
床へ座り込んでいた。
「なんだよこれ、どうなってるんだよ」
ヴェルは討ち取ることもせずに最上階へ向かって進んだ。
二階へ駆け上がった直後、ヴェルたちは、立ち止まってしまった。
否、立ち尽くしていた。目の前の光景に眼を疑った。
アミラがヴェルの左腕をぎゅっと強く掴んでいた。
誠一や他のメンバーもヴェルに追いつき、
2階の階段付近で大渋滞を起こしてしまった。
ロジェは城外にサリナ,キャロリーヌと
残り周囲の警戒に回っていた。
「ヴェル、立ち止まってないで進んで!
一階は制圧したから」
「いやでもここを進むのか。進まないと戦が終わらないか。
アルっ、敵さんはどうやら吸血鬼の類だぞ」
誠一とシエンナは道を開けてもらい、二階へ進んだ。
二人は絶句した。
動物、ヒト、分け隔てなく天井からロープに
足を縛られて吊るされていた。
そして全てに共通するのは、首を飛ばされ、
その下に血を受ける為だろうか、バケツが置かれていた。
誠一は吐きそうになった。
「ヴェル、違うわよ。敵は魔人や魔物じゃないわよ。
誰が考案したのか知らないけど、バケツに溜まった血で
喉の渇きを潤そうとしたのよ」
誠一は恐ろしかった。
この光景もだが、淡々と説明するシエンナも恐ろしかった。
ぽちゃん、ぽちゃんとバケツに堕ちる血の雫の音が
誠一の恐怖に拍車をかけた。
そんな中で普通に会話が成立しているヴェル、
シエンナ、アミラ、そして兵士たち。
この城には自分以外にまともな感性の人間がいないのではと
疑ってしまった。
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