転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた

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758. 南方戦役5

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なにやらマリアンヌは面白そうに
にやにやとしていた。

誠一は彼らの話に多少の違和感があったが、
話の続きを彼らに促した。

「ニコラ様は憂いています。
心ならずとも王国へ反抗の意を示してしまったことに」

誠一は顔を曇らせてしまった。
まだまだ感情を抑えて、表情をうまく消すことができなかった。

「アルフレート様のお怒りは、ごもっとも。
しかし周囲をジェルミラ家の近親縁者に
囲まれたニコラ様の立場もお考えください。
民草のことを思えば、己の心に従う訳には
いかなかったのでございます」

誠一の表情は変らず曇ったままだった。
誠一が無言であったために使者は再び話始めた。

「先だって、アルフレートが攻略いたしました
ジェームズ・バロン・デュプレ領の領民を見て、
どう思われましたか。
もしニコラ様が志に従っておりましたら、
モレロン領の領民はあの様に扱われていたでしょう」

誠一の口元がつり上がった。

秀麗な顔立ちが醜悪に歪んでいた。

誠一は全く許すつもりがなかった。
こいつらが反乱を起こさなければ、
リシェーヌがクリスタルに封印されることもなかった。
誠一の終始一貫したこの気持ちは、
如何なる弁明でも甘言でも揺るぐことはなかった。
 
使者は誠一の表情に気圧されて、視線を外してしまった。
「それで終わりではないでしょう。お話を続けてください」
誠一の声は柔らかかったが、使者を安心させることはできなかった。

「ははっ。ニコラ様はアルフレート様のご信頼を
得るために愛娘を人質として差し出す所存でございます」

少し周囲がざわついた。誠一にロジェが耳うちをした。

「アルフレート君、ニコラには娘一人しかいない。
それに相当、溺愛しているようだ」

無論、誠一もそのことは知っていた。
そしてその容姿、器量も良く、ジェルラが求婚したが
上手く袖にされたという噂もあった。

「ニコラ殿は本気のようだな」
誠一が低い声で答えた。

「ははっ。人質故にアルフレート様が如何様に扱おうとも
当家は一切口出しいたしませぬ。
側室として側に置いて頂ければ、将来は男爵領を
継いで頂くことも厭いません」

使者に向けた凄まじい殺気を誠一だけでなく、
この場に居る者たち全員が一瞬で感じた。

しかも同時に二つ。

誠一は背中に冷たい汗が流れた。
ヴェルは何故かカタカタと歯を鳴らしていた。
そしてそのヴェルの右手をしっかりとアミラが握っていた。

誠一はその殺気をいなす様に右手を軽く振った。
殺気の主たちは、しぶしぶとそれを収めた。

「人質ねえ。今更ですよ。
ニコラ・モレロンを滅ぼして、その噂の娘とやらを
手に入れれば同じことでしょう。
その上でその娘を楽しめばいい」
不敵な笑いを上げて、誠一は使者たちを椅子から見下ろした。

使者たちは青ざめていた。
使者たちに最早言うべき言葉はなかった。
願わくば、この場で殺されないことを
祈るばかりであった。

「とまあ、冗談はこのくらいにして。
ニコラ・モレロンに関して、確認したいことがある」
ごくりと使者たちが唾を飲み込む音がした。

「モレロン領を継ぐべき男子は絶対にいないのだな。
子はその娘一人だけなのだな」

「アルフレート様のおっしゃる通りでございます。
血縁の者たちはおりますが、血のつながりを以て
男爵領を継ぐには遠縁過ぎまして、説得力に欠けます」

「わかった。ならばモレロン領を王国へ差し出す代わりに
然るべき地位を約束しよう。
それを急ぎ戻り、書状にしたためて、娘と差し出すように
準備することをニコラ殿に伝えよ。
二人は急ぎ戻り、一人は道案内のために残れ」

使者たちは狼狽えた。
そこまでのことをニコラから指示されていなかった。
無論、誠一もそのことは察していた。
「いや言葉が過ぎたな。今の事をニコラ殿に伝えて欲しい。
君たちは伝えるだけでいい」

「わかりました」

誠一がそう言ったが、一向に立ち上がる気配のない使者たちであった。
怪訝な表情で誠一は使者たちを見つめた。

「すっすみません。腰が抜けたといいましょうか。
このような醜態を晒し、申し訳ありません」

誠一は納得した。あの二人の女性の殺気に中てられたのだろう。
左右の者に3人を助け起こす様に伝えた。
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