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747.領土防衛戦16
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「ぷっ、ぷぷぷっ。
それじゃ魔力を消費してるじゃん。
解錠できた意味なし。
全く待つこと言う事が貴族様は
出来ないから、困ったもんよ」
威勢よく話すが、ほっとしたのかサリナは
その場へ座り込んでしまった。
勢い誠一はサリナを見下ろす様になってしまった。
鎖骨を流れる汗に導かれるように誠一の視線は、
動くとサリナの少し開いた胸元を覗き込んでしまった。
ささやかな胸が少し前後に動いていた。
節操もなく誠一はごくりと生唾を飲み込んだ。
そして、その瞬間、誠一は尻に強烈な打撃を受けた。
「いぎぃ」
誠一は妙な叫び声を放った。
「アールっ!分かっているわよね?」
シエンナがぎろりと誠一を睨みつけた。
誠一も分かってはいるが、どうにも理性の歯止めを
一瞬で通り越してしまう性欲を抑えることが難しかった。
上目使いに誠一を見るサリナの表情は
なんとも艶めかしかったが、誠一はなんとか衝動を
抑えることに成功した。
元の世界ではこんな劣情や欲望が生まれることはなかった。
どうしても浮き上がってくるこれらの感情を
上手くコントロールすることができなかった。
誠一はこの感情を持て余して、当惑した。
時間にしてはほんの僅かであったが、
サリナは落ち着きを取り戻して、立ち上がった。
「さてと、扉も開いたことだし、お宝を拝見しましょうか」
サリナは扉を全開にした。
3人の眼に映る扉の先は、彼等を絶句させた。
絞り出す様に誠一が声を上げた。
「血の臭いや腐臭がしない。何故だ」
「アル、アレを見て」
シエンナの視線の先には消臭効果のある薬品や魔道具が
大量に置いてあった。
「それにしてもこれは一体」
「所詮はジェイコブの教育係ってことよ。
ジェイコブに影響を与えたのか、それとも与えられたのか、
今となっては分からないけど、どうするの?」
誠一はまたしても当惑してしまった。
目の前に広がる拷問部屋とその犠牲者の惨劇に
どうして良いか分からなかった。可能ならば神に問いたかった。
「火ね」
シエンナがぽつりと呟いた。
「そうだね。この館は燃やし尽くして、浄化するしかない」
眼を背けたくなるような惨状を前に誠一が呟いた。
「デュプレも縛って、この屋敷と一緒に葬るんでしょ」
サリナの口調は重かった。
一体、何人の犠牲者がいるのか数える気力すら
誠一たちは奪われていた。
ごそりごそり。
部屋から何かが蠢く音がした。
瞬間、シエンナが誠一の左腕をしっかりと掴んだ。
「今、何か聞えなかった?」
シエンナの問いにサリナは頷くが、視覚、聴覚、
そして嗅覚は音のする方に集中していた。
のそりのそり。
まさか生きているモノがいるのか。
誠一の対処能力の限界を既に超えていた。
どろどろどろの屍肉が幾体も立ち上がった。
北門で会敵した死体と違って辛うじてヒトとしての息吹を
感じさせた。
這いずるごとに腐肉がずり落ち、臓物や骨が露わになった。
誠一の頭は真っ白になった。
それじゃ魔力を消費してるじゃん。
解錠できた意味なし。
全く待つこと言う事が貴族様は
出来ないから、困ったもんよ」
威勢よく話すが、ほっとしたのかサリナは
その場へ座り込んでしまった。
勢い誠一はサリナを見下ろす様になってしまった。
鎖骨を流れる汗に導かれるように誠一の視線は、
動くとサリナの少し開いた胸元を覗き込んでしまった。
ささやかな胸が少し前後に動いていた。
節操もなく誠一はごくりと生唾を飲み込んだ。
そして、その瞬間、誠一は尻に強烈な打撃を受けた。
「いぎぃ」
誠一は妙な叫び声を放った。
「アールっ!分かっているわよね?」
シエンナがぎろりと誠一を睨みつけた。
誠一も分かってはいるが、どうにも理性の歯止めを
一瞬で通り越してしまう性欲を抑えることが難しかった。
上目使いに誠一を見るサリナの表情は
なんとも艶めかしかったが、誠一はなんとか衝動を
抑えることに成功した。
元の世界ではこんな劣情や欲望が生まれることはなかった。
どうしても浮き上がってくるこれらの感情を
上手くコントロールすることができなかった。
誠一はこの感情を持て余して、当惑した。
時間にしてはほんの僅かであったが、
サリナは落ち着きを取り戻して、立ち上がった。
「さてと、扉も開いたことだし、お宝を拝見しましょうか」
サリナは扉を全開にした。
3人の眼に映る扉の先は、彼等を絶句させた。
絞り出す様に誠一が声を上げた。
「血の臭いや腐臭がしない。何故だ」
「アル、アレを見て」
シエンナの視線の先には消臭効果のある薬品や魔道具が
大量に置いてあった。
「それにしてもこれは一体」
「所詮はジェイコブの教育係ってことよ。
ジェイコブに影響を与えたのか、それとも与えられたのか、
今となっては分からないけど、どうするの?」
誠一はまたしても当惑してしまった。
目の前に広がる拷問部屋とその犠牲者の惨劇に
どうして良いか分からなかった。可能ならば神に問いたかった。
「火ね」
シエンナがぽつりと呟いた。
「そうだね。この館は燃やし尽くして、浄化するしかない」
眼を背けたくなるような惨状を前に誠一が呟いた。
「デュプレも縛って、この屋敷と一緒に葬るんでしょ」
サリナの口調は重かった。
一体、何人の犠牲者がいるのか数える気力すら
誠一たちは奪われていた。
ごそりごそり。
部屋から何かが蠢く音がした。
瞬間、シエンナが誠一の左腕をしっかりと掴んだ。
「今、何か聞えなかった?」
シエンナの問いにサリナは頷くが、視覚、聴覚、
そして嗅覚は音のする方に集中していた。
のそりのそり。
まさか生きているモノがいるのか。
誠一の対処能力の限界を既に超えていた。
どろどろどろの屍肉が幾体も立ち上がった。
北門で会敵した死体と違って辛うじてヒトとしての息吹を
感じさせた。
這いずるごとに腐肉がずり落ち、臓物や骨が露わになった。
誠一の頭は真っ白になった。
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