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738. 領土防衛戦7

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「小僧ぅうううぅー。
貴様、神聖な一騎討を汚しおったな。
許せぬ所業。所詮は廃嫡された長子ということか」
初老の男は嘲笑して、誠一を激昂させようとした。
しかし、全く誠一の態度に変化はなかった。
それどころか、誠一は笑い返した。

「名も知らぬ恥ずべき領主よ、聞け。
その程度の煽りで冷静さを失うほど、僕はおろかでない。
真の煽りとは如何なるものか知りたければ、
我が仲間、シエンナに学ぶがよい。
一騎討ちの作法など知らぬが、
貴様も倒される相手の名くらいは、知っておきたいだろう。
エスターライヒ伯爵家が長子
アルフレート・フォン・エスターライヒ、いざ参る」

殊更芝居がかって、言上する誠一だった。
後ろの方から、何やら煽りがどうこうと
騒ぎ立てる輩がいるが、気にしないことにした。

「ふん、魔術師風情が少しばかり詩人に謳われて、
調子に乗りおるわ。躾が必要だな。
俺はジェームズ・バロン・デュプレ。
驚くなよBランク冒険者でもある」
ふんぞり返るデュプレであった。
声は大きく、周囲に良く響いた。

後方に控える兵士たちが拍手喝さいを上げた。
そして、誠一に向かって下品な言葉を投げつけた。
並みの戦士であれば、雰囲気に呑まれ、萎縮するか冷静さを
失っているだろう。

「そうですかBランクですか、僕と同じですね」
淡々と語る誠一であったが、その声はデュプレ同様に
周囲に良く響いた。

ぴきっ、デュプレの眉間に青筋が立った。
「舐めるなぁ、小僧。キサマラ貴族階級どもが
卑怯な手段で所得する冒険者ランクと
俺様のランクを同列に語るな。
くらえ、シールドバッシュ」
大盾を最前面にデュプレが誠一に向かって、
体当たりをかまそうとした。誠一はそれを難なく躱した。
躱しざまに7面メイスの一撃をデュプレの脳天に
向けて振り下ろした。

「ひぎゃ」
脳天への一撃は躱したが、右肩に一撃を受け、
苦悶するデュプレだった。
次の瞬間、デュプレをほのかな光が包むと、
デュプレの呻き声は止んだ。

「これは魔石の力だからな。貴様もさっき使っただろう。死ね」
大盾で誠一の視界を遮り、大剣を片手で
振り回すデュプレだった。
性根は腐りきっているが、その実力と経験は
Bランクの冒険者に相応しいものであった。
防戦一方の誠一を煽るが、決して大振りせずに
誠一の間隙を常に狙っていた。その動きは老獪そのものであった。

「確かに子爵家に招聘されて教育掛かりに
抜擢されるだけはありますね。
路を誤らなければ、一廉の人物として
名を遺したかもしれませんね。残念です。縮地!」
誠一は嘆息すると『瞬足の足袋』の能力を使って、
一度、大きく距離を取った。
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